宇宙地球科学セミナー / ESS Seminar

2024年度/FY2024

#18

  • Date and Time

    Start at 16:00 on Thursday, October 3, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    生命誕生に関わる年代測定

  • Speaker

    佐野 有司

  • Affiliation

    高知大学海洋コア国際研究所

  • Abstract

    「地球上で最初の生命はいつ現れたか?」という問いは一般の人が興味を持つポピュラーサイエンスと考えられるが、地球惑星科学や生命科学においても疑いのない第一級の研究対象である。 しかし、このようなサイエンスは憶測や邪推に基づいた「トンデモ話」に行きつくことが多いので注意を要する。コロナ禍前に遡るが、高等学校の生物の教科書には、「地上で最初の生物は38億年前に現れた。」と書かれていた。 本講演では、この38億年前の根拠を放射年代測定の立場から解説し、さらにより古い生命の可能性について論じる。 具体的には、地球最古の生物化石の年代、月面の隕石の重爆撃、炭素同位体分別に基づく化学化石の考え、カナダ北部のラブラドールで見つかった最古の生命の痕跡の順番で発表する予定である。

#17

  • Date and Time

    Start at 13:30 on Thursday, September 19, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    高圧中性子回折実験から探る氷の結晶構造

  • Speaker

    小松 一生

  • Affiliation

    東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設

  • Abstract

    氷には少なくとも20種類もの多形が存在する。これほど多くの多形が生じる理由の一つとして、水分子の配向の秩序-無秩序相転移を挙げることができる。 すなわち、水分子の重心(≒酸素の位置)はほぼ共通でありながら、水分子の配向がランダムなもの(無秩序相)とある向きに揃っているもの(秩序相)が存在する。 通常は一つの無秩序相に対し、一つの秩序相が対応するが、最近発表者らが発見した氷XIXは氷VI(水を加圧すると最初に出現する高圧相)に対応する2つ目の秩序相であることがわかった。 氷VIには他に氷XVという秩序相が存在することが知られているが、このように、一つの無秩序相に対し複数の秩序相が存在することを示したのは初めてであった。 この発見には、低温高圧下で自在に温度圧力を制御可能な中性子回折用圧力セル「Mito system」の開発が不可欠であったので、この圧力セルについても簡単に紹介したい。
    一方、氷を室温で加圧していくと2GPa以上で氷VIIという高圧相が出現することが知られている。 この氷VIIをさらに加圧していくと、いずれは水素結合中の水素が周囲にいる2つの酸素に対して中心に位置する「水素結合の対称化」が生じることが半世紀以上も前から知られていた。 しかし、水素の位置の分布を高圧下で観察することは一般に困難であり、これまで氷中の水素結合の対称化を直接観察した実験例はなかった。 最近発表者らは、100GPaを超える圧力での中性子回折が行える圧力セルを開発し、水素結合の対称化の直接観察にはじめて成功した。 発表では、これらの圧力セルの詳細や中性子回折からどのように水素の位置分布を得るかという点についても紹介する予定である。

#16

  • Date and Time

    Start at 16:30 on Monday, September 2, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    第一原理計算による地球惑星内部における含水物質の研究

  • Speaker

    土屋 旬

  • Affiliation

    愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター

  • Abstract

    地球を構成する鉱物や岩石中に含まれる水は, その融点, レオロジー, 相安定性, 弾性などの物性に大きな変化を与えることが知られている. よって, 地球内部における水の状態や量を把握することは, 地球のマントルダイナミクスや進化過程を理解する上で不可欠である. しかし, 地球内部に存在する水の総量はほとんどわかっていない. マントルに貯蔵されている水(正確には鉱物中に含まれる水素や水酸基)の量は, 地球表層に存在する水の数倍程度と考えられている. このような地球マントルの含水状態を調べるためには, 地球深部への水の流入・流出メカニズムを理解する必要がある. 海洋プレート中に存在する含水フィロケイ酸塩(蛇紋石, 雲母, 粘土など)のような含水鉱物がプレートの沈み込みに伴い水を地球内部に輸送している. 含水フィロケイ酸塩は層状結晶構造を有しており, 各層は水素結合で結ばれている. 一般に含水鉱物は無水鉱物よりも密度が低く, 融点も低い. 含水フィロケイ酸塩のような含水鉱物は多くの場合, 地球深部約150km(約5GPa, 600℃)の高温高圧条件下で分解して水を放出するため, 深部マントルは基本的には無水状態であると考えられていた. しかし近年, より高温高圧条件でも安定な含水鉱物が次々と発見されている. その中には下部マントル圧力条件(23-136GPa)下でも水を保持できるものがある. 現在, 含水D相, 含水H相などと呼ばれる高密度含水マグネシウムケイ酸塩(DHMSs=Dense Hydrous Magnesium Silicates)の地球深部の水循環に果たす役割を明らかにするため, その高圧挙動が精力的に研究されている.
    地球深部は直接観測できないため, 地震観測, 岩石や鉱物の高圧実験, 理論計算などを総合して理解することが必要である. 近年, 地球深部科学分野では, 高圧実験を補完し, 地球深部物質の構造・物性を解明するために, 第一原理計算が重要な研究手段になっている. 過去十数年間, 下部マントルの圧力条件でも安定な含水鉱物(含水D相, 含水H相, 超アルミナスD相, δ-AlOOH, e-FeOOH, パイライト型FeOOHなど)に関する知識は目覚ましい勢いで増えてきた. これらの含水鉱物の安定性と特性を把握することは, 地球深部で水がどのように貯蔵され循環しているかを理解するために重要である. 興味深いことに, 上記の高圧含水鉱物は, 第一原理計算等により, 下部マントルの圧力条件で圧力誘起水素結合対称化を起こす可能性が高いことが報告されていることも共通している. 本講演では, これまでに我々が行ってきた含水鉱物の第一原理計算を紹介し, 今後の地球惑星内部の含水物質研究の展望について紹介する.

#15

  • Date and Time

    Start at 13:00 on Monday, August 26, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    宇宙論的ハビタビリティの探求

  • Speaker

    井上 昭雄

  • Affiliation

    早稲田大学先進理工学部物理学科

  • Abstract

    宇宙の時空間進化の中での生命居住可能性を宇宙論的ハビタビリティと定義する。 宇宙論的ハビタビリティが、いつ、どこに、どうやって現れるのかを理解することこそ、まさに宇宙地球科学専攻の目指すところであろう。 宇宙論的ハビタビリティの探求は、具体的には以下の3つの課題を総合することと捉えることができる。すなわち、宇宙論的銀河形成・進化、惑星系の形成と進化、そして、宇宙の中の生命の起源と進化である。 この3課題を総合するにあたり、銀河スケール・ハビタブルゾーンという枠組みがある。 私のこれまでの研究と教育の経験をもとに、宇宙地球科学専攻の各研究室と協力することで、銀河スケール・ハビタブルゾーン研究を深化させ、宇宙論的ハビタビリティの探求を行いたい。 本講演では、私のこれまでの研究から、宇宙塵の物理と銀河進化、原始惑星系円盤、遠方銀河と宇宙再電離、次世代宇宙望遠鏡計画というテーマにおける研究成果を紹介し、今後、 銀河スケール・ハビタブルゾーンの研究を通して、宇宙論的ハビタビリティの探求にどうつなげていくのか、その展望を示す。

#14

  • Date and Time

    Start at 9:00 on Monday, August 26, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    地球と生命の共進化の理解から宇宙生命探査へ

  • Speaker

    松尾 太郎

  • Affiliation

    名古屋大学大学院理学研究科

  • Abstract

     地球がこれほど多様で複雑な生命圏を育んでいる理由を理解するには、生態系の一次生産者である光合成生物の誕生と進化を深く掘り下げることが不可欠である。 酸素発生型光合成生物は、太陽からの可視光エネルギーを利用して水を酸化することで、30億年にわたって地球表層を段階的に酸化し、好気呼吸を行う真核生物の誕生を促した。 その結果、地球表層における全炭素中の有機炭素の割合が大きく増加してきた。酸素発生型光合成生物は、原核生物であるシアノバクテリアから始まり、真核生物である藻類、さらに高等植物へと多様な進化を遂げてきた。 この進化の過程で、光化学系は保存される一方で、光集光アンテナは大きく変化してきた。特にシアノバクテリアは、高等植物と比較してより複雑で巨大なアンテナを発達させ、酸素発生型光合成生物に共通するクロロフィルとは異なるビリン色素を採用している。
     私たちは、現存する光合成生物の色素の吸収スペクトルが生息環境の光スペクトルと良い相関があることに注目し、シアノバクテリアの誕生において太古代から原生代における光環境が重要な役割を果たしたとする「緑の海仮説」を構築した。 さらに、緑の海仮説に基づけば、太古代から原生代の水圏における生物活動によって変化した海の色が、太陽系外惑星における生命活動の指標となる可能性がある。 本セミナーでは、酸素発生型光合成生物の進化を緑の海仮説の観点から紹介し、地球と生命の共進化に関する理解を深める。また、この理解が宇宙生命探査にどのように貢献できるかについて、私の将来計画への取り組みを交えながら議論する。

#13

  • Date and Time

    Start at 16:00 on Friday, August 23, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    月惑星探査の推進と天体表層進化の研究

  • Speaker

    諸田 智克

  • Affiliation

    東京大学大学院理学系研究科

  • Abstract

    天体表面の地形や表層構造は、その天体の進化史を記録しているだけでなく、天体衝突史などの太陽系の力学進化に関わる情報も残している。 私はこれまでに月惑星の熱史や天体衝突史の復元を目的として、月周回衛星「かぐや」や小惑星探査「はやぶさ2」などの太陽系探査計画に参加し、 観測運用検討・システム開発、データ処理システム設計・開発などに力を注ぐとともに、惑星探査データを用いた惑星地質学・惑星物理学研究を展開してきた。 それにより月のマグマ活動の継続期間や、過去30億年の天体衝突頻度の時間変化などについて成果が得られている。
    今後は着陸探査によるその場観測と試料採取が主流となることから、国際宇宙探査の機会を利用した科学の推進が必須となる。 同時に、国際宇宙探査が目指す月面探査機会の拡大と将来の持続的な月面活動を力強く推し進めるためにも科学の役割が大きいと期待される。 そこで本研究では宇宙惑星科学における第一級の科学成果導出を目指し、将来科学探査立案とその場観測のキー技術の開発を進めると同時に、月惑星表面探査を推進する拠点構築を目指す。 本発表では、これまでの研究成果の概要と今後の研究活動の方針について紹介する。

#12

  • Date and Time

    Start at 9:00 on Friday, August 23, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    宇宙プラズマ計測による月惑星圏(磁気圏、散逸大気、外気圏、表層物質)の研究

  • Speaker

    横田 勝一郎

  • Affiliation

    大阪大学大学院理学研究科

  • Abstract

    宇宙空間という遠く過酷な環境で行われる粒子(宇宙プラズマ)計測は、実験物理の中でも独特な設計や製造方法の積み重ねで実現されてきた。 宇宙機によるプラズマ計測では、適切な分解能で電子・イオンの3次元分布関数を取得することが求められる。 NASAのMMS計画ではMHD(電磁流体)近似では及ばないミクロな物理過程を観測対象とするため、我々はジャイロ周期に迫る高時間分解能イオン分析器を開発し、粒子加速・加熱や波動粒子相互作用の観測に成功した。 地球放射線帯の観測を行うARASE計画では、観測の空白領域であった数10keV〜数100keVに対応する電子・イオン分析器を開発した。 質量分析も同時に行うことで、磁気嵐時の地球起源イオンの散逸も明らかにした。月探査計画KAGUYAや水星探査計画BepiColomboでも、開発したイオン質量分析器にて天体起源イオンの観測を実現した。 KAGUYA観測ではH+のラーモア半径程度の小型天体周辺プラズマ環境に特徴的な粒子的挙動を発見するだけでなく、軌道上で月表面物質の情報が抽出できることを示した。 この成果は、その後の火星衛星探査計画MMXに高分解能イオン質量分析器を提案することに繋がり、現在はフライトモデルの提出直前である。 宇宙プラズマ研究ではミクロからマクロへのスケールを網羅することが次の課題として、多点観測に備えて分析器の低リソース化に取り組んでいる。 また、宇宙プラズマ計測技術は惑星科学の研究にも有用であることから、これまでの技術基盤を大阪大の質量分析技術(MULTUM)と組み合わせて、着陸探査用同位体質量分析装置の開発も行っている。

#11

  • Date and Time

    Start at 13:30 on Monday, August 5, 2024

  • Place

    F202

  • Title

    大規模複雑系のためのデータ同化基盤

  • Speaker

    伊藤 伸一

  • Affiliation

    東京大学

  • Abstract

    データ同化とは、観測不能な初期値やモデルパラメータなどの未知量を含むシミュレーションモデルと実験・観測により得られるデータをベイズ統計の枠組みで統合し、 未知量の事後確率分布を構成し情報抽出を行うことで、モデルの高度化・選択、現象の予測・推定や実験・観測計画の最適化などを図る数学理論体系である。 モデルの規模・性質やデータの性質、事後確率分布からの情報抽出をどの程度行うかによってデータ同化の方法は多岐に渡るが、複雑系一般で現れるような大規模非線形系に対するデータ同化法は理論・応用ともに発展途上にある。 本セミナーでは、講演者がこれまでに開発してきたデータ同化法の高度化のための数学基盤を説明し、データ同化法に現れる美しい数理構造や、 地震断層運動や金属/岩石組織成長など固体地球科学分野で現れる大規模複雑系へのデータ同化の応用研究を紹介する。

#10

  • Date and Time

    Start at 10:00 on Monday, August 5, 2024

  • Place

    F202

  • Title

    マルチモーダル計測×スケーリングで解き明かす流体現象、およびその地球惑星現象・工学的応用への展開

  • Speaker

    山本 憲

  • Affiliation

    大阪大学

  • Abstract

    近年の可視化計測技術の目覚ましい進化とともに、非定常流体現象に対する人類の理解は急速に深化している。 その中でも、液滴が関係する現象は我々の日常生活 (雨滴、シャワーから噴出する水滴など) に関するものから工学的応用 (マイクロ生化学チップ、スプレー冷却など) に関するものまで、多彩な研究が実施されている。 また最近は、より高度な可視化計測技術が要求される複雑流体 (非ニュートン流体や粒子懸濁液) にも注目が集まりつつある。本セミナーでは、上記分野を専門とする講演者が最近実施した実験的研究を紹介する。 液滴や粒子懸濁液は多くの界面を内包しているため、伝統的な流体計測技術を容易に適用できない場面も多い。 そのような系において、実験系の工夫や複数の計測技術の併用 (マルチモーダル計測) による情報取得とスケーリングによる物理モデル構築の組み合わせが、現象解明や工学的応用のための強力なツールとなることを実例とともに示す。 また、これらの手法の応用による地球惑星現象 (クレーター形成や液状化現象など) 解明への展開や今後の展望についても議論する。

#9

  • Date and Time

    Start at 13:30 on Tuesday, July 30, 2024

  • Place

    F202

  • Title

    Redox freezing in the upper mantle: Carbonated melt from young hot subducted oceanic crust as the origin of Ronda and Beni Bousera diamonds

  • Speaker

    Prof. David Dobson

  • Affiliation

    University College London

  • Abstract

    There has been much recent interest in redox freezing of carbonated melts in the transition zone as a novel origin for the super-deep suite of diamonds. In this model, the subducting slab is sufficiently oxidised for carbonate mineral stability. Lowering of the carbonated MORB liquidus temperature around 14 GPa produces mixed-silicate carbonate melts which migrate into the overlying mantle. Redox reactions between the melt and surrounding mantle stabilise diamond and cause simultaneous freezing by loss of the carbonate flux component. This view makes superdeep diamonds anomalous in the suite of mantle diamonds, giving them their own unique petrogenesis.

    The Ronda peridotite is the largest Alpine-type peridotite in the world and is unusual (along with its sister Beni Bousera peridotite) in containing graphite pseudomorphs after diamond. Here we show that the original diamonds could have formed by redox freezing of wet, carbonated, MORB melt at pressures of 4-5 GPa, broadly consistent with barometry of host garnet peridotites. This requires the slab source to have been very young and hot, meaning that it would not be normal for modern subduction settings. However oceanic crust in the far-Western Tethyan seaway was only ~50Ma old when subduction initiated meaning that the Betic-Rif arc system is one of the few places where we might expect to have water and carbonate-fluxed slab melting around 90-150 km depth.

#8

  • Date and Time

    Start at 15:30 on Monday, July 29, 2024

  • Place

    F202

  • Title

    太陽系小天体の惑星地質学と惑星探査データの現在

  • Speaker

    平田 直之

  • Affiliation

    神戸大学

  • Abstract

    近年、各国の政府機関や民間企業によって数多くの惑星探査機が活躍しており、太陽系固体天体のデータが急速に増えている。 固体天体の一番調べやすい部分は天体の表面である。地質学の知見を用いて、天体の表面状態からその天体のすべて(構成物質・構造・起源・進化)を見通そうというのが惑星地質学である。 と同時に、地球とはまるで異質な環境(低重力・真空等)で生じる類似の現象をつぶさに観察し理論的実験的に考えることで、地球で起きている現象の実像と物理素過程をもっと深く理解しようという学問領域でもある。 固体天体の中でも、小天体は熱変成を受けにくく太陽系でも始原的とされ、その起源や進化についての関心が高い。そのため、様々な小天体探査が精力的に行われている。 その結果、これらの小天体は活発で多様で変化に富むことが明らかになり、その地表面特性や表層進化に関する知見は急速に伸長している。 その上で、これらのデータの科学的価値を最大化して研究として成立させるためには、背景にある物理あるいは化学について深く理解し車輪の両軸のように連携することが重要である。 たとえば、地球と比べて低重力の天体表層で生じる土砂の振る舞いは、粉体の天然の実験場とも言え、粉体の諸性質と照らし合わせての研究が重要となる。本セミナーでは、まず惑星探査データの現在地と将来を紹介する。 その上で、衛星・小惑星・環に関連する我々の探査データ解析の現状と最新の理論研究について紹介する。これらの取り組みを通じて、太陽系固体天体の表層進化への包括的理解に向けた、フロンティアを押し広げるために必要な今後の方向性についても議論する。

#7

  • Date and Time

    Start at 13:00 on Monday, July 29, 2024

  • Place

    F202

  • Title

    非平衡散逸粒子系における構造形成と力学物性の相補的関係

  • Speaker

    江端 宏之

  • Affiliation

    九州大学

  • Abstract

     車、人、細胞、モーターたんぱく質など、自発的に動く要素の集団であるアクティブマターは、自然界において幅広い空間スケールで現れる。 アクティブマターは非平衡散逸系の典型例であり、熱平衡系では見られない動的な構造を形成し、小さな外部刺激に対して大きな応答を示すソフトマターとして振る舞う。 近年、アクティブマターは、指向性のある集団運動や物質輸送などの機能に加え、超流動や負の粘性などの特異な物性を持ちうることが分かってきている。 しかし、アクティブマターの物性に関する知見は未だ少なく、その構造形成や機能との関係は未解明である。
     本セミナーではアクティブマターの駆動力、構造形成、物性について、主に細胞を用いた実験結果を紹介する。 まずは、低密度の細胞集団が、周囲の力学環境に依存した構造形成と力生成をすることを実験的に示し、数理モデルを用いて力学環境依存的な動的構造形成を説明できることを紹介する。 次に、高密度のアクティブマターのモデル系として、生細胞の細胞質と濃厚バクテリア懸濁液に着目し、マイクロレオロジー測定の結果を示す。 アクティブマターが持つ低周波の非熱的な揺らぎが、高密度系の粘弾性やせん断粘度などの力学的な物性を制御していることを示す。 さらに、自然界に見られる様々な動的構造形成のメカニズムの理解を目指し、機械的刺激により流動化した粉体などを含む、非熱的な揺らぎを持つ一般的なソフトマターの構造形成と物性の関係について議論したい。

#6

  • Date and Time

    Start at 13:30 on Friday, July 26, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    MeV dark matter and MeV gamma-ray observation

  • Speaker

    Prof. Shigeki Matsumoto

  • Affiliation

    Kavli IPMU, University of Tokyo

  • Abstract

    We know that dark matter exists in our universe; however, we do not know its microscopic nature. Among various dark matter candidates, the so-called WIMP (weakly interacting massive particle) with an electroweak scale (GeV scale) mass has attracted attention so far, and most efforts to detect dark matter experimentally and observationally are based on this ansatz. However, although the electroweak scale WIMP is indeed attractive from both cosmological and particle physics viewpoints, no robust signal has yet been detected. Hence, dark matter candidates, which are heavier or lighter than the WIMP, start attracting attention. In particular, dark matter candidates having a MeV scale mass are attracting much attention, as those are expected to produce MeV gamma rays via their annihilation & decay and be detected by the MeV gamma-ray observation in space utilizing telescopes that are being developed to overcome the MeV-gap difficulty, On the other hand, it is quite non-trivial from the particle physics viewpoint whether or not a well-motivated dark matter candidate, which has a MeV-scale mass and gives a strong enough signal that can be detected in the MeV gamma-ray observation in the near future, exists. We want to focus on this problem in this seminar and show that such candidates indeed exist!

#5

  • Date and Time

    Start at 11:10 on Thursday, June 13, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    X線で明らかにする中性子星とその周辺の構造

  • Speaker

    米山 友景

  • Affiliation

    中央大学

  • Abstract

    中性子星は、大質量星 (>8 太陽質量) の重力崩壊型超新星爆発によって生じるコンパクト天体である。平均密度は原子核物質と同等であり、 その超高密度によって、中性子星の内部及び周辺では様々な極限環境が実現していると考えられる。このため、中性子星は天文学的興味のみならず基礎物理の観点からも重要な天体である。特に、 ブラックホールに匹敵する強重力と 10^12 -- 10^15 G に及ぶ強磁場は大きな特徴である。中性子星は電波からガンマ線に至るまでの広帯域で観測され、磁場の強度や電磁波スペクトルによって様々な種族に分類される。 ほとんどの種族では中性子星周辺での粒子加速による非熱的な放射が主に観測される。一方、一部の種族では軟X線帯域での熱的放射が観測されている。 スペクトルや放射半径から、これは中性子星表面付近からの放射であると考えられ、中性子星本体を直接観測する数少ない方法である。 中でも、X線単独中性子星 (XINS) という種族は非熱的放射を伴わない純粋な熱的放射を示す。これまで、XINS は熱的放射によって穏やかに冷却されてゆくばかりの天体と考えられていた。 しかし近年、X線スペクトルに高エネルギー成分が発見され、従来の想像を超えて複雑な観測的性質をもつことが明らかとなった。また、中性子星が恒星と連星系を組んでいる場合、自らの強重力で降着系を形成する。 降着流の重力エネルギー解放の効率は極めて高く、降着系の物理は宇宙のエネルギー循環を考える際に重要な役割を果たす。中性子星連星もまた多様な観測的性質を示すが、いまだ統一的な理解は得られていない。 本講演では、単独中性子星及び中性子星連星のいくつかの観測的研究をレビューし、日本の最新鋭のX線天文衛星「XRISM」による新たな研究の展望について紹介する。 また、XRISM の開発/運用、近い将来の高エネルギー宇宙物理実験の取り組みについても紹介する。

#4

  • Date and Time

    Start at 8:40 on Thursday, June 13, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    X線による白色矮星の質量・半径測定とX線望遠鏡開発

  • Speaker

    林 多佳由

  • Affiliation

    NASA Goddard Space Flight Center

  • Abstract

    私はX線による白色矮星(WD)研究と、X線望遠鏡(XRT)開発を並行して進めている。 質量降着があるWDの近傍には、重力ポテンシャルを反映した最高1億Kの高温ガス(プラズマ)が存在する。このプラズマはX線を放射し、さらにその一部はWD大気で反射される。 私は流体力学と光線追跡法でプラズマ放射と反射をそれぞれモデル化し、WD質量をパラメータに持つスペクトルモデルを構築した。これを観測に適用し、WD質量測定に成功している。 ただし、この手法では磁場や自転がなく、完全縮退電子を仮定したWDの質量と半径の関係を援用しており、一般にこの仮定は正しくない。そこで、観測のみによる質量・半径測定を目指す。 想定している手法の一つは、よく測られている角速度と、XRISMの反射X線観測で得られるWD表面速度(∝角速度×半径)から半径を測定し、 これとプラズマ最高温度から得られる質量/半径を組み合わせるものである。質量・半径測定は、WDの状態方程式や質量限界を制限する。 従って、その結果によっては、質量限界に達したWDの爆発(Ia型超新星)のシナリオや、Ia型超新星観測で得られた加速膨張宇宙の測定に修正を迫る可能性がある。 XRT開発では軽量かつ大有効面積が特徴の多重薄板型XRTを開発している。 私は試作品開発で反射鏡の製作、位置調整など、一通りの工程を自ら行い、この型のXRTで最高の結像性能(1.1分角)を達成している。 XRISM搭載XRTも同型で、私はX線入射位置ごとのvignettingを地上で測定してこれを応答関数に反映させるなど、主にソフト面の改良に取り組んだ。 結果、得られた物理的、幾何学的に妥当な応答関数は、較正用天体の観測でリファレンス値と一致する結果を出している。 今後は超小型から大型衛星、海外とのコラボレーションを念頭に、国内のXRT開発システム立ち上げを目指す。特に、軽量が長所である多重薄板型XRTは超小型/小型衛星と相性が良く、 この組み合わせを確立することでX線観測の間口を広げたい。本セミナーでは私のこれまでの研究のハイライトを紹介し、研究計画を提示する。

#3

  • Date and Time

    Start at 16:50 on Thursday, May 16, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    High-energy properties of compact binary systems and prospects on future X-ray & gamma-ray observations

  • Speaker

    米田 浩基

  • Affiliation

    Julius Maximilians Universität Würzburg

  • Abstract

    Compact binary systems, consisting of a neutron star/black hole as one of the binary stars, are ideal for studying energetic physics near compact objects, e.g., gravity, strong magnetic field, and non-equibilium physics. The recent development of gamma-ray observations enabled the study of high-energy emission features in some compact binary systems, and it revealed their nature as cosmic-ray accelerators in the Galaxy. In this talk, I review our observations and multiwavelength/timing analysis of the gamma-ray binary systems, a subclass of high-mass X-ray binaries, using X-ray and GeV gamma-ray satellites. I also want to discuss ideas about future observations of compact objects with new observatories, e.g., XRISM and COSI, mainly focusing on connections between nuclear reactions and high-energy particles produced in them.

#2

  • Date and Time

    Start at 10:30 on Thursday, May 16, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    精密X線分光と高精細ミリ波撮像を主軸としたブラックホールを取り巻く物質循環の解明

  • Speaker

    川室 太希

  • Affiliation

    理化学研究所

  • Abstract

    銀河中心に鎮座する超巨大ブラックホール (SMBH) がいかに誕生、成長してきたかは天文学の大きな未解決問題である。 さらに未解明のSMBHと銀河の関わり合いも含めて、これらの謎を解明するには、両者の間の物質循環を理解することが重要である。 そこで、SMBHに質量が降着し、同時に輻射や質量放出を行っている状態、活動銀河核 (AGN) が鍵となる。 なかでも、銀河と SMBH を繋ぐガスや塵で出来た AGNトーラスは、物質循環における重要構造である。 そこで私は、AGN の過去最大規模の広帯域 X線分光サーベイを実施し、質量降着率に応じてトーラス構造がダイナミックに変化する様を明らかにした。 そして、その変化は星形成と AGNによる輻射によって解釈できることを突き止めた [1,2]。 さらに、硬 X 線とミリ波データにより、分厚いトーラスに隠されてきた AGNの検出手法も発見した [3]。隠された SMBH の成長史の解明に繋がる大きな成果である。 今後、XRISM の精密 X 線分光と更にサブミリ・ミリ波干渉計 ALMAの高精細撮像を独自に援用することで、これまでの研究を最大限に発展させる。 輝線の広がりをかつて無い精度で抑え、トーラス全体の運動や空間スケールを初めて明らかにする。さらに、高い輝線感度により微弱な放出流まで検出することで物質循環の理解を突き詰める。 また、ALMAを加えることで、トーラスでの星形成可能性まで明らかにしたい。 以上に加え、来る時間領域天文学の黄金時代に向けて、全天 X 線監視装置 MAXIのメンバーとして培った変動天体検出の知識を活かしつつ [4,5]、量子機械学習を用いた光度の異常変動検出といった独自の手法開発も行う。 そして、SMBHへの急激な降着流の進化や、重力波対応の BH の所在を明らかにし、様々な時間スケールの BH 成長の理解を深化させる。 また、将来計画の広帯域JEDI/CHRONOS ミッションのコアメンバーとしてサイエンス検討並びに装置開発にも貢献したい。

    [1] Kawamuro et al., 2016, ApJS, 225, 14
    [2] Kawamuro et al., 2016, ApJ, 831, 37
    [3] Kawamuro et al., 2022, ApJ, 938, 87
    [4] Kawamuro et al., 2018, ApJS, 238, 32
    [5] Kawamuro et al., 2016, PASJ, 68, 58

#1

  • Date and Time

    Start at 8:50 on Wednesday, May 1, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    高エネルギー宇宙観測で理解する銀河の化学的・熱的・非熱的進化の担い手としての超新星爆発

  • Speaker

    鈴木 寛大

  • Affiliation

    宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所

  • Abstract

    星の進化の最終段階である超新星爆発は、およそ1e51 ergという莫大な運動エネルギーを衝撃波を介して化学的(重元素の生成)・熱的(高温プラズマ)・非熱的(宇宙線)エネルギーに分配して銀河へ放出する。 超新星は惑星をなす重元素や銀河全体に広がるプラズマなどを通じて銀河進化を担うという天文学的側面と、原子核物理が効く爆発メカニズム、無衝突衝撃波などの極限環境の物理的側面の双方から最も注目される宇宙物理現象のひとつである。 私はX線からガンマ線帯域の高エネルギー宇宙観測を駆使して、高温プラズマの形成過程や宇宙線加速の性能、爆発で残される中性子星の特徴などを研究してきた。 今年2月に定常運用期に入ったX線天文衛星XRISMは私も開発期から尽力しているJAXA主導のミッションであり、超新星プラズマのように広がった天体の精密X線分光研究について革新的な性能を誇る。 XRISMを使えば衝撃波直下の重元素の温度や運動、組成を初めて直接測定することで超新星のエネルギー放出の物理過程を紐解くことができ、現在まさに超新星プラズマを対象としたXRISMのファーストライト論文に尽力しているところである。 本講演では将来に向け、既存の天体をより深く見るだけでなく、今まで見えなかったマイノリティを捉えて包括的な理解を築くためのX線・ガンマ線機器開発のアイデアについても述べたい。

2023年度/FY2023

#11

  • Date and Time

    Start at 15:10 on Tuesday, February 6, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    Cosmology with the polarized SZ effect

  • Speaker

    Prof. Kiyomoto Ichiki

  • Affiliation

    Nagoya University

  • Abstract

    The scattering of cosmic microwave background (CMB) radiation in galaxy clusters induces polarization signals according to the quadrupole anisotropy in the photon distribution at the cluster location. This "remote quadrupole" derived from the measurements of the induced polarization provides an opportunity for reconstructing primordial fluctuations on large scales. We discuss that comparing the local CMB quadrupoles predicted by these reconstructed primordial fluctuations and the direct measurements done by CMB satellites may enable us to test the dark energy beyond cosmic variance limits.

#10

  • Date and Time

    Start at 16:30 on Wednesday, January 17, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    Studying fundamental physics and astrophysics using millisecond pulsars around a massive black hole

  • Speaker

    Prof. Kinwah Wu

  • Affiliation

    University College London

  • Abstract

    Systems containing a massive black hole with millisecond pulsars are useful apparatus for the study of fundamental physics and astrophysics. These kinds of systems are by nature multi-messenger sources, hence observations of them are not restricted to only photonic/electromagnetic means. In this talk I will demonstrate how we can use these kinds of systems (1) to determine spin-curvature coupling in strong gravity, (2) to investigate gravito-magnetism and non-linear dynamics in hierarchical 3-body relativistic systems and (3) to map the spatial distribution of baryons in the diffuse media around a nuclear black hole in a galaxy using neutrino imaging. The corresponding systems appropriate for the studies in these three cases are (1) extreme-mass-ratio binaries containing a massive black hole and one millisecond pulsar, (2) a tightly bounded millisecond pulsar pair in a relativistic orbit around a massive black hole, and (3) a cluster of millisecond pulsars in the vicinity of the massive black hole at the Galactic Centre, which is known to be surrounded by a diffuse molecular torus. In each case, I will explain the theories behind it and discuss the observational prospects in the very near future using the new generation of multi-messenger instruments.

#9

  • Date and Time

    Start at 13:30 on Wednesday, January 17, 2024

  • Place

    F202

  • Title

    小惑星リュウグウ試料中の有機化合物

  • Speaker

    薮田 ひかる

  • Affiliation

    広島大学

  • Abstract

    小惑星サンプルリターン計画「はやぶさ2」は、太陽系と生命の材料である水と有機物の起源と化学進化を解明することを目的として、炭素質(C型)小惑星リュウグウの試料を採取し地球に持ち帰って詳細な化学分析を行ったミッションである。 2020年12月6日、探査機によって小惑星リュウグウの試料が帰還した後、JAXAでのキュレーションを経て、2021年6月から2022年5月までの1年間にわたりリュウグウ試料の初期分析が行われた。 初期分析チームを構成する6つのサブチームの一つである固体有機物サブチームは、さまざまな顕微分析を複合して、リュウグウ試料の固体有機物(複雑な巨大分子)の化学組成・同位体組成・形態を明らかにした(Yabuta et al. 2023)。 可溶性有機物サブチームは、種々の質量分析を用いてリュウグウ試料中の生体関連分子の分布を明らかにした(Naraoka et al. 2023)。 これらの研究によって、C型小惑星の有機物と化学的に始原的な炭素質コンドライト隕石の有機物との間の直接的な関係を実証した。 リュウグウの方が隕石よりも固体有機物の組成が多様であったことは、リュウグウ母天体における有機物と水の反応や表層作用がさまざまな条件で起こったことを反映すると共に、リュウグウ有機物の前駆物質が局所的に保存されていることを示す。 小惑星帯に多く存在するC型小惑星が初期の地球に大量に降り注いだと仮定すれば、それに含まれる有機物がハビタブルな天体環境の形成に寄与した可能性が期待できる。

#8

  • Date and Time

    Start at 15:00 on Tuesday, January 9, 2024

  • Place

    F608

  • Title

    Deriving New Constraints on the History of Black Hole Feedback

  • Speaker

    Prof. Evan Scannapieco

  • Affiliation

    Arizona State University

  • Abstract

    We still do not understand the processes that shaped the most massive galaxies in the universe. Each such galaxy is made up of a bulge of old, red stars surrounding a supermassive black hole (BH), and the lack of current star formation requires the black hole to have exerted significant feedback when the galaxy was formed. Yet the details of such feedback from active galactic nuclei (AGN) remain unknown. I will describe or ongoing efforts to constrain this process through numerical simulations and observations at two key wavelength ranges. At microwave wavelengths, stacked measurements of the thermal Sunyaev-Zel’dovich (tSZ) effect constrain AGN feedback by measuring the distribution and total internal energy of circumgalactic gas. At X-ray wavelengths, stacked observations can map out the density, temperature, and metallicity distribution circumgalactic gas. Together these constraints are shedding new light on one of the most important issues in the study of galaxy formation.

#7

  • Date and Time

    Start at 15:00 on Tuesday, December 5, 2023

  • Place

    F608

  • Title

    Tidal Disruption Events As Transient Probes of Massive Black Holes

  • Speaker

    Prof. Jane Dai

  • Affiliation

    The University of Hong Kong

  • Abstract

    Tidal disruption events (TDEs), in which stars are torn apart by the tidal force of massive black holes, provide great opportunities for probing massive black hole demographics and studying black hole accretion and jet physics. In this talk, I will first give an introduction to the TDE physics and observations. Then I will discuss our latest work on understanding the rates, demographics, diversity, and evolution of TDEs. In particular, I will mention how we can use TDEs to probe intermediate mass black holes and Population III stars. I will also show our latest work on general relativistic and radiative transfer simulations for understanding the accretion and emission processes in TDEs.

#6

  • Date and Time

    Start at 10:30 on Tuesday, November 28, 2023

  • Place

    F608

  • Title

    Winds from stellar and supermassive black holes revealed by XRISM

  • Speaker

    Prof. Christine Done

  • Affiliation

    University of Durham, UK

  • Abstract

    Accretion disc winds are clearly seen in the supermassive black holes which power the Active Galactic Nuclei (AGN) and may be the major component of AGN feedback on galaxy formation across cosmic time. However, we do not yet know how these are launched and accelerated. Are they magnetically driven, connecting them to the jet as well as to the accretion process itself, or are they radiatively powered? I will show how comparing to data from the stellar mass black holes can help answer these questions, and how new data at microcalorimeter resolution from XRISM will make major breakthrough in our understanding of these winds.

#5

  • Date and Time

    Start at 15:30 on Tuesday, November 14, 2023

  • Place

    F608

  • Title

    What can we learn about the physics of galaxy formation from the James Webb Space Telescope

  • Speaker

    Rachel Somerville

  • Affiliation

    Center for Computational Astrophysics, Flatiron Institute

  • Abstract

    The first year of James Webb Space Telescope observations has yielded many surprises and puzzles, especially about the very early Universe. For example, JWST has found many more ultra-violet luminous galaxies at very early times (z>10, less than 200 million years after the Big Bang) than predicted by pre-launch theoretical models, and has also uncovered more rapidly accreting black holes than expected. I will review the recent status of the observational results, and will discuss what we can learn from this about the physics of galaxy formation based on numerical simulations and semi-analytic models.

#4

  • Date and Time

    Start at 13:00 on Thursday, October 5, 2023

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    重力レンズ効果による標準宇宙論の徹底検証

  • Speaker

    宮武 広直

  • Affiliation

    名古屋大学

  • Abstract

    宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background; CMB)の精密測定をはじめとする 天文学観測技術の飛躍的な発展によって、宇宙のエネルギー密度のうち、既知の 物質はたった約5%しかなく、残りの約26%は未知の物質である暗黒物質、約69%は加 速膨張を引き起こす未知のエネルギーである暗黒エネルギーであるとするΛCDM標準 宇宙論が確立された。この標準宇宙論は観測事実をよく説明するものの、それは宇宙の 95%は未知であるという仮定の上に成り立つものである。よって、その暗黒成分の正体の 解明、もしくはΛCDM標準宇宙論を超える理論の発見を目指して世界中の研究者が大 規模サーベイ観測を行っている。その中でも、特に弱重力レンズ効果を用いた宇宙の大 規模構造の測定による標準宇宙論の検証が現在活発に行われている。本講演では、す ばる望遠鏡超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(HSC)で取得された広視野深宇 宙サーベイデータを用いた弱重力レンズ効果精密測定による最新の標準宇宙論の検証 結果を解説するとともに、HSCで発見された遠方銀河とCMB重力レンズを用いた遠方 宇宙論の先駆的研究を紹介する。また、これらの研究の将来展望について述べる。

#3

  • Date and Time

    Start at 10:00 on Thursday, October 5, 2023

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    PRIME望遠鏡が切り開くサイエンス、さらにその先へ

  • Speaker

    鈴木 大介

  • Affiliation

    大阪大学

  • Abstract

    赤外線天文グループが中心となって運営するPRIME望遠鏡がついに稼働した。PRIME 望遠鏡は近赤外線において世界最大級の視野(1.45平方度)があり、主目的は世界初の 近赤外線マイクロレンズ惑星探査である。これまでの可視光によるマイクロレンズ惑星探 査(MOA)では観測が困難であったダスト減光が強い銀河中心・銀河面を含む低銀緯領 域も探査できるようになり、MOAよりも5倍の統計量を稼ぐと見込まれている。また、低 銀緯領域のイベントレートはまだ精密に測定されておらず、将来のRoman宇宙望遠鏡 による銀河系中心探査のフィールド選定に向け、イベントレートの測定が重要となる。また、 銀中方向のトランジェントや、ミラ型変光星の同定など副産物が期待される。本セミナーでは、 これまでのマイクロレンズ惑星探査でわかってきたことに加え、PRIMEで期待さ れるサイエンスを紹介し、銀河系中心方向の観測計画があるRoman, JASMINE, ULTIMATE-Subaruなどに向け、どのようにPRIMEのサイエンスを展開させていくか議論 したい。

#2

  • Date and Time

    Start at 13:00 on Tuesday, October 3, 2023

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    系外惑星系の時間進化の観測的解明に向けて

  • Speaker

    増田 賢人

  • Affiliation

    大阪大学

  • Abstract

    過去30年にわたる観測により約5000個にのぼる系外惑星が検出され、系外惑星系は その物理的性質・軌道の両面で太陽系を超えた多様性を示すことが明らかになった。私は このような多様性の起源を解明する鍵として、「惑星の性質が主星の寿命を通じてど のように時間的に進化するか?」という問題に焦点を当てて研究を行っている。本講演で はまず、形成後の惑星の軌道や物理的性質に生じ得るさまざまな変化、それらに起因す ると考えられる系外惑星系の観測的特徴、およびその解釈から得られる惑星の内部構 造や形成過程への示唆について述べる。次にこのような時間進化の描像を観測的に検 証するための取り組みとして、若い惑星系の探査と物理的性質の決定についてのこれま での研究や、時間進化の統計的解析のための手法の開発、恒星年齢の推定手法の拡 張の試みについて紹介し、系外惑星系の時間進化の包括的な理解に向けた展望を論じ る。

#1

  • Date and Time

    Start at 10:00 on Monday, October 2, 2023

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    ハビタブルな系外惑星の探査を目指した高コントラスト観測テクノロジーの開発

  • Speaker

    村上 尚史

  • Affiliation

    北海道大学

  • Abstract

    現在、5000を超える系外惑星が、主に間接的な手法により発見されている。し かしながら、惑星の光を「直接的に」捉えた例はごくわずかである。これは、惑 星が恒星に比べて圧倒的に暗いため、恒星からの強力な光(回折光および散乱光) が惑星光を覆ってしまうためである。この問題を解決するため、恒星光を除去す る高コントラスト観測テクノロジーが鍵となる。観測システムは主に、恒星回折 光を除去する「コロナグラフ」、散乱光を除去する「波面センシング・制御系」、 データ処理により恒星光を除去する「ポストプロセス技術」などから構成される。 その究極目標は、ハビタブルゾーン(生命が居住可能な領域)に存在する地球型 惑星を直接観測し、その詳細な分析によりバイオシグナチャー(生命の存在を示 唆する指標)を探査することである。生命が存在するハビタブルな系外惑星の探 査は、将来のスペース望遠鏡や地上超大型望遠鏡などにより実現できると期待さ れている。 このような研究背景の中、我々は、北海道大学に2つの施設 FACET (FAcility for Coronagraphic Elemental Technologies) および EXIST (EXoplanet Imaging System Testbed) を構築した。これらは、天体光の代わりに人工光源を 用い、光学定盤上に観測装置シミュレータを構築して「模擬天体観測」を行う施 設である。これらの施設を主要拠点として、フォトニック結晶技術にもとづくコ ロナグラフデバイスや、特殊偏光プリズムによる干渉計ベースのコロナグラフ、 空間光変調器を利用した光波面制御など、独自の高コントラスト観測テクノロジ ーの開発を進めている。最近では特に、広い波長域にわたる系外惑星の分析を目 指して、広い波長域で動作するコロナグラフデバイスや、多波長同時の波面セン シング・制御を可能にする新たな光学モジュールなど、新規技術の開発を推進し ている。本セミナーでは、将来のハビタブル惑星探査を目指して我々が取り組ん でいる、高コントラスト観測テクノロジー開発の一端(現在の開発状況や将来の 展望など)について紹介する。

2022年度/FY2022

#13

  • Date and Time

    Start at 15:10 on Wednesday, December 14, 2022

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    小さな系外惑星の大気組成:岩石の影響

  • Speaker

    藤井 友香

  • Affiliation

    国立天文台

  • Abstract

    地球の1-3倍程度の系外惑星が多数見つかっており、そのうちのいくつかは主星のハビタブルゾーンの付近を公転していることが分かっている。これらのバルク組成や表層環境、形成過程についてはまだよく分かっていない。JWSTの打ち上げもあり、今後これらの小さな系外惑星の大気の分光観測が飛躍的に進み、その素性についての理解が深まることが期待されている。しかし、これら小さな惑星は、これまで大気観測の主役であったガス惑星と異なり、その質量のほとんどを鉄や岩石、水からなるコアが担っていると考えられ、大気組成はそれらとの化学反応や揮発性元素の分配といったプロセスの影響を受ける。本講演では、惑星内部の影響を考慮した小さな系外惑星の大気モデリングの試みと、将来の大気分光観測への期待を議論する。

#12

  • Date and Time

    Start at 10:30 on Friday, October 7, 2022

  • Place

    F102+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    放射対流平衡下における湿潤対流の自己集合化に関する数値的研究

  • Speaker

    柳瀬友朗

  • Affiliation

    理化学研究所・基礎科学特別研究員

  • Abstract

    雲は水の相変化を伴う湿潤対流運動であると同時にその光学特性・降水過程を 通じて気候系において重要な役割を果たすが、気候モデルを用いた将来気候予測 の不確実性をもたらす主要因の一つが雲の表現であるように、雲の役割・動態の 理解は気候科学における難問であり続けている。雲と一言でいってもそれが指す 対象と空間スケールは多岐に及ぶ。例えばミクロな観点では雲粒や雨粒(数10μm~ 数mm)を指すが、よりマクロな観点では潜熱解放・浮力を通じて駆動される対流 雲(数km)、また多数の対流雲が組織化することで生み出されるメソ対流系や台風 (水平数10km~数100km)、さらには惑星規模の大気循環と結合した大規模雲群を伴 う熱帯季節内変動マッデン・ジュリアン振動(水平数1000km)に至る豊かな階層構 造が存在する。このような雲の階層構造の背後にある物理メカニズムを紐解くこ とが気候系の成り立ちの基礎的理解に繋がると考えられている。発表者はこれま で、個々の対流雲スケールからより上位の構造への自発的な組織化過程の基礎的 理解を深めることを目的に、雲解像モデル(非静力学的な大気運動と雲微物理過 程の結合を直接的に解くことができる、数値気象モデルの一種)を用いて、理想 的な放射対流平衡の状況下における雲の自己組織化・自己集合化[1]に関する数 値的研究を行ってきた。本発表では、雲の自己集合化の発生条件と発生物理メカ ニズム[2,3]、また集合化した雲が形成する上位階層構造における特徴的な水平 形態・距離[4]について、最近明らかになってきた知見と、今後の展望を紹介し たい。
    [参考文献]
    [1] Muller et al. (2022). Annu. Rev. Fluid Mech., 54,133-157,doi.org/10.1146/annurev-fluid-022421-011319
    [2] Yanase et al. (2020). Geophys. Res. Lett., 47, doi.org/10.1029/2020GL088763
    [3] Yanase et al. (2022a). J. Atmos. Sci., doi.org/10.1175/JAS-D-21-0313.1
    [4] Yanase et al. (2022b). Geophys. Res. Lett., 49,doi.org/10.1029/2022GL100000

#11

  • Date and Time

    Start at 10:30 on Thursday, October 6, 2022

  • Place

    B301+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    ジャミング転移の普遍性についてのシミュレーションと平均場理論による研究

  • Speaker

    池田晴國

  • Affiliation

    学習院大学理学部・助教

  • Abstract

    粉体のように短距離相互作用する粒子系を圧縮していくと、ある密度で突然粒子 が接触し始め、粒子間の相互作用によって固体のように振る舞い始める。これ が、ジャミング転移と呼ばれる現象である。ジャミング転移点近傍では、様々な 物理量がベキ的な振る舞いを示し、転移点直上では相関長と緩和時間が発散す る。これは、ジャミング転移が、イジング模型における2次相転移のような、臨 界現象であることを示唆している。ジャミング転移は、粉体のレオロジーを理解 する上で重要な役割を果たすだけでなく、粒子系で見られる代表的な相転移の1 つとして、統計物理学の観点からも興味を持たれ活発に研究されてきた。本セミ ナーでは、講演者がこれまで行ってきた、ジャミング転移の臨界現象に関連する 3つの研究、1.ジャミング転移の次元依存性、2. ジャミング転移の粒子形状依存 性、3. ジャミング転移点近傍における物理量のゆらぎ、についてお話しする。

#10

  • Date and Time

    Start at 15:10 on Wednesday, October 5, 2022

  • Place

    F102+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    情報流体力学:乱流におけるマクロとミクロの情報伝達

  • Speaker

    田之上智宏

  • Affiliation

    京都大学理学研究科・博士課程

  • Abstract

    乱流は気候変動や星・惑星形成から生体内に至るまで遍在的に見出される現象で あり、そこでのゆらぎや物質・エネルギー輸送に不可避な影響を及ぼしうる。そのため、乱流による輸送現象とそれに伴うゆらぎの性質を解明することは、地 球惑星科学的現象を理解する上でも重要といえる。興味深いことに、乱流では小スケール物理量のゆらぎが大スケール物理量のゆら ぎに時間遅れで追随することが知られている。素朴には、このゆらぎの追随現象は大スケール渦の情報が小スケールへ伝達され ていることを示唆しているように思える。本講演では、情報熱力学の観点から明らかになってきた乱流中の情報の流れにつ いて議論する。情報熱力学とは部分系間の熱や情報のやりとりに対して普遍的制限を与える理論 的枠組みであり、近年では化学反応ネットワークなどにも応用されている。ここでは、情報熱力学を乱流に対して適用することで、速度場に関する情報がマ クロからミクロへ伝達されていることを示す。このプロセスにおける情報熱力学的効率は典型的なMaxwellの悪魔に比べて極め て低く、乱流の情報処理能力の低さを物語っている。さらに講演ではこれらの結果を踏まえて、「情報流体力学」とでもいうべき今後 の研究の方向性を議論する。

#09

  • Date and Time

    Start at 15:10 on Tuesday, October 4, 2022

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    アクティブマターの非平衡協同現象における普遍的性質

  • Speaker

    足立景亮

  • Affiliation

    理化学研究所・基礎科学特別研究員

  • Abstract

    超伝導や磁性など、要素が多数集まることで初めて生じる協同現象は、主に物理 系において研究が進められ、背後にある相転移や一見異なる系に共通して現れる 普遍的性質が明らかにされてきた。一方、生物においても、細胞内タンパク質の 相分離やバクテリアの凝集といった協同現象が見つかっており、物理的メカニズ ムや生物的機能の研究が進められている。特に、細胞やバクテリアのように自ら 動く要素の集団はアクティブマターと呼ばれ、平衡状態の物質には見られない多 彩な協同現象が生じる。本セミナーでは、アクティブマターの凝集現象に焦点を 当て、統計力学的視点から凝集のメカニズムや普遍的性質を議論する。まず、ア クティブ系においては、平衡状態の相分離とは異なり要素同士を引きつける引力 相互作用がなくても凝集が起こることを説明する。次に、基板の配向性などに よって系に空間的異方性が加わると、長距離に及ぶ密度相関が現れ、また凝集状 態への相転移には外部駆動系という非平衡多体系との共通点が現れうることを示 す。さらに、量子力学に従う原子スケールの系でもアクティブマターの対応物が 存在しうることを提案する。今後の展望として、アクティブマターを中心に非平 衡協同現象の普遍的性質を探る方向性や、タンパク質の相分離に注目して細胞が 利?する協同現象のメカニズムを探る方向性について述べる。

#08

  • Date and Time

    Start at 14:00 on Friday, September 16, 2022

  • Place

    F102+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    地球型惑星の磁場の多様性とコアの伝導度

  • Speaker

    太田健二

  • Affiliation

    東京工業大学

  • Abstract

    太陽系内の岩石惑星(水星、金星、地球、火星)は鉄合金からなる中心核(コア)を持つと考えられる。地球においては液体状態の外核の対流によるダイナモ作用により、地磁気が生成し地質学的タイムスケールで維持されている。人工衛星による惑星探査から水星には自励磁場が確認される一方、金星と火星からは惑星磁場が確認できない。このような磁気圏に関する地球型惑星間での多様性は何に起因するのであろうか? 地球型惑星の金属コアの電気・熱伝導率はその磁場生成のメカニズムと変遷を理解するための重要な物理量であり、高温高圧実験や理論計算による推定が活発になされてきている。講演者の研究グループでは太陽系内地球型惑星のコアの温度圧力条件下での鉄合金の伝導度測定実験を系統的に行ってきた。その手法と結果を紹介するとともに、地球型惑星の観測から明らかになった磁場の多様性を惑星深部物質の物性という観点から考察する。

#07

  • Date and Time

    Start at 13:30 on Wednesday, September 7, 2022

  • Place

    D401+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    土星衛星エンセラダスから考える化学進化と生命の起源

  • Speaker

    関根康人

  • Affiliation

    東京工業大学地球生命研究所

  • Abstract

    土星の衛星エンセラダスには氷で覆われた地下海が存在する。探査機カッシーニは、その海水がプルームとして宇宙に噴出していることを発見し、それを分析することで水環境を明らかにしてきた。主な発見でも、海水pHが10付近のアルカリ性であること、岩石コアに熱水活動が存在することなどがある。また、噴出したプルーム氷粒子には、塩分が豊富に含まれているものも存在することが明らかになり、それらの化学分析から海洋の主要溶存成分がNa、Cl、HCO3/CO3であることも判明している。 本研究では、エンセラダスから放出された、Na, Cl, HCO3/CO3塩などの塩分に富むプルーム粒子に加え、リン酸塩に富む新たなタイプの粒子を発見した。リン (P) は、地球生命に不可欠なCHNOPS元素であるが、これらの中でも地球の水環境では最も存在量が少ない。地球史全体を見ても、リンは常に生物生産を律速してきた元素である。 カッシーニ探査の追加分析の結果、我々はエンセラダス地下海のリン酸濃度が、地球の海洋よりも少なくとも1000倍以上も高いことを明らかにした。では、なぜこのようなリンの異常濃集が起きているのだろうか。この原因を明らかにするため、我々はさらに熱水反応実験と地球化学モデリングを行った。その結果、高濃度の溶存HCO3/CO3を含むpH 10程度のアルカリ海水では、炭酸カルシウム鉱物に比べて、リン酸カルシウム鉱物が熱力学的に不安定となることがわかった。そして、大量のリン酸カルシウムが海水に溶脱することで、リンの異常濃集が生じることを明らかにした。 このようなHCO3/CO3に富んだアルカリ性の水環境は、CO2/NH3雪線より遠方の太陽系氷天体(セレス、冥王星などの氷準惑星、天王星・海王星の氷衛星、リュウグウ母天体など氷微惑星)において普遍的に成立し、リンや窒素に富んだ水中でこれら元素を利用した化学進化が生じる。地球生命はRNA、DNA、ATP、脂質など多くの構成分子になぜかリンを使っており、特異的にリンに濃集した水環境で地球生命が誕生したのかもしれないとの考えもある。エンセラダスのようなリンに異常に富む高CO2アルカリ環境(厚いCO2大気下のアルカリ熱水)が原始地球でも成立すれば、そのような場が地球生命誕生場の有力候補となるかもしれない。本発表では、さらに今後の展開として、太陽系天体の水環境を明らかにするその先として、そこで成立する化学進化と生命進化をいかに研究していくかという発表者の最近の試みも紹介したい。

#06

  • Date and Time

    Start at 10:00 on Wednesday, August 3, 2022

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    Accurate Determination of the akimotoite-bridgmanite transition and dissociation of ringwoodite: a new interpretation for the depression of the 660-km discontinuity (秋本石-ブリッジマナイト石転移およびリングウッド石分解反応の精密決定:660km不連続の凹凸の新解釈)

  • Speaker

    桂智男(Tomoo Katsura)

  • Affiliation

    Bayerisches Geoinstitut, University of Bayreuth, GERMANY
    (ドイツ・バイエルン州立バイロイト大学バイエルン地球科学研究所・教授)

  • Abstract

    (講義は日本語で行います)The 660-km seismic discontinuity is the boundary between the Earth’s lower mantle and transition zone and is commonly interpreted as the dissociation of ringwoodite to bridgmanite plus ferropericlase (post-spinel transition). A distinct feature of the 660-km discontinuity is its depression to 750 km beneath subduction zones. However, in situ X-ray diffraction studies using multianvil techniques have demonstrated negative but gentle Clapeyron slopes of the post-spinel transition that do not allow a significant depression. On the other hand, conventional high-pressure experiments face difficulties in accurate phase identification due to inevitable pressure changes during heating and the persistent presence of metastable phases. Here, we determined the post-spinel and akimotoite-bridgmanite transition boundaries by multi-anvil experiments using in situ X-ray diffraction strictly based on the definition of phase equilibrium. The post-spinel boundary has almost no temperature dependence, whereas the akimotoite?bridgmanite transition has a very steep negative boundary at temperatures lower than ambient mantle geotherms. The large depressions of the 660-km discontinuity in cold subduction zones are thus interpreted as the akimotoite?bridgmanite transition. The steep negative boundary of the akimotoite-bridgmanite transition will cause slab stagnation due to significant upward buoyancy.

#05

  • Date and Time

    Start at 13:30 on Wednesday, June 15, 2022

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    “観測” x “革新的装置開発” で探る宇宙のマルチスケールダイナミクス

  • Speaker

    三石郁之

  • Affiliation

    名古屋大学

  • Abstract

    宇宙X線観測は静的な宇宙像を根本から変え、動的な宇宙の一面を 明らかにしてきた。そして、X線天文学の発展と新たな展開にはよ り高感度な装置の開発も欠かせない。私は宇宙の階層構造の理解を 目指し、恒星から銀河団・宇宙の大規模構造にまでわたるダイナミ クスを解明するため、“観測” と “開発” 両観点から研究を進 めてきた。 観測的研究では、我々のグループは、太陽型星やF型 主系列星を選定し、恒星コロナのX線分光特性を系統的に調査した 結果、太陽コロナ放射モデルや晩期型星の観測的特徴から大きな逸 脱がないことを観測的に初めて明らかにした。その他、銀河団中の 高温ガスやダークマター、メンバー銀河の情報を用いて、高感度重 力レンズ及び可視光同定銀河団カタログの作成やX線分光特性の調 査を実施した。結果、これまでX線観測のみを用いて検出された銀 河団とは異なる観測的特徴を有する銀河団種族の存在を観測的に明 らかにした。 装置開発では、我々はさらなる高感度観測を目指し、 独自の高結像性能X線光学系と高透過率フィルターの開発を進めて きた。これらは精密工学やナノ材料分野などの地上技術との融合で 実現した革新的装置であり、すでに評価試験により高い性能が確認 され、特に光学系については飛翔体への搭載が決まっている。本X 線光学系は高い結像性能を保ちながら口径や焦点距離等をフレキシ ブルに設定することができるため、超小型衛星を含めた多様な飛翔 体から地上プラズマ実験へのニーズにも対応できる。また本フィル ターは電磁波/電子/流体等の多様な組み合わせに対し高いコントラ ストを実現できるため、地上装置への応用展開までが可能となる。  本講演では、上記内容に加え、XRISM等を用いた観測的研究及び 装置開発の将来の展望についても紹介する。

#04

  • Date and Time

    Start at 16:30 on Tuesday, June 14, 2022

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    コンパクト天体の物理:宇宙進化の駆動源として

  • Speaker

    小高裕和

  • Affiliation

    東京大学

  • Abstract

    深い重力ポテンシャルを持つブラックホールや中性子星といったコ ンパクト天体は、多彩な高エネルギー現象の舞台となり、宇宙進化 において重要な役割を果たしている。活動銀河核の「超高速アウト フロー (ultrafast outflow)」はブラックホールから光速の10?30% もの速度でプラズマが流れ出る現象であり、紫外線・X線電磁放射、 相対論的ジェットに次ぐ第三のエネルギー輸送モードとして発見さ れ、超巨大ブラックホールからホスト銀河へのフィードバック機構 の担い手の有力候補として脚光を浴びた。 本講演では、私たちが 取り組んできたモンテカルロ輻射輸送シミュレーションとX線スペ クトル解析を組み合わせた「理論・観測融合のアプローチ」により、 ブラックホールアウトフローの理解がどのように進んだのかを述べ、 まもなく軌道投入予定のXRISM衛星が実現する超精密X線分光への展 望を議論する。このモンテカルロ輻射輸送コードは幅広い応用が期 待できる汎用のフレームワークを提供するもので、もうひとつの高 密度天体の代表格である中性子星への応用例を概観する。これら天 体物理のより深い理解に向けて今私たちが進めている次世代のX線・ ガンマ線観測装置の開発についても紹介したい。

#03

  • Date and Time

    Start at 13:30 on Tuesday, June 14, 2022

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    X線精密分光で明らかにする超新星残骸と宇宙の非平衡プラズマの物理

  • Speaker

    内田裕之

  • Affiliation

    京都大学

  • Abstract

    分光学(spectroscopy)は、電波からガンマ線まで現代の観測天文 学の基礎的手法である。輝線や吸収線といったスペクトル線の検出 は、天体の組成やドップラー運動といった様々な物理量の測定を可 能にする。X線帯域においては、高温希薄なプラズマから、多数の 高階電離イオンのL殻・K殻輝線が検出される。これらの強度比や線 幅を測定することで、その天体の組成や熱化・非熱化の過程を正確 に捉えることができる。 宇宙で観測される高温希薄なプラズマの多くは、加熱から十分時間 が経った電離平衡状態にある。一方、過渡的な非平衡状態を示すも のもあり、急激な加熱や冷却の痕跡と考えられる。これらは宇宙に おける急激なエネルギー交換の現場として重要である。本セミナー では、まもなく打ち上がる XRISM やその先の Athena など、X線精 密分光の時代の到来を背景に、主に近傍の代表的な非平衡プラズマ である超新星残骸に注目し、爆発機構や衝撃波物理などの重要課題 について、最新の知見と将来の見通しを紹介する。

#02

  • Date and Time

    Start at 10:00 on Monday, June 13, 2022

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    精密X線分光と先進的装置開発で確立する巨大ブラックホール近傍の新描像

  • Speaker

    野田博文

  • Affiliation

    大阪大学

  • Abstract

    宇宙の全ての銀河の中心には、太陽の数百万倍から数億倍もの質量 を持つ巨大ブラックホール(SMBH)が一般に存在する。そこに大量の 物質が降着すると、強力な放射や高速のプラズマ噴出流を生じる活 動銀河核(AGN)となり、星や銀河の進化に深く影響するなど、宇宙 の歴史の中で重要な役割を担ってきた。しかし、降着する物質の重 力エネルギーを変換して放射や噴出流を生み出す「セントラルエン ジン」そのものの理解は進まず、30年来、SMBHの事象の地平面直近 に達する降着円盤と極域に存在する単一の高温電子雲という単純な 描像が仮定されたまま多数の研究が進められてきた。私はこの状況 を乗り越えるため、X線と多波長の同時観測を進め、独自の時間変 動解析を駆使することで、SMBH近傍に異なる高温電子領域が複数形 成され、物質の量に応じて状態が遷移する新描像を打ち立てた。そ の結果、質量が5?7桁も異なる恒星質量BHとSMBHを統一的に理解す ることに成功した。今後は、今年度打ち上げ予定の宇宙X線衛星 XRISMの開発を完遂し、その精密X線分光を活かして、従来の仮定の 上では困難だった、SMBHの最も基本的かつ重要な物理量の一つ「ス ピン(角運動量)」の高信頼度測定を実現する。さらに、SMBH周辺の 物質分布、運動、物理状態を明らかにし、燃料となる物質が外側か らどう供給されるかを観測的に解明する。これらの研究により、 AGNセントラルエンジンの新描像を確立する。将来的にはSMBH近傍 の直接撮像を目指し、宇宙X線干渉計の実現に向けた独自のデザイ ンの極低温センサーなど、先進的な衛星搭載装置の開発を進める。

#01

  • Date and Time

    Start at 15:00 on Friday, April 22, 2022

  • Place

    F202+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    How Do You Know If It Will Flow?

  • Speaker

    Kerstin Nordstrom

  • Affiliation

    Mount Holyoke College

  • Abstract

    The flow of granular material through a silo or hopper has been studied for many years. In addition to its great practical importance in many industrial processing situations, it is also thought to be a model system for other bottleneck flows such as blood flow, crowd egress, and traffic merges. In recent times, advances in computing and high-speed imaging have allowed detailed study of these flows. We present results from a high-speed imaging study of silo flow. Specifically, we report on how metrics such as velocity fluctuations, non-affine motion, and dynamical heterogeneities change on approach to the clogging point. We do find changes in these metrics on approach to the clogging point, however we do not see evidence to suggest the clogging point is a critical point. We contrast the clogging transition with the jamming transition in light of these results. We will also briefly summarize recent extensions to this work involving obstacles and soft particles.

2021年度/FY2021

#03

  • Date and Time

    Start at 13:30 on Monday, December 13, 2021

  • Place

    F608+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    一般座標変換不変な新しいエネルギー保存量

  • Speaker

    大野木哲也

  • Affiliation

    大阪大学理学研究科物理学専攻・教授

  • Abstract

    アインシュタインが提唱した重力理論は当初からエネルギー保存量を座標変換不変に定義できないという困難がありました。そこで座標変換不変性をあきらめた「擬テンソル」を用いた定義や、時空の無限遠方での振る舞いのみから系全体のエネルギーを測る「準局所エネルギー」が用いられてきました。我々は重力の量子論を研究する過程で一般座標不変なエネルギーの定義が可能であることを発見しました。そして我々の定義を様々な系に適用することで従来の方法で導かれる保存量を再現する場合もありますが、高密度天体など系によっては通常とは異なる新たな保存量が存在することを発見しました。特に一様等方宇宙の場合には我々の保存量は熱力学第一法則を再現することからこの保存量がエントロピーを表すのではないかと推論しています。 これらの進展について従来の方法との比較を交えながらわかりやすくお伝えしたいと思います。
    <参考:プレスリリース>
    一般相対性理論におけるエネルギー概念の革新―ブラックホールの新しい描像と新しい保存量―

#02

  • Date and Time

    Start at 10:30 on Friday, September 10, 2021

  • Place

    F102+Zoom(hybrid)
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    超音速・高粘度マイクロジェットの力学と医工学応用

  • Speaker

    田川義之

  • Affiliation

    東京農工大

  • Abstract

    現在,マイクロ液滴およびマイクロジェットは印刷・加工技術をはじ め,様々な用途で利用されています. しかし既存の主なマイクロ液滴吐出技術で は,水の20倍以上の高粘度の液滴を簡易に吐出することは容易ではなく,新しい 応用展開への大 きな制約となってきました.本セミナーでは,この制約を突破で きる二つの新技術について紹介します.一つは簡易な装置で水の10,000倍 の粘度 をもつマイクロ液滴吐出が可能となる,高粘度液滴吐出技術です.これは現在の インクジェット印刷技術に比して粘度は500倍以上 であり,高粘度液体を用いた 次世代新規技術として期待されています.もう一つは最高速度850 m/s かつ直径 数?mの超音速マイクロジェット 吐出技術です.この速度は従来技術の100倍以上 であり,無針注射への応用が期待されています.実験・数値計算・理論を用いた ジェットの 流体力学的メカニズムと,その応用展開の現状について紹介します.

#01

  • Date and Time

    Start at 18:40 on Thursday, July 1, 2021

  • Place

    Zoom
    *Zoom meeting information is to be distributed internally.

  • Title

    全球大気循環モデルを用いた火星の常時惑星自由振動の推定とその 観測可能性

  • Speaker

    西川泰弘

  • Affiliation

    高知工科大学

  • Abstract

    地球の内部構造を推定する上で地震観測は有効な手段であり、それ は火星でも同じことが言える。火星探査InSightの地震観測で期待さ れる震源の一つに常時惑星自由振動がある。常時惑星自由振動は惑 星上での流体の動きによって励起される振動であり、これは大気の 存在する火星でも発生していると考えられる。 火星の全球大気循環モデル(Global Circulation Models : GCMs)を 用いて計算された常時火星自由振動(Mars'background free oscillations : MBFs)の見積もりは約 5x10^-11 m/s2/√Hz であり、これは地震計の自己ノイズより小さい値であり、検出され る可能性は低い。火星の大気活動は太陽フラックスにより支配され ているため、MBFsの信号にも周期性があり、スタッキングを行うこ とにより検出できる可能性があると結論づけた。

2020年度/FY2020

第13回

  • 日時

    2021年1月14日(木)15:10〜

  • 場所

    F608(Zoomでの同時配信)

  • タイトル

    ケイ酸塩の無拡散高圧相転移メカニズムとその地球惑星科学的意義

  • 講演者名

    富岡 尚敬

  • 所属・職

    海洋研究開発機構・高知コア研究所

  • 概要

    地殻を構成するケイ酸塩成分は、マントル深部では高密度の多形(高圧鉱物)として存在する。 高圧鉱物の物理化学的性質は、地球内部の構造とダイナミクスを理解する上で極めて重要であるため、 これまで高温高圧実験が精力的に行われ、主要なケイ酸塩・酸化物の相平衡が明らかにされてきた。 一方で、マントルを構成する天然の高圧鉱物を直接手にするのは極めて困難である。 しかし、微小領域分析技術の発展に伴い、衝撃変成を受けた隕石や隕石孔の岩石中(動的圧縮)、 地球深部由来の捕獲岩やダイヤモンド(静的圧縮)中に、高圧鉱物が近年、続々と発見されている。 多形間の相転移は、「核形成と成長メカニズム」、あるいは「シアーメカニズム」によって進行するが、 後者はイオンの長距離拡散を伴わず、比較的低温、高差応力条件で生じやすいメカニズムと考えられている。 本講演では、最近コンドライト隕石中に発見したオリビン(Mg2SiO4)高圧相の新鉱物ポワリエライト(poirierite)の産状や オリビンのレーザー衝撃圧縮その場X線回折実験の結果を中心に、ケイ酸塩の無拡散高圧相転移プロセスと、 その地球惑星科学的意義について紹介したい。

第12回

  • 日時

    2020年11月25日(水)15:30〜

  • 場所

    Online

  • タイトル

    Formation of "Blanets" in the Active Galactic Nuclei

  • 講演者名

    Prof. Keiichi Wada

  • 所属・職

    Kagoshima University

  • 概要

    Without doubt, planets are formed from proto-planetary disks around stars, and more than four thousand exoplanets have been discovered until now. However, proto-planetary disks may not be the only site of forming planets in the universe. Recently, we proposed a novel site for "planet" formation, namely circumnuclear gas disks around supermassive black holes (SMBHs). AGNs are believed to be surrounded by dense, dusty gas, which obscures the emission from the accretion disks. As a result, there should be a co\ld dust disk beyond several parsecs from the AGN. In Wada, Tsukamoto, & Kokubo (2019), we investigated a growth history from sub-micron sized icy monomers to km-sized planetesimals in circumnuclear disks around SMBHs, based on recent plausible theories of planetesimal formation around stars. We improved this the model in Paper II, including the effect of the radial drift of the dust aggregates. We found that "blanets" = black hole planets whose mass is 100-1000 Earth masses could be formed around some AGNs.

第11回

  • 日時

    2020年10月1日(水)14:40〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    粉体挙動から紐解く地形現象のメカニズム

  • 講演者名

    新屋 啓文 氏

  • 所属・職

    新潟大学研究推進機構超域学術院

  • 概要

    地球表面を覆っている砂や雪(氷)などの粉体は気流や水流,海流によって輸送されており, 粉体の集積過程および粉体層の崩壊過程は粒子サイズを遥かに上回る地形現象を引き起こす. 地形の空間的大きさは,砂漠における砂嵐や砂丘,雪原における吹雪や雪崩などから容易に想像される. これら地形現象のメカニズム,特に地形のパターンダイナミクスを理解する上で, 粒子-粒子・粒子-流体相互作用に基づいた粉体挙動の解明が重要となる. 例えば,砂嵐や吹雪に代表される風成作用による粒子輸送現象では,地表面への粒子衝突や大気中での粒子-流体運動量交換が絶えず行われている. このような物理素過程が組み合わさった結果として,地形現象は地球の至る所で生じている. ここで,砂や雪は乾燥地や寒冷地といった地球の極限環境の主成分であるが,視点を地球から宇宙へ向けると,砂や雪は天体の主成分にもあげられる. さらに,惑星・衛星の表面では,隕石によるクレーター形成や斜面崩壊が起こっているだけでなく, 大気を有する場合(火星等),砂嵐や吹雪,砂丘などの地形現象も確認されている. 宇宙空間は粉体現象の宝庫であり,地球の極限環境で見いだした物理法則から宇宙の極限環境を理解する挑戦は興味深いテーマである. 本セミナーでは,「粉体挙動から紐解く地形現象のメカニズム」に関する理論・実験・観測の取り組みについて,砂丘・雪崩・吹雪・火山泥流を対象に紹介する. さらに,砂の濡れや雪の焼結など凝集性粉体の挙動と地形現象を関連付けた今後の研究計画を紹介するとともに,地球の極限環境から宇宙の極限環境の理解に挑む今後の研究展開についても議論したい.

第10回

  • 日時

    2020年9月30日(水)14:40〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    多様な粒子による動的構造形成の普遍性 -粉粒体のパターン形成から細胞運動まで-

  • 講演者名

    江端 宏之 氏

  • 所属・職

    九州大学先導物質化学研究所

  • 概要

    ソフトマターは液晶分子や生体膜、粉粒体など軟らかい物質の総称であり、 生体組織から土星のリングまで自然界で見られる多くの秩序構造がソフトマターから形成されている。 粉粒体や細胞集団などのソフトマターは散逸的な相互作用を行っており、 外界からのエネルギー流入と散逸が釣り合うことで時空間構造を自発的に形成することが出来る。 粉粒体では、個々の粒子の運動方程式をすべて求めるには粒子数が多すぎる一方、 粒子の持つ離散性により連続体としての記述が難しいという性質があり、巨視的な物性や時空間構造形成のメカニズムには未解明な点が多くある。 また、細胞集団など構成要素がより複雑な場合に、構造形成に系の詳細を超えた共通のメカニズムが存在するかは明らかではない。 これらの多様な粒子集団による時空間構造形成のメカニズムを統一的に理解するには、 個々の構成粒子の自律的な運動と、粒子集団としてのダイナミクス両方に対する幅広い知見が不可欠である。  私は一般的な粒子系・離散媒質系における時空間構造形成を支配する普遍的な数理構造を明らかにするために、 無生物系・生物系の両面から実験と理論を合わせた総合的な研究を行っている。 本セミナーでは系の持つ時空間対称性とその破れに着目することで、無生物系・生物系によらず、 個々の構成粒子および粒子集団の自律的な運動が統一的に説明しうることを紹介する。 まず、単一粒子の形状の空間対称性に着目することで、基板上を這って進む細胞、流体中を泳ぐ液滴、 粉粒体の自己複製パターンの重心運動が粒子形状を用いた一般的な方程式により記述できることを示す。 次に、粒子の集団運動の時間反転対称性の破れに着目することで、 振動による粉粒体の輸送現象と創傷治癒時の細胞シートの集団運動が同じ数理構造に基づいて説明できることを示す。  以上の研究は構成粒子の物性が均一であることを仮定しているが、自然界の多くの構造物は物性値に 分布をもつ不均一な要素からなる。今後の展望として、構成粒子の物性値の不均一性が自発的構造形成に与える影響について議論したい。

第9回

  • 日時

    2020年9月30日(水)10:30〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    可視化・流体計測を通して学ぶ自然

  • 講演者名

    山本 憲 氏

  • 所属・職

    東京理科大学工学部機械工学科

  • 概要

    人類は古くから様々な自然現象を理解し、ときにはそれを模倣しながら利用してよりよい暮らしに役立てて きた。例えば、ハニカム構造は約2000年前に建造されたパンテオンに採用され、森が水をろ過する仕組みは 遅くとも戦国時代には上水道の浄水処理に利用されている。このような取り組みは今日に至るまで連綿と続けられており、 我々の日常生活にとってなくてはならない技術の中には、大地、植物、生物が生み出す 多種多様な現象を応用したものも多い。本セミナーでははじめに、このような現象の一例として蓮の葉の超撥水性を取り上げ、 蓮の葉が水を非常によく弾くメカニズムについて表面エネルギーの観点から説明し、それを応用して作製した金属製超撥水面を紹介する。 また、「海の匂い」や「シャンパンの匂い」を漂わせる原因であるエアロゾルが気液界面の大変形により生成される現象などを例に、 現象の理解に不可欠な可視化・計測技術について述べる。 最後に、上述の技術を応用して今後解明を目指す自然現象について述べ、さらに新たな展開としてこれらの現象を活用した環境保全の可能性についても議論したい。

第8回

  • 日時

    2020年6月24日(水)15:00〜

  • 場所

  • タイトル

    高圧実験から探る地球深部の水循環

  • 講演者名

    西 真之 氏

  • 所属・職

    愛媛大学・地球深部ダイナミクス研究センター

  • 概要

    「水」は地球の表層だけではなく、地球の内部でも重要な成分のひとつであり、地球の進化に多大な影響を及ぼしてきた。 近年の高圧実験・理論研究の進展により、マントル下降流において水輸送の担い手となりうる新しい含水鉱物が複数報告された。 これらの発見をきっかけとして、従来の地球深部科学において想定されてこなかった、 地球表層からマントル最下部までの大規模水循環の可能性が盛んに議論されている。なかでも、 地球内部最大の化学的不連続境面である核―マントル境界にもたらされた水は、地球深部マグマの発生、中心核への水素の供給、 地震波速度異常の形成など、地球ダイナミクスに関わる諸現象を引き起こすと考察されている。 これまでの研究では、含水鉱物の熱力学的安定性のみに立脚した水循環モデルが提唱されてきた。 しかしながら、現実的な地球ダイナミクスの解明には、マントル対流下の時間スケールにおいて水に関わる化学反応がどの程度の空間規模で進行するかを 理解することが必要不可欠である。本講演では、地球深部への水輸送過程における脱水分解反応・化学反応について、 反応速度論と地震学的観測結果を統合することで得られた新たな地球深部の水循環モデルを紹介する。

第7回

  • 日時

    2020年6月17日(水)15:00〜

  • 場所

  • タイトル

    放射光を用いた高圧物質科学から探る地球型惑星内部

  • 講演者名

    鎌田 誠司 氏

  • 所属・職

    東北大学学際科学フロンティア研究所/理学研究科地学専攻

  • 概要

    地球をはじめとする地球型惑星の中心には、おもに鉄からなる核が存在する。j地震学的に見積もられた地球核密 度と高圧下での鉄の密度との比較から、鉄に加えて水素、炭素、酸素などの軽元素が存在すると考えられている が、現在までに軽元素の特定までには至っておらず、様々な研究が行われてきた。私は、とくに地球核の物理的 化学的特徴を解明するために研究を進めてきた。具体的には、ダイヤモンドアンビルセルとレーザー加熱を組合 せ地球内部の高温高圧条件を再現し、放射光を利用して結晶構造や密度、融点など物理的特徴を解明し、観測さ れてきた地球核の特徴と比較し、議論してきた。本セミナーでは、これまでの研究成果について紹介する。

第6回

  • 日時

    2020年6月12日(金)16:30〜18:00

  • 場所

  • タイトル

    新しい超高圧変形実験装置による地球超深部ダイナミクス解明への挑戦

  • 講演者名

    野村 龍一 氏

  • 所属・職

    京都大学・白眉センター/大学院人間・環境学研究科

  • 概要

    ジュール・ヴェルヌのSF小説「地底旅行」にみられるように、「地球の深部はどうなっている?」という疑問を、人類は永年にわたり心に抱いてきた。 しかしそこは極めて高い圧力と温度が支配しており、直接探査が不可能な未踏領域である。地震波などの間接的な観測データを物質科学として理解するためには、 地球深部の高圧高温環境を実験室に再現し、地球構成物質の様々な物理的・化学的性質を調べ、観測と比較する実験的アプローチが欠かすことはできない。 近年の高圧地球科学における高圧、特に「静的」な圧縮実 験技術の進歩はめざましく、今ではレーザー加熱式ダイヤモンドアンビル装置によって地球中心の圧力温度(364 GPa, 約5000 K)が 実験室に再現されるまでに至っている。一方で、物質の流動変形や破壊といった「動的」なプロセスの定量的理解に関する実験的研究は約30 GPaまでの圧力範囲に限られており、 技術的なブレイクスルーが必要な状況であった。このような状況の下で、我々のグループによる新しい変形実験装置(回転式ダイヤモンドアンビル装置)の開発と高度化によって、 従来の実験可能圧力を文字通り1桁上回る300 GPaまでの定量的変形実験が可能になりつつある。本講演ではこの新しい実験技術の開発と、 それよって新しく開拓できるであろうサイエンスについて、いくつかの予察的結果を交えつつ現状と展望を紹介する。

第5回

  • 日時

    2020年6月8日(月)13:30〜15:00

  • 場所

  • タイトル

    Fast radio bursts and related phenomena

  • 講演者名

    Prof. Kazumi Kashiyama

  • 所属・職

    Univ. of Tokyo

  • 概要

    Fast radio bursts (FRBs) are an enigmatic phenomenon; trains of coherent radio waves are arriving from a cosmological distance for a millisecond. In this talk I will first review the evolution of FRB research since its discovery in 2007. The most promising source of FRB is neutron star (NS). In fact, very recently a low-luminosity FRB has been detected from a strongly magnetized NS, SGR 1935+2154, simultaneously with an X-ray flare. Focusing on the NS model, I will describe the theoretical insights and challenges that such observational achievements have implied : “What is the emission mechanism of FRB?”, “What type of NSs can be the source of FRB?”, and “How such NSs are formed with what type of explosive transients?”. Finally I will discuss prospects and strategies to provide a comprehensive answer to these questions.

第4回

  • 日時

    2020年6月8日(月)10:30〜12:00

  • 場所

  • タイトル

    Unveiling the Nature of Supermassive Black Holes by Linking Theory and Observations

  • 講演者名

    Dr. Yoshiyuki Inoue

  • 所属・職

    RIKEN

  • 概要

    A comprehensive understanding of various aspects of active galactic nuclei (AGNs) is a key to unveil the nature of supermassive black holes (SMBHs), which are one of the most fundamental building blocks of the universe. In this talk, I would like to present our studies on several aspects of AGNs such as cosmological evolution, contribution to the cosmic background radiation, jet powers, and coronal magnetic activity. Then, I will briefly describe my plan in order to unveil the nature of SMBHs in the cosmic history. In addition, I would also like to introduce a next-generation experiment GRAMS (Gamma-Ray and AntiMatter Survey), in which I participate. GRAMS will be the first to target both MeV gamma-ray observations and antimatter-based indirect dark matter searches.

第3回

  • 日時

    2020年6月1日(月)13:30〜15:00

  • 場所

  • タイトル

    Flashlights on the sky and the quest for the nature of dark matter

  • 講演者名

    Prof. Masamune Oguri

  • 所属・職

    Univ. of Tokyo

  • 概要

    Recently we have discovered a mysterious transient event near the center of a massive cluster. Our analysis indicates that it is a highly (a factor of thousands) magnified individual star behind the cluster due to a so-called caustic crossing. This discovery represents the record-breaking farthest star ever seen, and more importantly it offers a brand-new probe of the nature of elusive dark matter. I will describe the first discovery in detail, and then discuss how we can use such caustic crossing events for constraining a variety of dark matter models.

第2回

  • 日時

    2020年6月1日(月)10:30〜12:00

  • 場所

  • タイトル

    Stellar Deaths: Supernovae and Gamma-ray Bursts

  • 講演者名

    Prof. Yudai Suwa

  • 所属・職

    Kyoto Sangyo Univ.

  • 概要

    Massive stars, which are more massive than 10 solar mass, are known to produce explosions in the last moments of their lives, known as supernova explosions or gamma-ray bursts. These phenomena are known to occur when the central core of a star collapses and form relativistic compact objects such as neutron stars and black holes. But the explosion mechanism has not been clarified and is regarded as one of the biggest mysteries in astrophysics. In this talk, I will introduce the research I have conducted to elucidate these great mysteries. In particular, I would like to elaborate on the present and future of supernova simulation researches, which has developed significantly in the last decade.

第1回

  • 日時

    2020年5月25日(月)10:30〜12:00

  • 場所

  • タイトル

    A very brief history of the Universe and the dark matter

  • 講演者名

    Prof. Kenji Kadota

  • 所属・職

    Center for Theoretical Physics of the Universe, Institute for Basic Science (IBS), Korea

  • 概要

    Our Universe is filled with mysteries: How did our Universe start and how did it evolve? What does it consist of? A brief history of the Universe covering those open questions will be overviewed, starting with the cosmic inflation which seeded the dark matter density fluctuations. I will then present a brief history of the dark matter, followed by the discussions on the dark matter search efforts and their future prospects with an emphasis on the complementarity among different dark matter probes.

2019年度/FY2019

第25回

  • 日時

    2020年1月22日(水)15:30〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    The destruction and recreation of the X-ray corona in a accreting supermassive black hole

  • 講演者名

    Dr. Claudio Ricci

  • 所属・職

    Universidad Diego Portales

  • 概要

    Accreting supermassive black holes (SMBHs) are known to show variable optical, ultraviolet and X-ray emission. One of the most intriguing aspects of this behaviour is associated with “changing- look’ sources, in which the optical/ultraviolet broad emission lines, produced by rapidly-moving material surrounding the SMBH, appear or disappear. In my talk I will discuss the drastic transformation of the X-ray properties of a nearby active galactic nucleus (AGN), following a changing-look event. After the optical/UV outburst the power-law component, produced in the X-ray corona, completely disappeared, and the spectrum instead became dominated by blackbody-like emission. This implies that the X-ray corona, ubiquitously found in AGN, was destroyed in the event. In my talk I will discuss in detail the results of our 450 days monitoring campaign on this source, and provide possible explanations for this phenomenon.

第24回

  • 日時

    2020年1月10日(金)5限 16:20〜17:50

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Star-disk interaction: the missing link in the star formation theory

  • 講演者名

    Shinsuke Takasao (高棹 真介 氏)

  • 所属・職

    NAOJ (国立天文台)

  • 概要

    Understanding star formation is one of the most fundamental challenges in the astrophysics, because star formation controls the universe evolution through the structure formation and chemical evolution. Protostars grow with the circumstellar disks by receiving the mass and angular momentum. Recent observations and simulations have begun to reveal the disk structures at a scale larger than 1-10 au. However, we know very little about the star-disk interaction at a sub-au scale that actually regulates the protostellar evolution. The star-disk interaction has also impact on the planet formation; significantly heated materials in primitive meteorites, which are important building-block of planets, can be formed by explosive phenomena near protostars. Therefore, revealing the star-disk interaction is highly demanded for completing the star and planet formation theory. This task requires a deep understanding of the stellar surface phenomena including solar flares. Using my experience of the solar physics, I have been investigating the star-disk interaction using 3D magnetohydrodynamic simulations. This talk will overview the fundamental problems related to the sub-au dynamics. I will discuss how the solar physics helps us to solve the problems on the basis of our simulations. This talk will also describe my future plan on how we construct a unified scenario for the protostellar and disk evolutions over very wide spatial and temporal scales.

第23回

  • 日時

    2020年1月10日(金)1限 8:50〜10:20

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Formation of the First Star Binaries Using Radiation Hydrodynamics Simulations

  • 講演者名

    Kazuyuki Sugimura (杉村 和幸 氏)

  • 所属・職

    University of Maryland

  • 概要

    The first stars in the Universe, born at the redshift z - 20-30, bring an end to the dark ages of the Universe and may form the first black holes in the Universe with masses detectable by current gravitational wave observatories. While previous theoretical studies suggested that those stars are typically born as massive stars, we know little about their multiplicity or related properties, although local observations revealed that most of the present-day massive stars belong to binary or multiple systems. In this talk, I will present the results of our recent radiation hydrodynamics simulations of cosmological first star formation, where we observe the formation of massive binaries. We, for the first time, follow gas accretion onto the multiple protostars including self-consistently their radiative feedback, using a newly developed adaptive mesh refinement (AMR) code with the adaptive ray tracing method. Based on the simulation results, I will establish a new overall picture of the first star formation. I will also discuss a possible link of our results to the recent gravitational wave events by BH mergers.

第22回

  • 日時

    2020年1月7日(火)1限 8:50〜10:20

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Massive Star Formation: Now & Then

  • 講演者名

    Kei E. I. Tanaka (田中 圭 氏)

  • 所属・職

    Osaka University / NAOJ (大阪大学/国立天文台)

  • 概要

    Massive stars are the dominant source of UV radiation, turbulent energy, and heavy elements in the universe. Thus they play crucial roles in many aspects of astrophysics, including the reionization in the early universe, the formation of star-planet systems in the Galaxy, and the chemical enrichment of galaxies. Therefore, it is essential to understand the formation process of massive stars, particularly the mechanism that determines their birth mass. Compared to low-mass star formation whose standard scenario has been established in the 1980s, research on massive star formation has been dramatically developing in the recent years. In this talk, I will introduce my work on massive star formation, including theoretical modeling of multiple feedback, synthetic observations based on radiative transfer calculations, and high-resolution ALMA observations. Finally, I will present my plans to investigate star formation throughout cosmic history.

第21回

  • 日時

    2020年12月24日(火)5限 16:20〜17:50

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Chemical evolution and star formation in the first billion years of the Universe

  • 講演者名

    Dr. Gen Chiaki (千秋 元 氏)

  • 所属・職

    Konan University / Georgia Institute of Technology

  • 概要

    My research aim is to disclose the process of chemical enrichment and evolution of stellar mass in the first billion years of the Universe. The standard model of the structure formation in the Universe predicts that the small structures such as stars firstly form and then grow to the larger structures such as galaxies and galaxy clusters. Until the first stars form, the interstellar medium (ISM) does not contain heavier elements than helium (metals) and the metal mass fraction (metallicity) increases up to the value in the present day (2%) through the interaction between ISM and stars. The process of metal enrichment and star formation in the first billion years after the Big Bang is, however, poorly known. One approach is to directly observe high redshift galaxies with future instruments. Another approach, which I here focus on, is to observe stars with lower metallicities than the Sun (metal-poor stars). Long-lived (~10 Gyr) metal-poor stars are considered to inherit the early chemical enrichment process. Also, low-mass stars (less than 0.8 times solar mass) which can survive for the age of the Universe are naturally selected in these observations and thus their abundances give the constraint on the stellar mass function for different metallicities. So far 5,000 metal-poor stars have already been identified in our Milky Way galaxy and local dwarf galaxies but their origins are not sufficiently investigated from the theoretical side. I have so far studied the chemical enrichment from supernovae of the first stars and formation process of metal-poor stars, employing large numerical simulations. In order to see the formation of statistical samples of metal-poor stars, I will extend the studies temporarily and spatially to the galactic scale through the interactions with both theoretical and observational groups in not only Japan but also other countries.

第20回

  • 日時

    2020年12月24日(火)1限 8:50〜10:20

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Probing the inflationary particle content through cosmic symmetry-breaking search

  • 講演者名

    Dr. Maresuke Shiraishi (白石 希典 氏)

  • 所属・職

    香川高等専門学校

  • 概要

    The primordial inflationary scenario is widely accepted, however, the particle content in the inflationary era is still unclear. It is indispensable information for establishing a true inflationary model. It is possible to extract the information of inflationary particles from late-time observables such as the cosmic microwave background, large-scale structure, 21-cm line, and the gravitational wave background because some traces remain there. For example, in the simplest inflationary model driven by one scalar field, these observables respect several types of symmetries (parity, isotropy, and Gaussianity). In contrast, higher-spin particles such as the vector field can induce unique symmetry-breaking signatures. In this talk, on the basis of our works, I would present the current status and future prospects of the search for inflationary particles through testing parity, isotropy, and Gaussianity in cosmic observables.

第19回

  • 日時

    2019年12月20日(金)16:30〜17:15

  • 場所

    F608

  • タイトル

    C型小惑星の宇宙風化作用:赤くなるのか、青くなるのか?

  • 講演者名

    中村 智樹 氏

  • 所属・職

    東北大学 大学院理学研究科 地学専攻 教授

  • 概要

    小惑星探査機はやぶさ2が行ったC型小惑星リュウグウの可視、近赤外のスペクトル観測から、 リュウグウの表面物質はたいへん暗く、一部のたいへん明るい岩石を除き、かなり均一であることが判明した。 我々の研究グループではリュウグウの構成物質を推定するために、様々なアナログ物質(C型小惑星由来の炭素質隕石など)と スペクトルの比較検討を行った。炭素質隕石はたいへん暗い隕石であるが、リュウグウはさらに暗く完全に 一致する隕石は特定できていないが、加熱脱水を受けた炭素質隕石が最も近い。一方、暗いリュウグウの表面には、 少し明るく青い部分と、少し暗く赤い部分が混在している。明るく青い部分はリュウグウの高いポテンシャル部分 (赤道域と両極)に分布し、暗く赤い部分は逆に低いポテンシャル部分(赤道域と両極を結ぶ斜面)に分布している。 この分布の説明として、「赤く暗い物質はリュウグウ表面に分布し、青く明るい物質が宇宙風化作用されることで形成された (つまり赤い物質は青い物質の変成物)。その後、リュウグウの自転速度減速に伴い、高いポテンシャル部分の表面にあった 赤い物質は地滑りを起こして低いポテンシャル部分に移動し、その結果、高いポテンシャル部分には地下の青く明るい物質が表面に露出した」 ということが考えられる。しかしながら、地上で行った炭素質隕石の宇宙風化実験では宇宙風化作用により炭素質隕石は赤く暗い物質が 青く明るい物質になることが示されている。この地上実験での色変化はリュウグウで観測される色変化と真逆である。 どうして、地上とリュウグウで起こる宇宙風化作用がこれほど違うのか、我々の研究グループではそれを解明するために 新しい視点で実験を行っている。セミナーでは実験結果の一部を紹介させていただきたいと思います。

第18回

  • 日時

    2019年11月29日(金)16:30〜18:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    重力マイクロレンズ観測から迫る冷たい系外惑星の質量分布

  • 講演者名

    鈴木 大介 氏

  • 所属・職

    JAXA

  • 概要

    重力マイクロレンズ法は、氷境界の外側において地球質量程度の軽い惑星まで検出することができる唯一の手法である。 これまでに地上望遠鏡によるマイクロレンズ惑星探査によって、約100個の冷たい系外惑星が発見されている。 日本が中心となって研究を進めているMOA (Microlensing Observations in Astrophysics) グループは、 ニュージーランド南島のマウントジョン天文台にて専用の1.8m MOA-II望遠鏡を設置し、 銀河中心方向のマイクロレンズ探査を実施することでこの分野をリードしてきた。 MOA-II望遠鏡による6年間の探査データを用いた統計解析によって得られた惑星質量比分布から、 氷境界の外側では、海王星質量程度の惑星が最も多いことがわかった。 本セミナーでは、MOAグループが見つけてきたマイクロレンズ惑星を簡単にレビューし、 マイクロレンズ観測から求まった惑星質量比関数について、惑星形成モデルに基づく惑星分布や、 他の観測手法から求まった惑星分布との比較を行う。また、NASAの将来計画であるWFIRST計画を含め、将来の展望について述べる。

第17回

  • 日時

    2019年11月29日(金)13:00〜14:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    重力レンズ法およびトランジット法で迫る系外惑星の形成と進化

  • 講演者名

    福井 暁彦 氏

  • 所属・職

    東京大学

  • 概要

    系外惑星の研究は過去24年間で急速に進展し、4千個を超える系外惑星が発見されるとともに、 ハビタブル惑星におけるバイオマーカーの観測も視野に入ってきたが、 依然として惑星がどのように形成・進化するかという問いには明確な答えが出ていない。その一つの鍵を握るのが、 ガス惑星の故郷と考えられている「雪線」付近の惑星分布であるが、この軌道領域ではどの観測手法においても まだ十分な探索が行われていない。本セミナーでは、まず私がこれまでに行ってきた重力レンズ法および トランジット法を用いた系外惑星研究について紹介し、次に現在検討している雪線付近の惑星探索および詳細フォローアップ観測の計画について紹介したい。

第16回

  • 日時

    2019年11月28日(木)10:30〜12:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    系外惑星系の幾何学構造

  • 講演者名

    増田 賢人 氏

  • 所属・職

    プリンストン高等研究所

  • 概要

    太陽系の惑星が互いによく揃った公転軌道をもつことは、円盤からの惑星形成という標準的な描像の礎をなす要素の一つである。 同様に、太陽系外の惑星系がどのような幾何学構造をもつかは、系外惑星の示す多様性の起源を理解し、 その中での太陽系の位置付けを明らかにするために欠かせない情報である。系外惑星系においてそのような情報を得ることは一般に容易ではないが、 ケプラー探査機によって得られた測光データの解析を含む様々な手法により、主星の近傍1au以内の惑星系については軌道の幾何学構造の情報が得られつつある。 本セミナーでは、まずこれらの研究によって明らかになった主星近傍の惑星系の軌道の幾何学構造の多様性、 特に"力学的に熱い"構造をもつ惑星系の存在について述べる。次に、近年のトランジット及びドップラー観測データの解析から明らかになった、 1au以内の惑星とその外側に存在する巨大惑星の存在頻度の相関および軌道面のずれについての知見を紹介し、 それらに基づいて内側の惑星系の構造に外側の巨大惑星が及ぼす力学的な影響の重要性を議論する。最後に、 このような系外惑星系の全体像についての理解をさらに推し進めるために取り組むべき観測的・理論的な課題をまとめ、将来の観測により期待される進展について述べる。

第15回

  • 日時

    2019年11月27日(水)10:30〜12:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    化学組成から探る大質量星形成領域の進化

  • 講演者名

    谷口 琴美 氏

  • 所属・職

    学習院大学

  • 概要

    太陽も大質量星が誕生しているようなクラスター領域内で誕生した可能性が示されてきた。 したがって、大質量星形成領域における化学反応に関する研究は、大質量星形成過程の解明だけでなく、 太陽系内の隕石や彗星から発見されている生体関連分子を含めた有機分子の形成過程を明らかにするためにも重要である。 本講演では、国立天文台 野辺山45m望遠鏡を用いた観測による大質量原始星周辺やクラスター領域における化学進化に関する研究を紹介する。 これらの研究より、有用な化学進化の指標の発見、および大質量星形成領域ではダストから昇華する化学種が 気相反応に大きな影響を与えていることがわかった。今後の展望として、電波と赤外線の観測を組み合わせた気相とダスト表面の化学反応の関係、 原始惑星系円盤における化学反応、系外惑星の大気の化学組成に関する研究により、原始星から、原始惑星系円盤、 系外惑星にかけての化学組成の変遷や関係の解明についても言及したい。

第14回

  • 日時

    2019年11月20日(水)15:00〜16:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Athena++: toward the best astrophysical MHD code

  • 講演者名

    富田 賢吾 氏

  • 所属・職

    宇宙進化グループ・助教

  • 概要

    Nowadays, numerical simulations are essential tools in astrophysics and many codes are publicly available. Athena++ is a new magnetohydrodynamics simulation code we develop in international collaboration led by Institute for Advanced Study / Princeton University. This code supports various physical processes in astrophysics, and adopts new concepts to improve the performance and parallel scalability. There is nothing like "One code to solve them all", but we aim to make Athena++ a versatile, high-performance, easy-to-use, simply the best code in the field. In this presentation, I will explain the design and strategy of Athena++, some scientific results and future plans, as well as other activities at Princeton.

第13回

  • 日時

    2019年11月5日(火)15:00〜16:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「考えるひとは美しい」

  • 講演者名

    松倉 大士 氏

  • 所属・職

    Founder & CEO at wov, inc.

  • 概要

    「未知だからこそやる価値があると思っている。 将来、フロンティア領域で活動したいという夢を持っている。 しかし、目の前の既知のことで手一杯で、新しいことを深く考える 機会が持てない」ひとを対象としたセミナーです。セミナーの中で、 みなさん1人1人に新しいことを深く考える機会を創り、考えを言語化 する体験をしていただきます。

第12回

  • 日時

    2019年10月29日(火)15:00〜16:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Kepler宇宙望遠鏡が拓いた未来:「地球型惑星探査から宇宙生命探査へ」

  • 講演者名

    松尾 太郎 氏

  • 所属・職

    赤外線天文学グループ・助教

  • 概要

    Kepler宇宙望遠鏡は4000を超える惑星を発見し、地球のような小さな惑星が 銀河系に普遍的に存在することを明らかにした。今、Kepler宇宙望遠鏡での地球型惑星候補の探査から、 地球型惑星候補の大気分光を通して宇宙における生命探査へと軸足を移そうとしている。私は、 NASA Ames Research CenterのKepler宇宙望遠鏡をオペレートしていた建物で1年半の間、 2016年に提案した宇宙生命探査のための新しい超精密分光器の研究開発を進めてきた。 新しい技術の実証に成功し、本分光器は2030年代のNASAの大型宇宙望遠鏡計画 (Origins Space Telescope)のベースライン装置として採択された。本セミナーでは、 Kepler宇宙望遠鏡の主責任者であるWilliam Borucki氏が1983年に測光装置の開発に着手してから 打ち上げまでの四半世紀にわたる望遠鏡の開発の軌跡をWilliam Borucki氏の言葉とともに紹介する。 次に、NASA Ames Research Centerにおける宇宙生命探査のための超精密分光器の実験を中心に、 地球型惑星探査から宇宙生命探査への展開について紹介する。

第11回

  • 日時

    2019年10月23日(水)10:30〜11:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    26Al chronology of dust coagulation and early solar system evolution
    (消滅核種26Alを用いた年代学・ダスト凝固と太陽系の初期進化の研究)

  • 講演者名

    Dr. Ming-Chang Liu

  • 所属・職

    カリフォルニア大学ロサンゼルス校
    Earth, Planetary, and Space Sciences

  • 概要

    Dust condensation and coagulation in the early solar system are the first steps toward forming the terrestrial planets, but the time scales of these processes remain poorly constrained. Through isotopic analysis of small Ca-Al-rich inclusions (CAIs) (30 to 100 μm in size) found in one of the most pristine chondrites, Allan Hills A77307 (CO3.0), for the short-lived 26Al-26Mg [half-life = 0.72 million years] system, we have identified two main populations of samples characterized by well-defined 26Al/27Al = 5.40 (±0.13) e-5 and 4.89 (±0.10)e-5. The result of the first population suggests a 50,000-year time scale between the condensation of micrometer-sized dust and formation of inclusions tens of micrometers in size. The 100,000-year time gap calculated from the above two 26Al/27Al ratios could also represent the duration for the Sun being a class I source.

第10回

  • 日時

    2019年8月22日(木)13:00〜14:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    地層から読み解く地球環境変動:生物多様性の変遷を決めているのは何か?

  • 講演者名

    丸岡 照幸 氏

  • 所属・職

    筑波大学生命環境系・准教授

  • 概要

    生命は発生以降途切れることなく、脈々と受け継がれてきている。 ただし、その主役となる生物は時代とともに変化してきた。例えば、 中生代と呼ばれる時代(2 億 5000 万年前-6600 万年前)は恐竜をは じめとする爬虫類の全盛期であったが、生命のバトンは中生代最末 期に哺乳類へと託された。この主役の交代は決して緩やかなもので はなく、地球外天体衝突に続く環境激変によって引き起こされた。 大量絶滅によって空白となった生態的地位(ニッチ)を埋める形で、 それまで主流ではなかった哺乳類の繁栄が始まった。 化石石記録の残る時代である顕生代を通じて大小さまざまな規模で の生物大量絶滅イベントが起きたことがわかっている。地球外天体 衝突のようなイベントは生物大量絶滅に至るトリガーであり、直接 的な原因ではない。直接的原因はこのトリガーに誘引された環境変 動であるが、多くの大量絶滅イベントには寒冷化・温暖化といった 温度変化が関与しているとされている。本講演では大規模な温度変 化を生み出す可能性のある3つのトリガー(地球外天体衝突、大規模 火山活動、宇宙線強度変動)を示し、トリガーイベントやその後の 環境変化を地層から読み解く試みを紹介したい。

第9回

  • 日時

    2019年8月22日(木)10:30〜11:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    原始惑星系円盤構造の多様性と惑星形成

  • 講演者名

    武藤 恭之 氏

  • 所属・職

    工学院大学教育推進機構・准教授

  • 概要

    原始惑星系円盤の中で何が起こり、いつ、どのようにして惑星が生 まれたのか、その一貫したシナリオを構築することは長年の課題で ある。このためには、原始惑星系円盤がどのような姿をしており、 その中でどのようなことが起こるかを理解しなければならない。本 講演では、この問題に対する取り組みについて、「原始惑星系円盤 の構造」をキーワードに、講演者自身が関係する結果も含めつつ、 理論・観測の両面から紹介する。近年、原始惑星系円盤の高解像度 観測が急速に発展し、我々の持つ円盤の描像が大きく変わりつつあ る。原始惑星系円盤は渦巻き構造・ギャップ構造などの様々な構造 を持つつことが明らかになり、従来の「軸対称で滑らかな円盤」と いう描像が崩れつつある。また、星形成直後と思われる若い星の周 囲にも構造を持った円盤が観測されており、惑星形成の時間スケー ルについても見直しが必要かもしれない。そこで本講演では、近赤 外線・電波領域を中心にこれまでの観測を俯瞰しつつ、その理論的 な解釈について議論する。特に、円盤構造の高解像度観測を、「原 始惑星系円盤の力学的な物理過程の検証」および「地球型惑星形成 領域のプローブ」の観点から位置づけ、現段階で導かれる惑星形成 への示唆を議論する。さらに、今後の研究の方向性として、より一 般的な惑星形成の描像を得るためのサーベイ的な研究について、そ の取り組みを紹介する。また、系外惑星観測と原始惑星系円盤観測 との関わりや将来の観測装置について、特に、太陽系外の地球のよ うな惑星を探るという観点からの期待についても述べたい。

第8回

  • 日時

    2019年8月21日(水)16:20〜17:20

  • 場所

    F608

  • タイトル

    粉体物理で挑む地球惑星環境の理解

  • 講演者名

    桂木 洋光 氏

  • 所属・職

    名古屋大学大学院環境学研究科地球環境科学専攻・准教授

  • 概要

    地球をはじめとする大小様々な太陽系固体天体の表面は砂礫粒子群 (粉体層)で覆われていることが多い.それゆえその表面地形進化史 を正しく読み解くためには,粉体層の物理特性を適切にモデル化し て理解することが必要となる.また,微小粉体粒子群の凝集・集積過 程や凝集体の変形挙動は,惑星形成初期段階の微惑星形成(ダスト成 長)に関するモデル構築においても中心的な役割を果たす素過程と なる.すなわち,地球等の固体天体の生い立ちを研究する上で粉体物 理に関する知見は至る所で必要不可欠となる.加えて,地球表層環境 では液体の水が豊富に存在するため湿った粉体の挙動が重要となる 場合も多い.例えば砂浜に形成されるスナガニの巣穴の大きさは湿っ た粉体層の力学特性によって制約されていることが最近の我々の研 究で明らかとなった.このように,(乾燥/湿潤)粉体の物理特性の解 明は生物の生態を含めた多種多様な地球(および固体天体)表層現 象の本質的理解に欠かすことができない要素である.一方で,粉体 は多彩な反直感的現象を示すことでも知られており,ソフトマター 物理の基礎的研究対象としても興味深い.本セミナーでは,地球惑星 科学的応用および基礎物理の両方の観点から「粉体が関連する自然 現象」の本質に迫ることを企図している我々の最近の取り組みつい て紹介する. さらに,粉体物理を軸としつつ「宇宙環境」,「寒冷環 境」,「乾燥環境」などの極限環境を考慮することにより,地球環境 の過去・現在・未来の包括的理解に挑む今後の研究展開の方向性に ついても議論したい.

第7回

  • 日時

    2019年8月21日(水)13:00〜14:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    環境科学の最先端とその未来 ~福島第一原発原子力災害への科学的貢献~

  • 講演者名

    宇都宮 聡 氏

  • 所属・職

    九州大学大学院理学研究院化学部門・准教授

  • 概要

    地球表層における有害元素の移行が様々な環境問題を引き起こして いるなかで、我々の目に見えないミクロなスケールの物質、現象が 元素の移行挙動に与える影響は無視できない。これらの物質と現象 の解析は、現象の本質的解明につながり、環境問題の解決に貢献す ることが期待される。現在、日本で最も深刻な環境汚染は福島第一 原発における原子力災害で影響をうけた地域に残っており、さらに 損傷した原子炉の廃炉に向けた内部性状把握が喫急の課題となって いる。放射性セシウムが汚染の主要因であるが、アルカリ金属で易 溶性であるはずのセシウムが、多くの土壌で無数のホットスポット として検出されてきた。これは難溶解性の高濃度放射性セシウム含 有微粒子(CsMP)と呼ばれる大きさが数ミクロン程度のガラス状微粒 子で、Cs の放射能が 10 11 Bq/g と Cs が極度に濃集しているこ とが分かってきた。我々は国内の研究機関と米国、フィンランド、 フランスの大学と共同研究ネットワークを形成し、CsMP 研究を行っ ており、下記の重要な成果を挙げてきた。 (i) CsMP の内部を原子分解能電子顕微鏡観察して、内部のナノ組 織から MCCI 反応過程と当時の炉内の浮遊ナノ粒子を初めて特定し、 炉内条件の把握に貢献した。 (ii) CsMP 各粒子の二次イオン質量分析(SIMS)に初めて成功し、Cs 同位体の挙動、Ba の起源、ウラン同位体の特異性を明らかにした。 (iii) 2011 年 3 月 15 日に東京都に運ばれた CsMP は内部構造が 福島で検出される CsMP と類似し、Cs 放射能の割合が全放射能に 対して 90%程度と非常に高いことを明らかにした。 (iv) CsMP とともに放出された福島第一原発由来の UO 2+X のナノ 粒子を原子スケールで分析することに初めて成功し、鉄との共存、 Zr 酸化物との共晶形成を明らかにした。 (v) 環境土壌試料中における CsMP の定量手法を初めて開発し、 CsMP の分布を定量的に評価した。 (vi) CsMP の模擬肺胞液、海水、純水に対する溶解実験を行い、溶 解速度が組成に依存すること、2 μの CsMP が肺胞液中で数十年残 存することを初めて明らかにした。 以上のように、これまで CsMP の特性、挙動と燃料デブリの性状把 握に関連する新しい研究領域を開拓しながら、現在の深刻な環境問 題と廃炉問題に貢献してきた。地域の汚染低減と廃炉におけるデブ リ取り出しが解決に近づくまで、国際的英知を結集しながらさらに 重要な知見を提供し続ける。福島関連の研究以外にも微生物―ナノ 粒子―有害元素間相互作用に関する研究を行っており、室内実験と 野外調査を融合させた研究成果とその重要性にも言及する。

第6回

  • 日時

    2019年8月21日(水)10:30〜11:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    下を向いて宇宙を考える ―宇宙科学と地球科学の融合をめざして―

  • 講演者名

    山本 順司 氏

  • 所属・職

    北海道大学総合博物館・准教授

  • 概要

    地球は最も身近な惑星のサンプルであり,また,太陽系形成の過程を 探ることは地球の材料や熱量の制約につながる.このように宇宙科 学と地球科学は互いに補完し合える関係にあるが,実際には互いに 独立した発展を遂げているように見える.この主因は太陽系形成初 期の記憶を留めるサンプルが現代の地球に残存していないと思われ ているためであろう.換言すると,冥王代の地球で起こった事象を地 球科学的に探ることができれば,宇宙科学と地球科学をシームレス につなぐことができ,両分野の知見を互いの制約として利用し合え るようになるかもしれない.そこで私は現代の地球に残る同位体的 特徴を基に,冥王代の地球で起こった元素分別現象を帰納的に探る 研究を続けてきた.このような情報に対して,高温高圧相の拡散係数 や拡散分別計算結果を照らし合わせることができれば,冥王代の地 球内部で起こった動的過程の時間や規模が制約できるようになり, 惑星の進化過程を探る重要な手がかりを得られるようになると思わ れる.逆に,現代の地球深部由来物質の元素組成を基にして動的過程 を遡れば,地球の主原料となった隕石や小惑星を絞り込むことがで きるため,地球物質を用いた宇宙科学研究が展開できるようになる かもしれない.本セミナーでは上記の内容に加え,現代の地球内部に おける物質循環系を探る新たな手法についても紹介したい.

第5回

  • 日時

    2019年7月19日(金)10:30〜11:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Classification of meteorites and the significance of clasts in meteorite breccias(隕石の分類と、角礫岩質隕石中のクラストの重要性について)

  • 講演者名

    Prof. Dr. Addi Bischoff

  • 所属・職

    University of Muenster 独ミュンスター大学

  • 概要

    Most meteorites represent pieces of different asteroids. Based on the evolution of these bodies the related meteorites are divided into differentiated and undifferentiated rocks. Chondrites are undifferentiated meteorites and can be further subdivided into ordinary, carbonaceous, Enstatite, and Rumuruti chondrites. From the differentiated parent bodies we know various groups of achondrites, stony-iron, and iron meteorites. After accretion of meteorite parent bodies, larger and smaller collisions have led to significant modifications of these bodies. Involved processes include excavation of material, thermal metamorphism, melting, mixing of different materials, re-accretion, and re-lithification. All these processes can be repeated several times. Breccias exist containing clasts of various types of different meteorite groups.
    In the Seminar some information about the classification of meteorites will be given as well as examples of impressive breccias will be presented.

第4回

  • 日時

    2019年6月26日(水)15:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Feedback and the Evolution of Galaxies and Black Holes

  • 講演者名

    Prof. Timothy Heckman

  • 所属・職

    Johns Hopkins University

  • 概要

    I will summarize our current understanding of the processes that govern the formation and co-evolution of galaxies and their supermassive black holes (SMBH). I will pose several of the most fundamental shortcomings of our current models and then examine how they may be addressed by the effects of the feedback provided by massive stars and actively growing SMBH. My focus will be on what we have learned so far (largely from observations of the contemporary universe), and I will conclude by describing future prospects using a new generation of facilities. I will do my best to give talk that minimizes jargon and stresses the basic underlying physical processes.

第3回

  • 日時

    2019年6月19日(水)14:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    First Results from the X-Calibur Hard X-Ray Polarimetry Experiment

  • 講演者名

    Henric Krawczynski 氏

  • 所属・職

    (Washington University in St. Louis) on behalf of the X-Calibur and XL-Calibur teams

  • 概要

    Hard X-ray polarimetric observations of neutron stars, magnetars, and mass accreting black holes can give us qualitatively new information about the geometry and properties of the X-ray emission regions, and can test fundamental physics laws in regimes that cannot be probed in terrestrial laboratories. In this talk, I will present first results from the X-Calibur experiment. The experiment was flown end of December 2018 for a short two-day high-altitude balloon flight from McMurdo (Antarctica). I will report here on the X-Calibur observations of the accreting pulsar GX 301-2, giving us the first observational constraints on the linear polarization properties of the emission in a particularly interesting energy band where plasma and vacuum birefringence strongly impact the net polarization. I will close with describing our plans for longer follow-up flights with the improved XL-Calibur payload in 2021, 2022 and 2024 which makes use of the spare FFAST hard X-ray mirror contributed by Osaka University.

第2回

  • 日時

    2019年5月24日(金)14:40〜15:40

  • 場所

    D401

  • タイトル

    超新星爆発と連星系

  • 講演者名

    諏訪 雄大 氏

  • 所属・職

    京都産業大学 准教授

  • 概要

    連星合体からの重力波が日常的に検出されるようになり、いよいよ新しい天文学の時代に入ったことが実感される。 こうした重力波の源となるブラックホールや中性子星といったコンパクト天体は超新星爆発から形成されることを思い出すと、 膨大に観測されている超新星の中にはコンパクト天体の連星系を形成しているものも数多く含まれていることは確実である。 いまだ連星系進化の最終段階は謎が多く解明には至っていないが、観測的に特異な兆候を示す超新星から新しい情報を 引き出そうという研究が近年活性化している。 本談話会では、発表者の研究を軸に超新星爆発と連星系についての理論的研究の進展および今後の展望について概観する。

第1回

  • 日時

    2019年5月16日(木)16:20〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「はやぶさ2」が明らかにした小惑星「リュウグウ」の姿

  • 講演者名

    佐々木 晶 氏

  • 所属・職

    宇宙地球科学専攻

  • 概要

    小惑星は、はやぶさ、はやぶさ2という探査機により、日本が世界を牽引している分野である。 長径500mほどのS型小惑星イトカワからのサンプルリターンに成功した「はやぶさ」に続き、「はやぶさ2」が計画された。 「はやぶさ2」は、2014年12月に打ち上げられ、昨年6月にターゲットの900mほどのC型小惑星リュウグウに到着した。 C型小惑星は、炭素質隕石の源と考えられていて、生命の材料となる有機物や水を含んでいると考えられる。 これまでに、全面の画像を取得するとともに、3機の表面探査機(ミネルバIIA、ミネルバIIB、マスコット)の運用、 表面への本体のタッチダウンおよびサンプル採取、衝突体によるクレーター形成実験に成功している。 リュウグウの密度は、1190kg/m3で空隙率50%程度のラブルパイル(瓦礫の寄せ集め)天体である。 含水鉱物の存在を示す、2.7ミクロンの吸収帯は確認されているが濃度は高くなさそうである。 これまでにわかったリュウグウの姿を紹介したい。

2018年度/FY2018

第12回

  • 日時

    2019年3月4日(月)15:30-16:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Mantle convection interacting with magma oceans

  • 講演者名

    Stephane Labrosse

  • 所属・職

    Ecole normale superieure de Lyon

  • 概要

    The early Earth most likely went through a magma ocean stage after the giant impact that formed the Moon. The way convection in the solid mantle started must have been influenced by the presence and crystallization of a magma ocean. Moreover, crystallization may have proceeded from the middle up- and downward, with very different time scales for the surface and basal magma oceans. The latter has been proposed to last for several billions of years, leaving remnants to the present day in the form of the seismically observed ultra-low velocity zones. The presence of a magma ocean adjacent to the solid mantle modifies the boundary conditions it experiences by allowing flow through the boundary by melting and freezing. This effect is studied in fluid dynamical models of mantle convection including the possibility of net magma ocean crystallization and FeO fractionation. We find that the dynamics of the mantle is greatly modified, the flow being eased and the scale of convection being much larger. Additionally, fractional crystallization of the basal magma ocean leads, with time, to enrichment of the solid and the stabilisation of dense cumulate. This model offers a self-consistent explanation for the large low velocity provinces observed in the deep mantle by seismology.

第11回

  • 日時

    2018年10月26日(金)14:40-

  • 場所

    D401

  • タイトル

    分子雲における大質量星形成

  • 講演者名

    大西 利和 氏

  • 所属・職

    大阪府立大学  教授

  • 概要

    星形成の場である星間分子雲は、主にミリ波・サブミリ波帯の分子スペクトルを 用いて観測されてきた。ALMAの登場により、受信機自体の性能が飛躍的に向上し、 大口径望遠鏡(例:野辺山45m、JCMT 15m、Mopra 22m、IRAM 30m)やより高励起の CO輝線(例:大阪府立大学1.85m鏡、JCMT 15m)での広域探査が急速に進み、銀河系 全域における分子ガスの詳細な物理状態が明らかになりつつある。また、ALMAの 非常に高い角度分解能・感度は、大小マゼラン銀河をはじめとする近傍銀河の距離に おいても分子雲を十分空間分解可能とし、重元素量・ガスダスト比・星形成の活発さ等、 様々な環境における分子雲・星形成の様子の多様さを明らかにしつつある。 本セミナーではこれらの観測結果を紹介し、星形成におけるフィラメント(紐)状構造の 普遍性、分子ガスの相互作用の重要性、等を議論する。

第10回

  • 日時

    2018年10月12日(金)10:30-11:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    異なるスケール、異なる分野をつなぐ:地震学の新展開

  • 講演者名

    波多野 恭弘 氏

  • 所属・職

    東京大学地震研究所・准教授

  • 概要

    地震とは断層の急激な摩擦運動である。したがって地震を物理的に理解しようと思えば、 まず断層に働く摩擦力の法則を理解しなくてはならない。しかし大きさが数km〜数100km にも及ぶ断層の摩擦をどのように研究すればよいのだろうか?実際の断層を使った実験は できないので、理論的なアプローチが必要である。具体的には、まず(断層の構成要素である) 鉱物・岩石の摩擦を実験室スケールで解明し、その理解に基づいて断層スケールでの摩擦法則を 帰納していくことになる。本講演では、実験室スケールで経験的に知られている摩擦法則を紹介し、 その微視的導出を通じて法則のスケール変換性を明らかにする。このスケール変換性は断層形状の 粗さ(凸凹のフラクタル次元)に強く依存することを説明し、その依存性が地震の準備過程と 観測可能性について大きな影響を与えることを議論する。これらの結果をもとに、断層形状の 複雑性と地震発生ダイナミクスの多様性の理解へ向けて将来進むべき方向を議論する。

第9回

  • 日時

    2018年10月11日(木)14:40-15:40

  • 場所

    F608

  • タイトル

    巨大天体衝突の世界

  • 講演者名

    玄田 英典 氏

  • 所属・職

    東京工業大学 地球生命研究所・准教授/主任研究員

  • 概要

    私は、これまでに、惑星の特徴がいかにして作られたのかを解明したく、主に理論と数値計算を 駆使して研究をしてきた。本セミナーでは、惑星の形成段階および進化段階で普遍的に起こる 天体衝突に注目する。その中でも惑星サイズに匹敵する大きな天体の衝突は、解放される エネルギーや交換される運動量も凄まじく、惑星の個性を作り出す。例えば、地球の月に 代表されるような巨大な衛星を形成したり、惑星の自転軸の傾きや自転周期を決定づけたり、 惑星そのものの成長さえ規定する。本セミナーでは、私が最近精力的に進めてきた、巨大天体 衝突による火星衛星の形成、冥王星・カロン系の研究などを紹介し、太陽系初期のあらゆる場所で、 巨大天体衝突が普遍的に起こった可能性が高いことを示す。惑星科学は、探査・地球外物質の 分析とともに発展してきたことから、私の進める理論研究と探査・分析の関係についても触れたい。 また、今後、私が中長期的に計画している「誰もが使える天体衝突計算コード」の開発の必要性と その構想についても触れたい。

第8回

  • 日時

    2018年10月5日(金)13:00〜14:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    ソフトマター物理から宇宙地球科学へ

  • 講演者名

    荒木 武昭 氏

  • 所属・職

    京都大学理学研究科物理学宇宙物理学専攻・准教授 

  • 概要

    ソフトマターとは,高分子・液晶・コロイドといった柔らかい物質群の総称である。 それを構成する相互作用は多様で,また熱エネルギーと同程度のものであり,そのため, 系は非常に複雑な階層構造を示す。さらに,外的要因から容易に変形を受けやすいなどといった 他の系にはない性質を多く持ち,相転移現象,非平衡物理・非線形物理における基礎研究の 対象になってきた。 我々は,統計力学・熱力学・流体力学などの手法を用い,注目する物理現象を記述するにあたり, 内包される階層構造から,いかにして本質的な階層を抽出し,それを粗視化するかということに 重きを置いて研究を行ってきた。本セミナーでは,その例として,(1)流体力学的相互作用を 考慮したコロイド分散系の振る舞い,(2)液晶のトポロジカル欠陥に由来するコロイド粒子間の相互作用, (3)多孔質中の液晶が示すガラス的な挙動、について紹介する。 また,ソフトマターは,化学・生物学・工学・農学などの他分野とも密接な関係を持つ学際領域である。 複雑な階層構造を有し,多様な非平衡・非線形挙動を示すという共通点から,ソフトマター物理を 基礎とした考え方は,宇宙地球科学に関する研究にも有効であると考えている。そのアプローチに ついても簡単に紹介したい。

第7回

  • 日時

    2018年10月4日(木)10:30〜11:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    乾燥破壊現象の非平衡物理

  • 講演者名

    湯川 諭 氏

  • 所属・職

    大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻・准教授

  • 概要

    統計物理学とはマクロな現象や性質をミクロな自由度の記述から再現、説明するという枠組みであり、近年では伝統的な統計物理の対象を超えてさまざまなものにその考え方を適用されている。 本セミナーでは非平衡現象の統計物理をキーワードに、これまでに私が行ってきた研究を紹介し、特に乾燥破壊現象におけるパターン形成や統計物理学的研究について詳細に話す。 乾燥破壊とは、粉と水を混ぜたペーストを乾燥させたときに起きる破壊のことであり、ペーストのひび割れをともなう。これは地球上の地形でよく観測されるのはもちろん、 近年では火星にも乾燥破壊で生じたパターンが存在することが知られている。 そのパターンや統計的性質を物理的に理解することで、環境の条件や履歴の推察が可能になる。 セミナーではまず連続体モデルによるパターン形成の結果を見せ、新しく見つかった 動的スケーリング則を紹介する。次に動的スケーリング則が何故成立するのかを説明し、 破片サイズの分布関数から、破片が割れるときの素過程の情報、乾燥にともなって増加する 応力の情報などが読み取れる事を示す。また、乾燥破壊現象の研究からの今後の展開を述べ、 非平衡系研究の将来構想、専攻で行われている研究に対する位置づけについても述べる。

第6回

  • 日時

    2018年9月6日(木)16:00〜17:30

  • 場所

    F102

  • タイトル

    氷・シリカ混合物の脆性・塑性境界に関する実験的研究
    (On ductile-to-brittle transition of ice-silica mixtures under compressive loading)

  • 講演者名

    保井 みなみ 氏

  • 所属・職

    神戸大学理学研究科惑星学専攻

  • 概要

    太陽系に存在する氷天体上の様々な地形は,その地殻や表層を構成する氷と岩石の混合物の 流動や破壊に関係している.そのモードを決めるレオロジー特性の1つが,塑性・脆性遷移 (D/B遷移)である.水氷のD/B遷移は詳細に調べられており,特にD/B遷移が起こる歪速度に ついては理論モデルが構築され,氷粒径,温度,封圧などの様々なパラメータに依存すること がわかっている.一方,氷・岩石混合物のD/B遷移についてはほとんど研究が行われていない. そこで本研究では,氷・岩石混合物のD/B遷移を室内実験で調べ,D/B遷移が起こる歪速度に 対する岩石含有率依存性を明らかにした. 試料は氷粒子と直径0.25 μm のシリカビーズを混合して作成した.シリカ体積含有率fは 0,0.06,0.18とした.実験は,ダートマス大学セイヤー工科大学院の低温室に設置された 変形試験機を用いて,等歪速度一軸圧縮実験を行った.温度は-10 oC である.実験の結果,シリカ含有率が増加するほど,D/B遷移が起こる歪速度は大きくなり, 純氷では10^-3s^-1,f=0.06では10^-2 s^-1,0.18では>0.6s^-1 となることがわかった. また,遷移歪速度の理論モデルを検討するため,破壊靭性も測定し,体積含有率fの0.5乗で 破壊靭性が大きくなることがわかった. 時間があれば、「事前衝突を経験した多結晶氷の衝突破壊強度に関する実験的研究」 についても、話をしたい。

第5回

  • 日時

    2018年7月9日(月)13:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「銀河団の進化を支配する Fundamental Plane」

  • 講演者名

    藤田 裕 氏

  • 所属・職

    大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻・准教授

  • 概要

    標準宇宙論では、銀河団は小さいものが集まって大きなものに成長したと考えられている。 また銀河団は内部から外部に向かって成長してきたと考えられている。銀河団中のガスの温度 もそれにしたがって上昇してきたと考えられているが、銀河団の内部構造や成長過程との詳細な 関係は明らかになっていない。
     この関係を調べるために、我々はまず CLASH 銀河団サンプルについて、それぞれの銀河団の characteristic radius (r_s) および characteristic mass (M_s) と、温度 (T_X) を調べた。r_s, M_s は重力レンズ観測で、T_X はX線観測で得られたものである。そしてこれらの データを (log r_s, log M_s, log T_X) 空間にプロットしたところ、非常に薄い平面状に分布する ことを見出した。さらに宇宙論的なシミュレーションでもこの平面の存在を確認した。銀河団は 成長する過程で、温度が上昇し、質量と半径が増加するが、それは銀河団のこの平面上の移動で 表されることもシミュレーションは示している。またこの平面は銀河団中のAGN フィードバックなどの 効果はほとんど受けない。
     一方、平面の向きはこれまでの多くの研究で仮定されてきたビリアル平衡が予測するものと有意に ずれている。我々は解析的な similarity solution でこの平面の向きのずれを説明することに成功した。 それによると、このずれは銀河団は単純なビリアル平衡になっていないためであり、外から連続的に 物質が落下する効果を取り入れないと構造を正しく議論できないことを示している。また平面上の 銀河団の移動方向は宇宙の初期ゆらぎを反映していることもわかった。

第4回

  • 日時

    2018年6月4日(月)16:30〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「X線で探る天の川銀河からの高温ガスアウトフロー」

  • 講演者名

    中島 真也 氏

  • 所属・職

    理化学研究所

  • 概要

    銀河内部で起きる超新星や大質量ブラックホール活動は周囲の星間 物質を加熱する。形成された高温のガスは、周辺の冷たいガスをも 巻き込みながら銀河外へアウトフローするため、星生成の制御・元 素の拡散といった銀河進化の鍵を握ると考えられている。星生成銀 河である天の川銀河でも高温ガスアウトフローの存在が予測され、 実際に過去の全天観測から広がったX線放射が見つかっている。し かしながらそれらは表面輝度が低く、分光観測を行って物理量を引 き出すことが難しかった。本講演では、われわれが開発・運用した X線天文衛星すざくがその状況を打破し、天の川銀河中心部からの 高温ガスアウトフロー、ならびに銀河全体に広がる高温ガスハロー の分光観測を大きく進展させたことを紹介する。また、2016年に打 ち上げたひとみ衛星が実証したマイクロカロリメータによる精密分 光観測を例にあげながら、X線天文衛星代替機をはじめとする将来 のX線天文台が、この領域の研究をどのように発展させるのかにつ いても議論する。

第3回

  • 日時

    2018年6月4日(月)13:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「X線精密分光と多波長モニタで測定する巨大ブラックホールスピン」

  • 講演者名

    野田 博文 氏

  • 所属・職

    東北大学

  • 概要

    スピン(角運動量)は巨大ブラックホール(BH)が持つ観測可能な物理 量の一つであり、それ自体が重要なのはもちろん、宇宙物理におい てジェット生成機構や巨大BHの成因といった積年の難題解決に不可 欠なため、高信頼度での測定が急務である。スピンは主にX線帯域 のFe-Kα輝線の広がりから求められ、この方法で測定に成功したと 称する報告が多数なされたが、系統誤差がぬぐいきれず信頼性が低 い。この系統誤差の一つは、X線連続スペクトルの不定性である。 これに対し私は、独自のX線変動解析やX線と可視紫外光の同時モニ タを通じ、全く新しいBH降着流の理解を構築し、スピン測定の信頼 度を大きく高めた。本研究では、これらを次期X線衛星「XARM」に 搭載するX線CCD「Xtend」データに適用する。もう一つの系統誤差 は、BH遠方で生じる細いFe-Kα輝線、電離したFe吸収線などCCDで 分解しきれない微細なスペクトル構造である。これは「XARM」搭載 のX線カロリメータ「Resolve」で解決できる。本講演では、これら の「XARM」を駆使したBHスピンの研究計画と、「XARM」および将来 衛星に向けた装置開発の計画を発表する。

第2回

  • 日時

    2018年6月4日(月)10:40〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「X線観測による銀河宇宙線初期加速の研究」

  • 講演者名

    信川 久実子 氏

  • 所属・職

    奈良女子大学

  • 概要

    冷たい星間物質から生まれた恒星は核融合による進化を経て超新星 の後、高温プラズマとして再び星間物質に戻る。星間空間には光子 や高速の粒子(宇宙線)が飛び交っている。星間空間で起こる諸現 象は、宇宙進化の素過程全体の縮図といえる。特に宇宙線は、星間 磁場と同程度のエネルギー密度を持つ、銀河進化の最重要因子であ る。 これまでの銀河系内の宇宙線(銀河宇宙線)の観測研究は、ガンマ 線などによるGeV-TeV帯域の高エネルギー宇宙線の測定が主流であ る。その結果、超新星残骸が銀河宇宙線の主要起源だと考えられて きた。宇宙線は低エネルギー(keV-MeV)帯域から加速される。し かし、これまではその測定手段がなかったため、加速の初期機構に ついての観測的情報は皆無であった。さらにベキ分布から、低エネ ルギー宇宙線は総量としても支配的であるため、これまでは宇宙線 そのものの全貌も見えていなかったといえる。 宇宙線(電子・陽子)は星間空間中の物質と相互作用し、X線を放射 する。原子の内殻電離により特性X線(輝線)が、また制動放射によ り連続X線が放射される。しかしこの放射は微弱であるため、これま での観測では捉えることができなかった。我々はX線天文衛 星「すざく」の観測データを精密に調べた結果、複数の超新星残骸 からそのX線信号の検出に成功した。輝線と連続X線の強度比から、 X線放射に寄与する宇宙線はMeV帯域の陽子であることがわかった。 すなわち、超新星残骸では確かに低エネルギー宇宙線が生成されて いることを初めて観測的に実証した。 さらに我々は銀河面のデータも調べたところ、銀経2-4度と-20度の 広範領域で上記と同様のX線放射を発見した。星間物質を明るいX線 源が照らすと類似の放射が出うるが、領域近傍に条件を満たす天体 は存在しなかった。すなわち、低エネルギー宇宙線(MeV陽子)が 存在している証拠を見出した。MeV陽子はわずかしか拡散できない ためその場で生成されているはずだが、観測領域に既知の超新星残 骸は含まれない。この観測結果は、「超新星残骸が全ての銀河宇宙 線を生成している」という従来の常識を覆すものである。 「すざく」で開拓した低エネルギー宇宙線研究をさらに飛躍させる ため、X線天文衛星「ひとみ」搭載X線CCDカメラの開発を行なった。 その実績と経験を生かし、2020年代初頭打上げ予定のXARM衛星の開 発を現在行なっている。本講演では「ひとみ」での実績と、XARM衛 星における本研究の展開についても述べる。

第1回

  • 日時

    2018年6月5日(火)15:00〜 16:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「New Insights on the gas in, around, and between galaxies」

  • 講演者名

    Prof. John O’meara

  • 所属・職

    Professor and Chair, Department of Physics, Saint Michael’s College/ LUVOIR Cosmic Origins Working Group Lead, https://asd.gsfc.nasa.gov/luvoir/

  • 概要

    For four decades, astronomers have used the technique of quasar absorption lines to understand hydrogen and heavy elements over nearly all of cosmic time. Despite the great success of this technique, it has some significant limitations. In this talk, I will introduce new techniques to explore gas in the circumgalactic and intergalactic medium, and introduce the LUVOIR large mission concept, which promises to fundamentally transform our understanding of the interplay of gas and galaxies.

2017年度/FY2017

第10回

  • 日時

    2018年3月1日(木)15:00〜16:30

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「The progress and roadmap of Chinese lunar and planetary exploration and radio brightness temperature observation of the Moon.」

  • 講演者名

    Jinsong PING(ジンソン・ピン)氏

  • 所属・職

    中国国家天文台/国立天文台:外国人招へい研究者(短期)

  • 概要

    The progress and roadmap for Chinese lunar and planetary science exploration will be reviewed. A lunar farside landing mission, a Mars orbiter and small rover mission, and a pre-research for small body mission will be introduced in some detail. Besides these, a radio brightness temperature observation of the Moon by Chang'E orbiter mission will be discussed in some detail. Additionally, some radio science experiments carried out by using Chinese ground tracking stations will be talked also.

第9回

  • 日時

    2017年11月15日(水)15:30〜16:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Ceres and the Terrestrial Planets Cratering Record」

  • 講演者名

    Robert G. Strom 氏

  • 所属・職

    LPL, University of Arizona

  • 概要

    Dwarf planet Ceres, the largest object in the Main Asteroid Belt, has a surface that exhibits a range of crater densities for a crater diameter range of 5-300 km. In all areas the shape of the craters’ size-frequency distribution is very similar to those of the most ancient heavily cratered surfaces on the terrestrial planets. The most heavily cratered terrain on Ceres covers ~15% of its surface and has a crater density similar to the highest crater density on 〈1% of the lunar highlands. This region of highercrater density on Ceres probably records the high impact rate at early times and indicates that the other 85% of Ceres was partly resurfaced afterthe Late Heavy Bombardment (LHB) at ~4 Ga. The Ceres cratering record strongly indicates that the period of Late Heavy Bombardment originated from Main Belt Asteroids. 。 

第8回

  • 日時

    2017年9月1日(金)12:30〜

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「マントル対流の数値シミュレーションによる全地球ダイナミクス研究」

  • 講演者名

    吉田 晶樹 氏

  • 所属・職

    海洋研究開発機構地球深部ダイナミクス研究分野・主任研究員

  • 概要

    現在の地球内部の状態(温度・粘性構造、組成分布)や、地球46億年史における内部活動と表層運動との相互作用の歴史を包括的に理解する上で、 マントル対流の数値シミュレーションは、観測・調査、実験、理論に並ぶ有効な手段の一つであると考える。観測・調査・実験データを最大限に活用した数値 シミュレーションで得られた結果は、それらの地球科学データを補完する役割があるだけではなく、地球惑星科学の他分野に新しい研究指針や方向性を与え続けられる ことが望ましい。現在では、計算機速度の向上と数値計算技術の発展によって、より現実的な地球の物性パラメータを考慮した三次元でのマントル対流シミュレーションが 可能になりつつある。また、研究課題に応じて、全地球規模の地学現象を扱う「グローバルモデル」と、研究対象地域下 (例えば、日本列島を含むユーラシア大陸東部地域や ホットスポット火山列が集中する南太平洋地域下のマントル内部)で起こる比較的小規模スケールの地学現象を扱う高解像度の「リージョナルモデル」を、 研究者が自在に使い分けられるまで進展している。そのような状況の中、我々は、新しい計算格子系と有限体積法に基づいたマントル対流の 三次元シミュレーションプログラムの開発、及び、プレート運動と大陸移動を実現するシミュレーションモデルの開発を世界に先駆けて実施した。 その後、モデルの改良と高度化を繰り返しながら、地質学・地震学・地球化学等、他分野の研究者とも連携し、 表層運動と内部活動との熱的・力学的相互作用の物理的理解、また、固体地球科学上の第一級の未解決問題で あるプレート運動や大陸分裂の原動力の定量的理解、 マントル深部に沈み込む海洋プレートと地殻層の挙動の解明等を目指している。本講演では、ここ数年行ってきた研究のうち、グローバルモデルに基づく研究、特に、 (1)二億年前の「超大陸パンゲア時代」から現在・未来までのマントル対流シミュレーションによる、パンゲア分裂以降の大陸移動の歴史を再現・予測する試み、さらに、 (2)時間スケールが大きく異なるために、これまで独立して扱われてきた地球中心核(コア)の熱対流運動を、 マントル対流と一つの熱対流システムで同時にシミュレートする新しい試みを紹介し、これまでに得られた成果と知見について議論するとともに、 今後の地球ダイナミクス研究のあるべき方向性と具体的な研究課題についても触れたい。

第7回

  • 日時

    2017年9月1日(金)9:30〜

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「木星型惑星大気の表層帯状流の成因について」

  • 講演者名

    竹広 真一 氏

  • 所属・職

    京都大学数理解析研究所・准教授

  • 概要

    木星と土星の表層の流れは, 赤道周辺の幅の広い順行ジェットと中高緯度で交互に 現われる互いに逆向きの幅の狭いジェットが特徴的である. 自転角速度よりも速く回転している赤道順行ジェットを生成維持するには何らかの 特別な加速メカニズムが必要である. 惑星表面の赤道域は自転軸から最も離れた場 所であるために, 単純な流体の移動だけでは角運動量保存則のために自転速度より 遅くなってしまうからである. 一方で, 中高緯度の縞状構造を, 等方的な内部熱流 による強制, あるいは, 太陽放射による惑星規模の極と赤道域との強制のコントラ ストにより生成維持するメカニズムも単純ではないように思える. これまでに考えられている木星型惑星の表層ジェットの成因として, 大きく分けて, 深部領域の対流あるいは表層の流体運動を考える 2 種類のモデルが研究されてきて いる. しかしながらどちらのモデルが適切であるかは未だ結論が出ていない. 流体 層の厚さが惑星半径に比して十分小さく深部からの熱流と太陽加熱によって大気運 動が駆動される「浅い」モデルでは, 中高緯度の交互に表われる幅の狭いジェット は再現されるものの,赤道域のジェットが必ずしも順行方向とはならないことが問題 であると考えられてきた. 一方で, 太陽放射が届かない深い領域において, 内部の 熱流によりのみ駆動される対流運動に成因を求める「深いモデル」の枠組みでは, 赤道域の順行ジェットは容易に生成されるものの, 中高緯度の交互に表われるジェッ トの生成が困難であると思われてきた. 本講演ではこれらのモデルの歴史を振り返りつつ, 最近の研究ならびに講演者 自身の研究を交えて木星型惑星大気の数値モデル研究の現状と展望を議論する.

第6回

  • 日時

    2017年8月28日(月)16:00〜

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「直接衝突の痕跡をもとに小天体の進化を探る」

  • 講演者名

    中村 昭子 氏

  • 概要

    固体間の直接衝突は、太陽系を含め、惑星系をかたちづくってきた。 大規模衝突の力学過程では、天体の自己重力が支配的となる。対して小天体探査や観測で明らかにされる衝突の痕跡には、強度や空隙率と いった、熱史や衝突史を反映した小天体の力学物性があらわになる。 私たちは、室内衝突実験により、ときには数値シミュレーション研究と ともに、小天体の物性が発現する衝突の力学過程、すなわち、 圧密・クレーター形成・破壊を模擬して経験則を得てきた。そして、 それらと衝突の痕跡にもとづいて、小天体進化の時間軸を微惑星の時代 にむかって遡ろうとしている。一方、小惑星イトカワのようながれき天体 への衝突や衝突等で励起される振動流動などの動的過程では、がれき間に 働く接触力が重力に比して優勢になりうる。そこで、微小重力下の粉粒体 の動的過程や惑星間空間のがれき・塵の接触力を、室内実験および小天体 に見られるその痕跡から調べている。これを足がかりとして、太陽系形成 初期の微粒子集合体天体の進化を辿りたい。研究の現状と最近の試みを 紹介する。

第5回

  • 日時

    2017年8月28日(月)13:00〜

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「重力マイクロレンズによる系外惑星の研究」

  • 講演者名

    住 貴宏 氏

  • 所属・職

    大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻・准教授

  • 概要

    これまでに3千個以上の系外惑星が見つかっているが、重力マイクロレンズは、従来の方法では困難だった比較的大軌道半径(1?6AU)の地球質量程度の軽い惑星 まで検出可能な現在唯一の方法である。この領域は、スノーラインと呼ばれるH2Oが氷に凝縮し始める境界の外側で、惑星形成が活発な領域にあたり非常に重要である。 我々MOAグループは、ニュージーランドMt.John天文台でマイクロレンズによる系外惑星探査を行っている。これまでに、土星 、木星、海王星に似た惑星等を発見し、 スノーライン外側の惑星の存在量、質量分布を求めた。今後は、南アフリカに1.8m望遠鏡を建設し、世界最大級の近赤外線カメラを搭載し、初の近赤外線による マイクロレンズ系外惑星探査をする(PRIME)。近赤外線では、より星が多い銀河系中心部を観測でき、より多くの惑星を検出できる。2025年打ち上げ予定のNASAの近赤外広視野 サーベイ宇宙望遠鏡WFIRSTは、口径2.4m、視野0.28平方度と圧倒的なサーベイ能力で、マイクロレンズにより系外惑星を約3,000個(内約200個は地球質量以下)発見する。 Kepler衛星が1AU以内の惑星分布を明らかにしたのに対して、WFIRSTはその外側を網羅し、全ての惑星分布を明らかにする。また、コロナグラフにより巨大ガス惑星や 氷惑星の直接撮像、分光をして惑星大気を調べる。2030年代は、NASAのLUVOIR15m級宇宙望遠鏡に参加することで、ハビタブル惑星の大気を直接分光し、宇宙生命探査をする。

第4回

  • 日時

    2017年7月13日(木)15:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「小型天体・地球型惑星から流出する天体起源イオン」

  • 講演者名

    横田 勝一郎 氏

  • 所属・職

    宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所・助教

  • 概要

    太陽系の月・惑星は太陽風などの太陽放射物に晒されている。月のような小型天体は大気を持たないと考えられていたが、 現在では薄いアルカリ大気を有し太陽風スパッタリングによって表面物質が叩き出されていることが分かっている。流出する天体起源イオンを 計測することで遠隔から天体表面物質を質量分析することが期待出来るため、スパッタリング等による放出機構の研究が進められている。 一方で厚い大気に覆われた地球や火星でも太陽風の影響で大気構成物質が剥ぎ取られていて、その流出機構の解明を目指した研究も盛んである。 大気流出機構の解明は惑星進化過程の理解に重要であり、例えば地球と火星は何故これほど違う環境になったのかを知ることにも繋がる。 本発表では以上2種類の天体起源イオンの流出を紹介し、これまで開発した(開発中の)探査機用質量分析器の観測によって得られた(期待出来る)成果について議論する。

第3回

  • 日時

    2017年7月12日(水)10:30〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「負電荷ミュオンを用いた新奇な元素分析法の開発」

  • 講演者名

    二宮 和彦 氏

  • 所属・職

    大阪大学大学院理学研究科化学専攻・助教

  • 概要

    ミュオン(ミューオン、ミュー粒子とも)は、電子の207倍の質量をもつ素粒子である。 研究目的では大型の加速器施設で大量に生成され、物性研究やイメージングなど様々な研究で利用されている。 負電荷をもったミュオンは、物質中で原子核のクーロン場にとらわれ、電子と同じように原子核のまわりに 原子軌道を作り、ミュオン原子と呼ばれる系を形成する。捕獲されたミュオンは電子と同じように、 ミュオン1s原子軌道を目指して脱励起を起こすが、このときに質量の関係から電子の200倍のエネルギーを 持ったミュオン特性X線を放出する。私はこのミュオン特性X線を用いた元素分析法の開発を行ってきた。 ミュオン特性X線は非常に高エネルギーであり、通常の蛍光X線分析で苦手とする軽元素も容易に定量できるだけでなく、 バルクな物質や容器に封入された試料に選択的にミュオンを停止させ、内部の元素分析をすることすら可能である。 このような特長を持った元素分析法は他にはなく、貴重な隕石試料中の炭素の分析、考古学試料や産業材料への適用 など様々な分野への展開が進んでいる。ミュオンによる元素分析の可能性は、50年ほど前に指摘はされていたが (H. Daniel, Nuclear-Medizin, 4(1969)311)、茨城県東海村のJ-PARC/MUSE、大阪大学核物理研究センターMuSICと いった大強度のミュオン源が近年利用可能となったことで、現実的な元素分析法として注目され急速に研究が進んでいる。 また、その時には考えられていなかった、化学状態分析や同位体分析といった新たな可能性についても検討が進んでいる。

第2回

  • 日時

    2017年6月2日(金)13:00〜

  • 場所

    F313

  • タイトル

    「ピナツボ火山マントル捕獲岩中の塩水包有物に硫酸イオンがあった!」

  • 講演者名

    川本 竜彦 氏

  • 所属・職

    京都大学・理学研究科・附属地球熱学研究施設

  • 概要

    沈み込む海洋プレートからマントルウェッジに加わる水に富む流体の特徴を知ることは、 地球内部の化学的分化を理解するために重要である。私達は、高温度高圧力条件でのマグマと水の溶(Kawamotoほか 2012 Proc Natl Acad Sci)。また、フィリピンの火山フロントにあるピナツボ火山から採取された マントル捕獲岩中の流体包有物の観察により、前弧の下では、水に富む流体は二酸化炭素を含むNaCl換算で5重量%の 塩水と考える(Kawamotoほか 2013 Proc Natl Acad Sci)。今回は、ラマンマッピング装置を用いてピナツボのマントル 捕獲岩中の流体包有物の観察により、それらに加えて硫酸イオンと硫酸塩鉱物が存在することに気づいたので、その報告をする。 これまで東北日本の背弧側の火山である一ノ目潟のマントル捕獲岩中では硫酸塩鉱物を報告していたが(Kumagaiほか、Contrib Mineral Petrol)、 ピナツボの捕獲岩は830℃より低温を記録する前弧マントルでは、一ノ目潟のように火山弧下のより高温のマントルに加わる流体とは 異なると提案していた。ピナツボの捕獲岩のハロゲン元素のデータによると、流体包有物は海洋堆積物の間隙水を起源に持つ蛇紋岩の 脱水分解により生成されたと考えられる(Kobayashiほか 2017 Earth Planet Sci ett)。蛇紋岩中には硫化物と硫酸塩鉱物の形で存在 するらしい(Altほか 2012 Earth Planet Sci Lett)ので、硫化物が酸化されるならば硫酸イオンと硫酸塩が見出されたことと矛盾しないし、 量も桁では異ならない。ピナツボの流体包有物の水:塩素:硫黄の質量比は100:3:0.5で、海水の塩素/硫黄比と比べると多くの硫黄が濃集している。 また、ピナツボ捕獲岩中の角閃石は鉛に富み、これは塩水の影響と提案していた(Yoshikawaほか 2016 Lithos)が、 鉛は硫黄によって動き易い元素であるため流体中の硫酸イオンの影響と想像する。1つの硫酸イオンは8つの鉄の2価を3価に酸化する強力な酸化剤だから、 硫酸塩や硫酸イオンはマントルウェッジを酸化する役目を果たしているだろう。沈み込み帯のマグマは中央海嶺玄武岩よりも酸化的と 考えられている(Kelley and Cottrell 2009 Science)が、その原因のひとつにスラブ流体の硫酸イオンがあると提案する。さらには、 カルクアルカリ岩系列という酸化的なマグマの成因(Miyashiro 1974 Am J Sci) として、スラブ流体の硫酸塩と硫酸イオンが関与する可能性を指摘したい。

第1回

  • 日時

    2017年5月15日(月)10:00〜 11:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Introduction to Macquarie, and the Frontier Research in Astronomy」

  • 講演者名

    Lee Spitler 氏

  • 所属・職

    Macquarie University

  • 概要

2016年度/FY2016

第14回

  • 日時

    2017年3月30日(木)13:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    地球中心核における酸素分布

  • 講演者名

    Tetsuya Komabayashi (駒林鉄也 氏)

  • 所属・職

    School of GeoSciences, University of Edinburgh (UK) (エジンバラ大)

  • 概要

    地球中心核における重要課題の一つに軽元素の特定がある。Birch (1952)が最初にその存在可能性を指摘して以来、 中心核に溶け込んでいる軽元素の種類と量の特定に大量の人員と研究費が投入されている。この問題はそもそもは中心核、 ひいては固体地球の全岩組成の問題であったが、近年では、ダイナモの起源、更にはハビタビリティの問題ともリンクしており、 まだ人々は飽きていない。私はこの問題に独自のアプローチを試みようと、高温高圧実験及び熱力学計算を行っている。 実験は、私が開発した内部抵抗加熱式ダイアモンドアンビルセル(内熱DAC)を用いて高精度の実験を目指し、熱力学計算は「実験に基づく熱力学モデルの構築」を目指している。 セミナーでは純鉄の相転移についてのDAC実験の結果と、Fe-FeO系の熱力学計算結果についてお話しする。 純鉄の面心立法構造―六方最密充填構造相転移の温度圧力位置を内熱DACおよびシンクロトロン放射光をもちいた高温高圧その場観察実験により決定した。 内熱DACは試料を直接抵抗加熱するのでレーザー加熱と比べて温度の精度が一桁高い。そのように決定された相境界、 および他のグループの実験結果にもとづいてFe-FeO系の熱力学モデリングを行った。各相の自由エネルギーから液体の密度、縦波速度を求め、 液体鉄に対する酸素の影響を見積もった結果、純鉄に酸素を加えると密度だけでなく、速度も低下することが分かった。地震波観測モデルと比較した結果、 この速度への影響は観測値から離れる方向であるため、外核の主要軽元素として酸素は適当でないことがわかる。ところで、外核の最上部には低速度層が観測されており、 この原因として酸素の濃集を提案する。外核最上部の酸 素の供給源としては、核―マントル化学反応を考えている。

第13回

  • 日時

    2017年1月20日(金)10:30〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    Black holes and Einstein's gravity

  • 講演者名

    Chris Done 氏

  • 所属・職

    Durham university (UK)

  • 概要

    I will review what we know about the accretion flow in the stellar mass black hole binary systems, and show how we can use them to test Einstein's General Relativity in strong gravity with observational evidence for the event horizon and the last stable circular orbit. I will also talk about our new result on the first detection of Lense Thirring (relativistic vertical) precession in the strong field limit in these systems. This solves the 30 year mystery of the origin of the characteristic timescale seen in these objects, as well as being the first test of this prediction of Einstein's gravity in the strong field limit. Gravitational waves from merging black holes are the ultimate test of strong gravity, and the recent advanced LIGO results are fantastic confirmation that General Relativity really does describe what we see.

第12回

  • 日時

    2016年12月9日(金)10:30〜

  • 場所

    F313

  • タイトル

    Indian astronomy missions ASTROSAT and POLIX

  • 講演者名

    Biswajit Paul 氏

  • 所属・職

    Raman Research Institute (India)

  • 概要

    ASTROSAT, launched in September 2015 comprises of five instruments, two of which are significant improvement over previous space borne instruments of same kind. A pair of UV-optical telescopes provide multi band UV and optical imaging with ~1.8 arcsec imaging over a large FOV and a set of three large area X-ray proportional counter detectors provide large effective area of 6000-2000 sqcm in 4-80 keV band. Some preliminary results from Astrosat will be presented with emphasis on the large area hard X-ray detectors. A Thomson X-ray polarimeter named POLIX is under development for launch onboard a dedicated recently approved small satellite. We will describe the design, sensitivity, tests results, and scientific prospects of POLIX which is particularly suited for study of the magnetic field structure and the process of accretion/emssion onto the high magnetic field neutron stars. We will also briefly describe some interesting results from study of X-ray eclipses in binary systems.

第11回

  • 日時

    2016年11月17日(木)2限(10:30〜12:00)

  • 場所

    F608

  • タイトル

    A Driving Mechanism of Turbulence inside Interstellar Clouds

  • 講演者名

    岩崎 一成 氏

  • 所属・職

    同志社大学

  • 概要

    Interstellar medium (ISM) has a thermally bistable structure, or cold clumpy clouds and warm diffuse gas, in the optically thin regime as a result of the balance of radiative cooling and heating due to external radiation fields and cosmic rays. Koyama & Inutsuka (2002) and many authors have shown that the cold clouds formed by the thermal instability have supersonic translational velocity dispersion in the warm gas. It is believed that observational “supersonic turbulence” of the cold clouds reflect these motion. In the context of the star formation, turbulence inside the cold clouds is important because stars form inside them. However, driving mechanisms of turbulence inside the cold clouds are not well known. As one of the promising driving mechanisms of turbulence, we focus on the Kelvin-Helmholtz (KH) instability induced by a velocity shear between the cold clouds and surrounding warm gas. We found that the phase transition from the warm gas to the cold clouds significantly enhances turbulence inside the cold clouds. The kinetic energy of the warm gas is transferred into the cold clouds in association with the phase transition. As a result, the KH instability with the phase transition drives transonic turbulence inside the cold clouds.

第10回

  • 日時

    2016年9月30日(金)15:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「密に詰まった粉粒体の固体・流体転移と地震が誘発する現象」

  • 講演者名

    隅田 育郎 氏

  • 所属・職

    金沢大学理工研究域自然システム学系

  • 概要

    大きな地震の発生に伴い、液状化や火山活動の活発化などの現象が誘発されることは良く知られている。しかしこれらの現象の発生条件、メカ地震により、その振る舞いが「固体的」から「流体的」へと変わったため起きたと捉えることが出来る。私達の研究室ではこのような振る舞いの転移現象を室内実験により調べている。本講演ではこれまでに得られた結果について紹介する

第9回

  • 日時

    2016年9月9日(金)10:30〜

  • 場所

    F313

  • タイトル

    「ひとみが遺したもの ―銀河団加熱源の手がかりー」

  • 講演者名

    藤田 裕 氏

  • 所属・職

    大阪大学理学研究科

  • 概要

    2月に打ち上げられた日本のX線天文衛星ひとみは、残念ながら一月ほどで事故により運用停止となった。しかし通信が途絶する前に観測されていたペルセウス座銀河団のデータにより、銀河団を満たしている高温のガスの運動が測定され、中心部で 164km/s という比較的小さい乱流速度が得られている。本講演では、この結果をもとに銀河団の加熱メカニズムについて検討したい。特にNature 論文のプレスリリースでは、「予想外に静かな高温ガス」という表現が使われていたが、理論の立場からは決して予想外ではないということを説明する。また、もし現在検討中のX線天文衛星代替機が近い将来に実現した場合、銀河団を観測するときに注目すべきポイントについても解説する。 

第8回

  • 日時

    2016年8月9日(火)13:00〜14:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「ワイドバンドX線撮像分光で狙う天の川銀河面の非熱的活動性」

  • 講演者名

    松本 浩典 氏

  • 所属・職

    名古屋大学現象解析研究センター

  • 概要

    現在のX線天文学で、E=1-40keV程度のワイドバンドでの撮像分光観測は空白領域となっている。すざく、Chandra、XMM-NewtonはE<10keVしか撮像観測できない。一方、硬X線を撮像出来るNu-STARは、E>3keVにしか感度がなく、X線天文学で非常に重要な6.4keV,6.7keV, 7.0keVの3本の鉄特性X線を見分けるエネルギー分解能はない。しかも、迷光の混入が激しく、天体が混みあった領域や広がった天体は苦手としている。この領域で狙うサイエンスとしては、例えば天の川銀河面の非熱的活動性が考えられる。天の川銀河面の広がったX線放射のスペクトルには、6.4keVに中性鉄の特性X線が見られ、銀河面での非熱的活動性の揺ぎない証拠である。最近銀河面広域のX線スペクトルを合計したものを解析することにより、6.4keV輝線の起源は1GeV以下の低エネルギー宇宙線陽子であり、その密度は80eV/CCにもおよぶとの示唆がある。しかし現状のX線天文衛星では温度約6keVの熱的成分の混入が激しく、非熱的放射のみを分離した観測は出来ていない。非熱的活動性の起源を真に解明するには、ワイドバンド分光撮像観測が決定的に重要である。このような目的には角度分解能は1分角弱程度でよく、名古屋大学などで開発中の硬X線望遠鏡、および大阪大学で開発中のSD-CCDなどを発展させれば、十分に実現可能であると考える。 

第7回

  • 日時

    2016年7月27日(水)13:00〜14:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「X線天文学の現在と未来 ~銀河団とブラックホールの観測に関する展望~」

  • 講演者名

    林田 清 氏

  • 所属・職

    大阪大学宇宙地球科学専攻 准教授

  • 概要

    X線天文学の誕生以来50年、その対象は彗星から最遠方のクェーサに及ぶが、宇宙に存在するバリオンの大半を担っている銀河団高温ガス、極限状態の物理が支配するブラックホール周辺は、特に重要な研究対象である。本セミナーでは、まず、銀河団高温ガスに関する、すざく衛星、ひとみ衛星を用いた最近の観測成果を紹介する。また、このような成果を得るにあたって、装置開発とともに地上・軌道上較正が本質的に重要であることを、我々が発案導入した較正手法とともに説明する。続いて、ブラックホールに関する成果から、時間変動スケールと質量のスケーリング則の発見、ひろがった鉄輝線の発見を紹介する。後者に関して、 連続X線スペクトル解析の難しさから20年以上にわたって継続する議論を説明したあと、それを打破することをひとつの目標としたX線偏光観測の重要性を、開発中の装置とともに示す。最後に、ひとみ後継機の可能性とそこへの取り組みの位置づけ、アーカイブ解析と基礎開発(X線撮像偏光計とX線多重像干渉計)を柱とする研究計画、さらに遠い将来、次世代のための目標を紹介する。

第6回

  • 日時

    2016年6月20日(月)10:00〜11:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Reducing conditions in the inner Solar System, as witnessed by Mercury and Earth」

  • 講演者名

    Asmaa Boujibar 氏

  • 概要

    The different steps leading to the chemical and structural properties of terrestrial planets are still relatively poorly constrained. This is mainly due to uncertainties relative to the nature of the building blocks. For instance, each planet displays a chemical composition and redox state different from all known chondrites. This suggests either an incomplete sampling of the nebular material through the meteoritic collection, or extensive modification of the chemistry of the growing planetary embryos. However major constraints point to reducing conditions in the inner Solar System, as (i) Mercury's large core and reduced surface and (ii) the stable isotopic composition of Earth very similar to the reduced enstatite chondrites. Although these meteorites have chemical compositions different from terrestrial and mercurian material (SiO2-rich for both planets, alkali-rich for Earth and O-rich for Mercury), they remain the only known reduced undifferentiated meteoritic material. I will present the similarities between chondritic and planetary material and discuss whether the chemical differences can be resolved by planetary differentiation processes as core segregation, mantle melting and collisional erosion. I will also show how these reducing conditions in the inner Solar System have significant implications for internal heat generation through the sequestration of radioactive elements in the planetary cores.

第5回

  • 日時

    2016年6月16日(木)15:00〜16:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Focusing on our origins: How studies of meteorites help us understand how life came to be.」

  • 講演者名

    George Cody 氏

  • 所属・職

    Geophysical Laboratory, Carnegie Institution of Washington, USA

  • 概要

    The earliest history of our solar system is represented in a tiny fraction of primitive objects, e.g., asteroids and comets, that represent fragments of planets that formed and evolved during the first 10 to 100 million years of the Solar System. A relatively large fraction of primitive meteorites is composed of a complex organic solid (typically referred to as Insoluble Organic Matter-IOM). The existence of IOM has been known for over 70 years, however, the origin of IOM remains a much debated topic. In the course of studying IOM in a wide range of meteorites, we have come to understand that IOM is most likely synthesized in the interiors of planetesimals. In order to prove this we simulate the chemistry that likely occurred in the laboratory and compare the results with genuine IOM. IOM is also exotic in terms of the abundance of its hydrogen, carbon and nitrogen stable isotopes. We have also focused on understanding the origin of these abundances.

第4回

  • 日時

    2016年6月14日(火)13:00〜14:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「衝撃誘起蒸発と化学反応:地球型惑星の表層環境進化の理解に向けた実験的研究(Shock vaporization and subsequent chemical reactions:Toward understanding the evolution of the surface environment on planets using an experimental approach)」

  • 講演者名

    黒澤 耕介 氏

  • 所属・職

    千葉工業大学惑星探査センター

  • 概要

    月面には無数の衝突クレータが存在する. 現在においてはその衝突クレータの大部分が,太陽系の初期10億年のうちに形成されたことが明らかになっている. この時期を天体重爆撃期と呼ぶ. 天体衝突は莫大な質量とエネルギーをパルス的に供給し, 被衝突天体表層の平均場では起こり得ない相変化・化学反応を駆動したと考えられている. 講演者は太陽系の初期10億年間では天体衝突によって惑星表層全域に及ぶ壊滅的な擾乱が頻繁に加えられ,それに対する天体システム固有の応答によって太陽系の惑星の個性が生まれていった可能性に注目し, 実験的な研究を推進している. 講演では二段式軽ガス銃, 高強度レーザーを用いた開放系の衝撃蒸発実験の結果について解説し, その結果をもとに確立しつつある天体衝突による蒸発現象, それに引き続く化学反応を記述するための理論的枠組みについて述べる. 最後に天体重爆撃期の天体表層進化について議論する.

第3回

  • 日時

    2016年6月10日(金)14:00〜15:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Astronomy at Macquarie University」

  • 講演者名

    Lee Spitler 氏

  • 所属・職

    Macquarie University & Australian Astronomical Observatory

  • 概要

    I will briefly introduce astronomy research being conducted at Macquarie University, which is a 40,000-student university located in Sydney, Australia. The astronomy faculty has doubled in size in the last 3 years and has strong links to both of Australia's national observatories including 7 faculty with joint positions at the university and an observatory. During the second part of my talk I will describe the ZFOURGE high-redshift galaxy survey. By using deep near-infrared imaging taken with the Magellan telescope in legacy extragalactic fields, we have produced high-quality galaxy catalogs to redshifts z~5.5. I'll describe a number of highlights from the survey, including the identification of quiescent galaxies at redshifts z~4 and the discovery of one of the most distant galaxy clusters currently known.

第2回

  • 日時

    2016年6月7日(火)13:00〜14:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「地球外生命圏の起源と持続性:氷衛星深部生命圏の理解に向けた理論・観測・探査の取り組み (Origin and evolution of the extra-terrestrial deep habitats in icy bodies, to be understood through theoretical study, observation and exploration.)」

  • 講演者名

    木村 淳 氏

  • 所属・職

    東京工業大学地球生命研究所

  • 概要

    「生命とは何か」という問いに対し宇宙共通原理としての答えを探る目的意識は「アストロバイオロジー」と呼ばれ,惑星科学のみならず周辺分野を横断した総合的研究や探査プロジェクトの駆動力となっている.これまでの様々な研究を通して,生命発生の条件を持ち得る天体環境は地球のように太陽エネルギーで主に駆動される表層生命圏と,自身の地熱をエネルギーとし表面下に液体圏を擁する深部生命圏とに大別され得ることが分かってきた.本セミナーでは後者をターゲットに,その舞台である氷衛星が深部生命圏を想像させるに至ったこれまでの知見をまとめ,我々が取り組んでいる地下海の存否やその長期進化に関する理論的研究の最近の成果を紹介する.さらに,理論的アプローチの実証的手段として日欧で開発中の木星圏探査機JUICEや,その他の観測的アプローチの提案とそれによる展望を議論したい.

第1回

  • 日時

    2016年4月1日(金)16:00〜

  • 場所

    F102

  • タイトル

    「Plasma Science: a high energy density perspective」

  • 講演者名

    Bruce Remington 氏

  • 所属・職

    ローレンスリバモア国立研究所

  • 概要

    Over the past 3 decades, there has been an exponential increase in work done in the newly emerging field of matter at extreme states of deformation and compression. This accelerating progress is due to the confluence of new experimental facilities, experimental techniques, theory, and simulations. Regimes of science hitherto thought out of reach in terrestrial settings are now being accessed routinely. High-pressure macroscopic states of matter are being experimentally studied on high-power lasers and pulsed power facilities, and next-generation light sources are probing the quantum response of matter at the atomic level. Combined, this gives experimental access to the properties and dynamics of matter from femtoseconds to microseconds in time scale and from kilobars to gigabars in pressure. There are a multitude of new regimes of science that are now accessible in laboratory settings. Examples include planetary formation dynamics, asteroid and meteor impact dynamics, space hardware response to hypervelocity dust and debris impacts, nuclear reactor component response to prolonged exposure to radiation damage, capsule dynamics in inertial confinement fusion research, and the basic high energy density properties of matter. I will review highlights and advances in this rapidly developing area of science and research.

2015年度/FY2015

第14回

  • 日時

    2016年3月10日(木)12:30〜13:30

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「過去から現在における地球内部の炭素と硫黄の循環について: 高温高圧実験からの制約(The flux and storage of carbon and sulfur from past to present: constrained from high-pressure experiments)」

  • 講演者名

    津野 究成 氏

  • 所属・職

    アメリカ・ライス大学

  • 概要

    The flux and storage of Earth's volatiles such as carbon (C) and sulfur (S) between and in the mantle, crust, ocean, and atmosphere is of a great importance to the long-term climate change, and habitability, partial melting of the Earth's mantle and formation of continental and oceanic crust. In the reduced, mid- to deep- upper mantle, the host of deep carbon is graphite/diamond and/or Fe-Ni-bearing alloy liquid [1]. However, high C solubility in Fe-Ni alloy liquid [2] suggests that graphite/diamond may be present only in C-rich mantle domains. But such suggestions do not take into account the role of sulfides, which must interact with alloy-carbon mantle subsystems. In order to constrain the stable forms of carbon in the reduced mantle where Ni-rich alloy is likely present [3], we explore the phase relations and C solubility in Ni-rich portion of the Fe-Ni-C-S systems [4] .
    Experiments were performed in a MgO capsule using a multi-anvil with six starting mixes (Ni/(Fe+Ni) wt. ratio of 0.50-0.61, 8-16 % wt.% S, 2.0-2.5 wt.% C, and 0-0.7 wt.% Cu) at 6-8 GPa and 800-1400 °C. Low-temperature runs for all starting mixes include solid Fe-Ni alloy + S-rich alloy liquid + graphite, and solid alloy-out boundary is constrained, for example, at 1000-1050 °C at 6 GPa and 900-1000 °C at 8 GPa for the S-rich starting mix. The C solubility in the alloy liquid (0.8~2.1 wt.% at 8 GPa and 1400 °C) decreases with increasing S content from 8 to 24 wt.% and with decreasing Ni/(Fe+Ni) from 0.65 to 0.53.
    For a mantle with ~0.1 wt.% alloy (~250 km depth) [3], diamond is likely stable coexisting with an S-rich alloy liquid for the depleted mantle domains (e.g., ?10 ppm bulk C). This is owing to the influence of S, which suppresses the incorporation of C in the alloy liquid to stabilize diamond. Our results thus imply that diamond is a stable form of carbon even in depleted mantle domains similar to that of MORB source without the necessity of excess C from derived from deeply subducted oceanic crust [5].
    [1] Dasgupta (2013) RiMG 298, 1-13. [2] Rohrbach et al. (2014) EPSL 388, 211-221. [3] Frost & McCammon (2008) Annual Rev Earth Planet Sci 36, 389-420. [4] Tsuno & Dasgupta (2015) EPSL 412, 132-142 [5] Rohrbach and Schmidt (2011) Nature 472, 209-212.
    In the last part of this seminar, I will briefly talk about the initial distribution of C and S in the mantle during the core formation process based on the experiments on C solubility and partitioning in and between S‐bearing alloy liquid and silicate melt. High-pressure experiments using a graphite capsule have been conducted at 3-6 GPa and 1600‐1800 °C using a mixture of S‐rich Fe‐Ni alloy and natural basalt. Our preliminary results can used for discussing the delivery of C and S from C‐ and S‐ rich impactor to the volatile‐depleted proto‐Earth based on the heterogenous core formation model, and whether late veneer is needed for explaining C and S contents, and C/S ratio in the bulk mantle (10‐100 ppm, 100‐200 ppm, and 0.2‐0.6, respectively) by assuming the C and S contents of the impactor (~3.5 wt.% and ~10 wt.%, respectively).

第13回

  • 日時

    2016年3月2日(水)15:00〜16:30

  • 場所

    H701

  • タイトル

    「重力波発見についての議論セミナー Gravitational wave discovery : Discussion seminar (理論科学研究拠点との共催)」

  • 講演者名

    発表&議論司会

  • 所属・職

    長峯 健太郎、富田 賢吾、Luca Baiotti

  • 概要

    Advanced-LIGO has made a sensational announcement on Feb 12, and there has been a splash of papers on astrophysical implications of their discovery of gravitational waves from binary black holes. At this discussion meeting/seminar, we would like to review the basic points of their discovery and discuss its astrophysical / cosmological implications together.
    Prof. Ken Nagamine will make the main presentation, followed by insightful inputs by Prof. Luca Baiotti from the perspective of numerical relativity, and by Prof. Kengo Tomida from star formation theory.

第12回

  • 日時

    2016年2月25日(木)16:00〜17:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「太陽系外彗星とそれらの研究からわかること
     Transiting Exocomets and what we learn about their systems by studying them」

  • 講演者名

    Dr. Carol A. Grady 氏

  • 所属・職

    Eureka Scientific/NASA GSFC

  • 概要

    While most attention has been garnered by searches for super-Jovian mass exo-planets the presence of minor bodies can be detected, at least through their dissociation products in suitably oriented systems. The principal detection technique is line-of-sight absorption spectroscopy, particularly in the UV. I review what we have learned about such bodies in beta Pictoris, and recent searches of other systems, their link to more massive bodies in their systems, and what this tells us about the frequency and potentially locations of Jovian-mass bodies in advance of their direct imaging detection.

第11回

  • 日時

    2015年11月12日(木)15:00〜16:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Not-so-simple stellar populations in nearby, resolved massive star clusters」

  • 講演者名

    Richard de Grijs 氏

  • 所属・職

    Kavli Institute for Astronomy and Astrophysics, Peking University, China (Director)

  • 概要

    Until about a decade ago, star clusters were considered "simple" stellar populations: all stars in a cluster were thought to have similar ages and the same metallicity. Only the individual stellar masses were thought to vary, in essence conforming to a "universal" initial mass function. Over the past decade, this situation has changed dramatically. Yet, at the same time, star clusters are among the brightest stellar population components and, as such, they are visible out to much greater distances than individual stars, even the brightest, so that understanding the intricacies of star cluster composition and their evolution is imperative for understanding stellar populations and the evolution of galaxies as a whole. I will discuss my group's recent progress in this context, with particular emphasis on the properties and importance of binary systems, the effects of rapid stellar rotation, and the presence of multiple populations in Local Group star clusters across the full age range. Our most recent results imply a reverse paradigm shift, back to the old simple stellar population picture for at least some intermediate- age (~2 Gyr-old) star clusters, which opens up exciting avenues for future research efforts.

第10回

  • 日時

    2015年10月26日(月)10:30〜12:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「月の水と揮発性物質の歴史の再構築
    Reconstructing the history of water and other volatiles in the Moon 」

  • 講演者名

    Mahesh Anand 氏

  • 所属・職

    オープン大学, 英国

  • 概要

    Recent sample studies have demonstrated that the lunar interior contains appreciable quantities of water although estimates for the bulk-water content of the Moon vary considerably. The origin and evolution of this lunar water remain unresolved with a range of possibilities including retention of primordial water during lunar accretion to a later addition of water following the crystallisation of the putative Lunar Magma Ocean. In addition to water, recent lunar sample investigations focussing on other volatiles (e.g., C, N, Cl), combined with results obtained from recent missions, have brought about a paradigm shift in our understanding of the history of lunar volatiles with potential implications for the origin of water and life on Earth and future utilisation of resources in-situ on the Moon. Lunar apatite has been the main target for recent sample studies because of its widespread occurrence in lunar rocks and its potential to reveal the volatile inventory of the Moon. We have measured abundances of OH, Cl and F and the isotopic composition of H and Cl in apatites from samples representing the ancient highlands, the younger maria, and impact-related rock types. Some major highlights from recent work carried out on lunar apatites have been the possibility of a common source of water in the Earth-Moon system. The dominant source for lunar water appears to be carbonaceous chondrite-type material with a minor contribution from cometary objects. In contrast, the postulated water-ice at the lunar poles could have been derived from completely different source(s) including asteroidal, cometary and solar wind, potentially spanning a significant (but as yet unconstrained) geological time period. Reconstructing this history will require further research on existing lunar samples, but also 'new' samples from regions of the Moon not sampled previously.

第9回

  • 日時

    2015年10月21日(水)15:00〜16:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「WIMP dark matter search of the DarkSide」

  • 講演者名

    Masayuki Wada 氏

  • 所属・職

    Princeton University

  • 概要

    DarkSide-50 (DS-50) at Gran Sasso underground direct dark matter search experiment based on a Time Projection Chamber (TPC) with liquid argon from underground sources. The DarkSide experiment is searching for signals especially from Weakly Interacting Massive Particle (WIMP), which is one of the most promising and well physics-motivated dark matter candidates.
    The DarkSide experiment uses liquid argon as target material for WIMP recoils. This is not standard because of radioactive isotope 39Ar and lighter mass of argon compared to heavy target like xenon. The reason of the choice and philosophy behind it will be discussed.
    DS-50 has been taking data since Nov 2013, collecting 47 days livetime of data with atmospheric argon. Also, recently DS-50 commissioned low-radioactivity liquid Ar from underground and accumulated 70 days livetime of data with it. The first physics result from DarkSide as well as the result with underground argon will be presented. This is the most sensitive dark matter search preformed with an argon target.

第8回

  • 日時

    2015年9月7日(月)15:30〜17:00

  • 場所

    D401

  • タイトル

    「地質学的過去の地殻応力の推定」

  • 講演者名

    山路 敦 氏

  • 所属・職

    京都大学大学院理学研究科 地球惑星科学専攻 地球生物圏史講座・教授

  • 概要

     東日本大震災を機に,地球物理学的観測データのない,数百年数千年 前のテクトニクスを研究することの必要性が理解されるようになってきた.そこ で,露頭でみられるような断層などの地質構造から,地質学的過去の地殻応力を 推定する研究を紹介する。

第7回

  • 日時

    2015年8月27日(木)15:00〜16:30

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「星間化学:水分子を例として」

  • 講演者名

    相川 祐理 氏

  • 所属・職

    筑波大学

  • 概要

    星間化学は、星間雲の組成やそこで起こる化学反応過程を研究する分野です。星形成の際、分子雲内のガスや氷は原始惑星系円盤にも取り込まれ、惑星系の材 料にもなります。水分子を例として、星間雲から原始惑星系円盤までの観測や理論モデルについて紹介します。

第6回

  • 日時

    2015年6月24日(水)10:30〜11:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Beyond Star and Planet Formation - Toward Realistic "Stellar-System Formation" Scenarios」

  • 講演者名

    富田 賢吾 氏

  • 所属・職

    Princeton University

  • 概要

    In order to understand our Universe, star formation is one of the most fundamental processes because the stellar initial mass function controls the evolution of the Universe. It is also of crucial importance for understanding the origins of the Sun, Earth, other exoplanets, and ultimately ourselves. We have studied star formation processes using the state-of-the-art 3D radiation magnetohydrodynamic simulations. We demonstrated that a circumstellar disk can form in the earliest phase of star formation, and the formed disk and protostar co-evolve. This result clearly suggests that star, disk, and planet formation processes are essentially indivisible, and realistic scenarios of "stellar-system formation" are highly demanded. I will discuss the results of recent observations and our strategies to test the theoretical models by comparing them with future observations, especially with ALMA. I will also describe my future plan for extending this research, including development of Athena++, a new radiation MHD simulation code with adaptive mesh Athena++refinement for various astrophysical applications.

第5回

  • 日時

    2015年6月22日(月)15:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「太陽系外惑星科学の今後の発展に必要なこと」

  • 講演者名

    松尾 太郎 氏

  • 所属・職

    京都大学 理学研究科

  • 概要

     太陽系外惑星科学は1995年の太陽系外の惑星の発見とともに誕生し、その後の技術進歩とともに急速に進展してきた。今や地球型系外惑星の特徴づけを視野に入れて進められている。地球型系外惑星の特徴づけは、惑星科学の単なる延長ではなく、宇宙における生命という新たな視点をもたらすものである。一方で、地球型系外惑星は、これまでの研究対象であるHot/Warm Jupiterに比べて半径が小さくかつ温度が低いため、そのシグナルは極めて小さく、高精度の観測が要求される。しかし、現存の技術ではその要求精度に到達しないため、その技術の改善や工夫が必要である。また、系統誤差に支配される観測データから真値を正しく導くことが要求される。
     私たちは、これまで直接撮像とトランジットによる地球型系外惑星の分光観測の可能性について追求してきた。本セミナーでは、私たちの様々な取り組みを交えながら、太陽系外惑星科学の今後の発展に必要なことは何かを議論したい。

第4回

  • 日時

    2015年6月22日(月)10:30〜11:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Deciphering the Nature of Active Galactic Nuclei Linking Theory and Observation」

  • 講演者名

    井上 芳幸 氏

  • 所属・職

    JAXA International Top Young Fellow

  • 概要

    Formation of supermassive black holes (SMBHs) has been one of the biggest mysteries in astronomy for a long time. Active galactic nuclei (AGNs) are believed to be the key to understanding this problem, since AGNs are powered by matter accretion onto SMBHs. Although studies of individual AGNs give important insight on the AGN physics, there are also other approaches to unveil the nature of AGNs. For example, the cosmic background radiation tells us the evolutionary history of the universe and SMBHs, and the Galactic center where the nearest SMBH is harbored tells us various physical phenomena induced by the SMBH activity. In this talk, I will overview the current understanding and problems of the cosmic background radiation from infrared to gamma-ray based on my works. And, I would like to discuss how we can solve the problems of the cosmic background radiation by linking theory and observation. Then, I will also discuss my recent works on the Galactic center, especially about the Fermi bubbles. Furthermore, I will briefly describe my future plan for deciphering the nature of AGNs in the cosmic history.

第3回

  • 日時

    2015年6月12日(金)15:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「惑星形成の金属量依存性の観測的研究」

  • 講演者名

    安井 千香子 氏

  • 所属・職

    東京大学 理学系研究科

  • 概要

    若い星の周りに存在する原始惑星系円盤は、惑星形成の現場であると考えられ、これまでに様々な理論的・観測的研究が行われてきた。 しかし、これらは主に、太陽近傍という限られた領域において進められてきたものであり、銀河系内には異なる環境が存在し、特に金属量は幅広い範囲を持つ。 そこで私は、より普遍的な惑星形成過程を明らかにするため、異なる金属量下での原始惑星系円盤の観測的研究を進めている。今回は、手始めとして 銀河系の外縁部において進めた、低金属量下(太陽金属量の1/10) での円盤寿命の導出について紹介する。そして、得られた円盤寿命から示唆される、 惑星形成理論や円盤進化モデルへの制約について議論する。更に、現在進めている高金属量下(銀河系内縁部)での結果を紹介するとともに、 今後の研究の発展性について議論したい。

第2回

  • 日時

    2015年6月9日(火)10:30〜11:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Recent progress of our understanding on the compact binary mergers and future prospect」

  • 講演者名

    木内 建太 氏

  • 所属・職

    京都大学

  • 概要

     The merger of a binary composed of a neutron star and/or a black hole is one of the most promising source of gravitational waves. If we detected gravitational waves from them, it could tell us a validity of the general relativity in a strong gravitational field and the equation of state of neutron star matter. Furthermore, if gravitational waves from a compact binary merger and a short-hard gamma-ray burst are observed simultaneously, a long-standing puzzle on the central engine of short gamma-ray bursts could be resolved. In addition, compact binary mergers are a theoretical candidate of the rapid process nucleosynthesis site. Motivated by these facts, it is mandatory to build a physically reliable model of compact binary mergers and numerical relativity is a unique approach for this purpose. We are tackling this problem from several directions; the magnetohydrodynamics, the neutrino radiation transfer, and a comprehensive study with simplified models. I will talk our understanding and future prospect on the compact binary mergers.

第1回

  • 日時

    2015年6月5日(金)15:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「原始惑星系円盤の固体物質進化の観測」

  • 講演者名

    本田 充彦 氏

  • 所属・職

    神奈川大学 理学部

  • 概要

    近年の多波長高解像度観測により、系外惑星系の母体である原始惑星系円盤の 詳細構造が明らかにされつつある。 さらに赤外分光観測の進展により、シリケイ トや氷等の、惑星の材料である様々な固体物質の進化描像が観測的に理解されるようになってきた。 本セミナーでは我々のこれまでの取組、および今後の展望に ついて簡単に紹介したい。

2014年度/FY2014

第13回

  • 日時

    2015年2月19日(木)10:00〜12:00頃

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「Shale gas in groundwater: quantifying methane fluxes from continents」

  • 講演者名

    Daniele L. Pinti 氏

  • 所属・職

    大阪大学 大学院理学研究科 宇宙地球科学専攻・特任教授

  • 概要

    A few studies are focused to determine the amount of methane dissolved naturally in groundwater from potential shale gas areas where hydraulic fracturing "geological" methane (macro- and micro-seepage) in worldwide petroleum provinces. Still poorly quantified, these fluxes are an important source of greenhouse gases which were not even taken into consideration by the ICPP in their climate modeling until a few years ago. Here we will introduce results of a study of natural methane in shallow groundwater of the St. Lawrence Lowlands, an area targeted for exploiting Utica shale gas. Anthropogenic and natural methane fluxes will be quantified and compared to previous global estimates.

第12回

  • 日時

    2014年11月13日(木)15:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「銀河衝突に伴う巨大ブラックホールの進化」

  • 講演者名

    川口 俊宏 氏

  • 所属・職

    国立天文台 天文データセンター

  • 概要

    銀河が周辺銀河と衝突・合体しながら成長するのにあわせ、銀河中心の巨大ブラックホールも同様に合体成長してきたと考えられています。この過程の検証の一環として、我々は、大規模数値シミュレーションと放射スペクトルの理論計算を基に、アンドロメダ銀河に衝突した衛星銀河の元中心ブラックホールを探査する研究を行ってきました(Miki et al. 2014; Kawaguchi et al. 2014)。
    衛星銀河の大部分は、潮汐力により散り散りになりアンドロメダストリームなどを形成している一方、潮汐破壊を耐えて生き残った衛星銀河中心部は、中心に大質量ブラックホールを含む星団として、現在、アンドロメダ銀河円盤の外縁部に居ると考えられます。我々の計算結果は、漂う巨大ブラックホールへの星間ガスの降着流は電波波長域で、星団は近赤外線・可視光で検出できる事を示唆しています。
    近年の電波・可視光・X線観測結果が示す、このような漂う巨大ブラックホールが原因と考えられる天体例3種の紹介も行います。

第11回

  • 日時

    2014年11月10日(月)11:00〜12:30頃

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Exploring The Dark Sector with Euclid and WFIRST-AFTA」

  • 講演者名

    Jason Rhodes 氏

  • 所属・職

    NASA/JPL Astrophysicist

  • 概要

    Dark energy, the name given to the cause of the accelerating expansion of the Universe, is one of the most profound mysteries in modern science. Current cosmological models hold that dark energy is currently the dominant component of the Universe, but the exact nature?of dark energy remains poorly understood. There are ambitious ground-based surveys underway?that seek to understand dark energy and NASA is participating in the development of significantly?more ambitious space-based surveys planned for the next decade. NASA is providing mission-enabling technology to the European Space Agency's (ESA) Euclid mission in exchange for US scientists to participate in the Euclid mission. NASA is also developing the Wide Field Infrared Survey Telescope-Astrophysics Focused Telescope Asset (WFIRST-AFTA) mission for possible launch in ?2023. WFIRST was the highest ranked space mission in the Astro2010 Decadal Survey and the AFTA incarnation of the WFIRST design uses a 2.4m space telescope to go beyond what the Decadal Survey envisioned for WFIRST. Understanding dark energy is one of the primary science goals of WFIRST-AFTA. I'll discuss the status of Euclid and WFIRST and comment on the complementarity of the two missions. I'll also briefly discuss other, exciting science goals for WFIRST, including a?search for exoplanets using both microlensing and a dedicated coronagraph for exoplanet imaging.

第10回

  • 日時

    2014年10月22日(水)15:00〜16:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「究極の電波望遠鏡アルマと、その科学成果」

  • 講演者名

    立松 健一 氏

  • 所属・職

    国立天文台

  • 概要

    日米欧が国際プロジェクトとして建設した電波望遠鏡アルマは2013年3月に開所式を迎えた。 その桁外れの感度により、すでにさまざまな観測成果を出しつつある。本セミナーでは、アルマの簡単な紹介をしたうえで、最新の成果のうちいくつかを紹介する。

第9回

  • 日時

    2014年9月19日(金)14:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「初期宇宙における銀河の多波長輻射特性と宇宙再電離への寄与」

  • 講演者名

    矢島 秀伸 氏

  • 所属・職

    エディンバラ大学Institute for Astronomy 研究員

  • 概要

    近年のすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡などの目覚ましい活躍により、高赤方偏移銀河が数多く発見された。現在、銀河検出の最遠方記録はビッグバン後わずか約7億年後(赤方偏移7.5)にまで及んでいる。これらの銀河は、ライマンアルファ輝線を強く放射している事が多く、ライマンアルファエミッターと呼ばれている。しかし、これらのライマンアルファエミッターがどのように形成され進化したのかは未だよく分かっておらず、天文学における大きな問題となっている。また、ライマンアルファエミッターを含む宇宙初期の銀河形成に伴い、宇宙の水素のほとんどがイオン化した状態である事が宇宙背景放射の観測などにより近年示された(宇宙再電離)。これは銀河からの紫外線により引き起こされたと考えられているが、その電離源や電離史について詳細は未だ不明である。
    本研究では、宇宙論的流体計算と多波長輻射輸送計算を組み合わせる事により、ライマンアルファエミッターの形成、進化、ライマンアルファ輝線放射機構、そしてライマンアルファエミッターと宇宙再電離の関係について調べた。結果として、宇宙初期では大量の銀河間ガスが銀河に降着し、そこからの冷却光によってライマンアルファエミッターが形成され、それらの一部はやがて赤方偏移0付近では天の川銀河のようなディスク銀河へと進化する事が分かった。また、ライマンアルファエミッターからの紫外線により、赤方偏移6以下の銀河間ガスはイオン化されるが、赤方偏移6以上においては観測されているライマンアルファエミッターからの紫外線では光子数が足りず、宇宙再電離を引き起こす事が出来ない事を示した。本講演では、これら最新の計算結果と共に、ダストからの赤外線を含む銀河の多波長輻射特性、現在国際的に進められている21cm輝線全天サーベイ計画(SKAやLOFAR等)との関係についても議論する。

第8回

  • 日時

    2014年9月18日(木)14:40〜

  • 場所

    F102

  • タイトル

    「系外惑星の組成推定と起源の制約」

  • 講演者名

    生駒 大洋 氏

  • 所属・職

    東京大学 大学院理学研究科 地球惑星科学専攻・准教授

  • 概要

    トランジット観測の発展により,太陽系内惑星だけでなく,系外の惑星に関してもサイズが分かるようになった。これまでに1000個以上の系外惑星について質量とサイズの両方が測定されている。これにより,従来の質量と軌道要素に基づいた議論に加えて,惑星のバルク組成という観点から,宇宙における惑星の多様性およびその起源を議論することができるようになった。さらに,多波長でのトランジット観測(トランジット分光)を行うことによって,系外惑星の大気特性も明らかになりつつある。本セミナーでは,我々のグループによる理論研究および観測研究の最近の成果を中心に,系外惑星の組成と起源について議論したい。

第7回

  • 日時

    2014年7月23日(水)10:30〜12:00

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「隕石の可視・近赤外分光サーベイと、その惑星探査への応用」

  • 講演者名

    廣井 孝弘 氏

  • 所属・職

    ブラウン大学 惑星地質・上級研究員

  • 概要

    隕石試料を非破壊で特徴づけ、さらに固体惑星探査での物質同定のために応用すべく、2010年から極地研究所所蔵の隕石試料の可視・近赤外分光サーベイを行っている。現在までに測定された月隕石・火星隕石・HED隕石・炭素質コンドライトの多くのチップ試料の結果を紹介し、スペクトル解析によって何がわかるか、そして惑星探査においてそれらがどのように役立つかを紹介する。

第6回

  • 日時

    2014年6月5日(木)16:00〜17:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Current status of Advanced LIGO」

  • 講演者名

    和泉 究 氏

  • 所属・職

    LIGO Hanford Observatory(CalTech)

  • 概要

    Laser Interferometric Gravitational wave Observatory (LIGO) is a large US project that aims to directly detect gravitational waves from astrophysical ources. LIGO successfully conducted several times of science runs in the past years with a best sensitivity which was capable of detecting compact star binary coalescence at approximately 16 Mpc. However, no detection was achieved yet. In order to increase the sensitivity, LIGO is recently under a large upgrade -- it will become so-called Advanced LIGO. Advanced LIGO will have a improved sensitivity that can detect a gravitational wave event at approximately 200 Mpc and is planned to be operational in 2015. Currently, most of the major installation is being completed and it is entering a testing phase called 'commissioning'. In this talk, I will outline the Advanced LIGO project and report on the latest status of the commissioning works that are currently underway at the observatories.

第5回

  • 日時

    2014年5月22日(木)12:30〜

  • 場所

    F313

  • タイトル

    「初期地球磁場の観測から推定する太陽地球環境の進化」

  • 講演者名

    臼井 洋一 氏

  • 所属・職

    独立行政法人 海洋研究開発機構地球深部 ダイナミクス研究分野

  • 概要

    地球中心核の対流に起源を持つ地磁気は、地球周辺の宇宙環境を決定する最大の要因の一つである。地球形成後の歴史を通じ、地球中心核では永年冷却に伴い内核が成長し、太陽では自転速度の低下に伴い太陽風フラックスが低下してきたと考えられている。岩石に残された地球初期の地磁気記録を発見・分析し、その他の地質学的証拠と比較することで、地球内部の進化のみならず地表環境や太陽進化についても制約を与えることができる。南アフリカおよびオーストラリアの岩石の分析から、我々は古地磁気記録を約34億年前までさかのぼって得ることができ、現在の50%以上の強さの磁場が常に存在したことを推定した。磁場の存在は核−マントル境界の熱流量が、核内の対流を起こす程度に高いことを要請する。内核の存在しない条件でこれほど強い磁場が生成できるかどうかは、今のところ不明である。宇宙環境については、現在の50%の地球磁場強度をWood et al. (2005) の標準的な太陽進化モデルと合わせて考えると、太陽側の磁気圏界面は5地球半径(現在は10地球半径)の位置であったと推定される(Tarduno et al., 2010)。これは地球大気に影響を与えるには十分に遠い。発表ではさらに、古地磁気学的、地質学的証拠が太陽進化モデルに与える制約について議論し、地球中心核の進化を捉えるために将来必要な古地磁気観測についても展望を述べる。

第4回

  • 日時

    2014年5月13日(火)12:30〜

  • 場所

    F313

  • タイトル

    「宇宙からの雷観測」

  • 講演者名

    菊池 博史 氏

  • 所属・職

    大阪大学 大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻

  • 概要

    積乱雲(雷雲)は落雷,ダウンバースト,トルネード(竜巻)のような 激しい気象現象を引き起こすことが知られている.特に近年,ゲリラ豪雨や竜巻の発生が報道等で取り上げられることも多くなっている.これらの気象現象は時間的に短い現象であるためリアルタイムでの観測・監視が困難である.我々は従来の観測手法であるレーダを用いた降雨観測に加えて,雷放電を観測・監視することで,気象災害予防に つながると考えている.
    私はこれまで,雷・降雨現象を電磁波観測するためのシステムとアルゴリズムの研究・開発を行ってきた.この研究の主な目的としては以下の2つがあげられる.1つ目は,気象現象と全球的な大気電気活動の相互作用に対する知見を得る,2つ目は,全球的な雷放電観測はグローバルサーキットにおける雷放電活動の役割をより明確にできると考えていることである. 雷放電には,主に対地放電と雲内放電がある.対地放電の頻度は全放電の1/10程度であり,その他は雲内放電である.つまり,全雷放電の発生頻度'Total lighting'を観測するためには雲内放電の観測が必要である.雷放電から放射されるあらゆる電磁波(VLF帯〜γ線)で観測が行われているが,地上観測における全球雷観測装置の多くは,対地放電を対象としており,Total lightingの観測機器として十分な観測機器は現在開発されていない. そこで,宇宙空間にて人工衛星搭載用雷観測機器を用いて全球的なTotallightningの監視を実現するための2つの宇宙用雷観測機器の研究・開発を行った.1つ目は,2009年に打ち上げられた人工衛星「SOHLA-1(通称:まいど1号)」に搭載する雷観測センサー「VHF sensor」である.2つ目は,宇宙ステーション日本実験棟きぼうの船外実験プラットフォームを利用した雷観測ミッションである「Global Lightning and sprIte MeasurementS on JEM-EF:JEM-GLIMS」における電磁波観測機器の一つで,「VHF Interferometer : VITF」である.
    本セミナーでは,現在の積乱雲観測技術に関する紹介に加え,人工衛星「まいど1号」による雷放電観測結果や,JEM-GLIMSミッションについての概要と実際に宇宙ステーションで観測された雷観測事例をいくつか紹介する. 更に本研究の将来の展望に関しても述べる.

第3回

  • 日時

    2014年5月8日(木)15:30〜

  • 場所

    F227

  • タイトル

    「非中性プラズマに関する実験的研究」

  • 講演者名

    河井 洋輔 氏

  • 所属・職

    大阪大学 大学院工学研究科 環境・エネルギー工学専攻

  • 概要

    単一荷電粒子の集合体である非中性プラズマは、散逸が極めて弱く保存性が高いため、非平衡状態から出発する無衝突領域の集団緩和過程から、衝突領域を経て熱平衡状態にまで至る広い時間スケールに渡る物理現象を実験的に追跡することが可能である。さらに逆電荷による遮蔽がないため、電気的な制御や 計測が容易である。これらの特徴を利用し、これまで発表者は静電磁場中に閉じ込められた電子群のもつ特性について実験的に研究を行ってきた。
    発表では、(1)不安定性から渦間の相互作用を介して進展する乱流緩和過程、および (2)熱平衡状態に達したプラズマのもつ波動特性について、研究成果を報告する。

第2回

  • 日時

    2014年5月8日(木)13:00〜

  • 場所

    F313

  • タイトル

    「星間分子雲における化学進化:星間塵表面反応の重要性」

  • 講演者名

    大場 康弘 氏

  • 所属・職

    北海道大学低温科学研究所

  • 概要

    星や惑星系誕生の場である星間分子雲は,水素を主成分とするガスと,ケイ酸塩核がアイスマントルと呼ばれる氷の層で覆われた星間塵という固体微粒子で構成される。これまでに気相・固相合わせて150種以上見つかっている星間分子には大きく分けて二種類の生成メカニズムが存在する。一つはイオン―分子反応に代表される気相での反応,そしてもう一つが星間塵表面での反応である。イオン―分子反応は,活性化エネルギーを必要としないものがほとんどであり,極低温(~10K)環境の星間分子雲でも化学進化に有利な反応である。一方,星間塵表面反応の中には,2000K(~17kJ/mol)程度の高い活性化エネルギー障壁が 存在するにもかかわらず,星間分子雲における化学進化に不可欠だと考えられているものが少なくない。本セミナーでは,極低温の星間塵表面で水やメタノールなどの化学進化に重要な星間分子がどのようなメカニズムで生成するか,またそれらの星間分子に典型的にみられる重水素濃集がどのようなプロセスでなされるか, これまでに得られている実験的な結果を紹介したい。

第1回

  • 日時

    2014年4日3日(木)14:00〜15:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「What Can Tidal Disruption Events Teach Us About Black Hole Accretion?」

  • 講演者名

    Mitch Begelman 氏

  • 所属・職

    University of Colorado (Professor)

  • 概要

    For a year or more after a star is tidally disrupted by a black hole, debris can fall back at a rate that greatly exceeds the Eddington limit. Both observations and theoretical arguments indicate that mass loss is unable to regulate the rate at which matter is actually swallowed by the hole, leading to black hole growth rates and energy outputs that can exceed the Eddington limit by orders of magnitude. I will explain why regulation fails in such a case, and explain how this alternate mode of black hole growth could also be crucial for gamma-ray bursts and the rapid growth of supermassive black holes during the epoch of galaxy formation. I will also suggest that hyperaccreting black holes may be associated with the fastest jets, and that these are propelled by radiation pressure instead of magnetic forces.

2013年度/FY2013

第4回

  • 日時

    2014年3日7日(金)14:00〜15:10

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「From supermassive black holes to the large-scale structure of the Universe」

  • 講演者名

    Norbert Werner 氏

  • 所属・職

    Stanford University, Research Associate (staff)

  • 概要

    I will present recent observational results on the nature and origin of the multi-phase interstellar medium (ISM) in giant elliptical galaxies, and its role in galaxy evolution and in fueling the central supermassive black holes. Our results show that the cold gas in these systems is produced chiefly by thermally unstable cooling from the hot phase, and that active galactic nuclei are likely to play a crucial role in clearing giant elliptical galaxies of their cold gas, keeping them 'red and dead'. Then I will 'zoom out' to the outskirts of galaxy clusters where we also find hints that supermassive black holes played an important role in the distant past. Suzaku observations reveal a remarkably homogeneous distribution of iron out to the virial radius of the nearby Perseus Cluster, requiring that most of the metal enrichment of the intergalactic medium occurred before the cluster formed, probably more than ten billion years ago, during the period of maximal star formation and black hole activity. Finally, I will talk about the upcoming Astro-H mission which will revolutionize X-ray spectroscopy and our understanding of the dynamics of the intra-cluster medium.

第3回

  • 日時

    2014年2日20日(木)14:40〜16:10

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「地球衝突天体 Earth Impactors!」

  • 講演者名

    阿部新助 氏

  • 所属・職

    日本大学 理工航空宇宙工学科・准教授

  • 概要

    2013年2月15日にロシア・チェラビンスクにおいて、直径約20mの天体が秒速19kmで大気突入し(0.5メガトンTNT火薬〜広島原爆30個分相当)、強烈なエアーバーストにより7000戸以上の建物が被害を受け、2000人近くの人々が負傷した。落下した隕石は、小惑星イトカワと同種のLLタイプ・コンドライトと判明し、惑星間軌道についても詳しく分かってきた。現在、1万個以上の地球近傍天体(NEO)が見つかっているが、チェラビンスク隕石のような100mサイズ以下の小天体の殆どは発見されていない。また、小惑星探査機「はやぶさ」、「はやぶさ2」が探査した(する)小惑星は、いずれも地球衝突危険性天体である。 一方、地球軌道と交差する彗星から放出されるダスト群は、毎年流星群として観測される。本講演では、これらの地球衝突(危険性)天体について、観測、探査、理論の側面から最新の研究成果を紹介する。

第2回

  • 日時

    2013年12月16日(月)16:20〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「The Co-Evolution of Supermassive Black Holes and Galaxies」

  • 講演者名

    C. Megan Urry

  • 所属・職

    米Israel Munson Professor of Physics and Astronomy Director, Yale Center for Astronomy & Astrophysics, US

  • 概要

    Supermassive black holes grow at the centers of galaxies (as Active Galactic Nuclei, or AGN), accumulating mass over billions of years and transforming gravitational potential energy into radiation and outflows. Theorists have suggested AGN could quench star formation and strongly affect galaxy evolution ("AGN feedback"). Multi-wavelength surveys like GOODS and COSMOS have been an important tool for understanding black hole growth and galaxy co-evolution. We learned that most black hole growth is heavily obscured and thus invisible to optical surveys, and that this obscuration is even more common in the young Universe. It also appears that AGN feedback affects the host galaxy only in the most luminous quasars, which are likely triggered by major mergers, while the majority of (disk) galaxies evolve much more slowly and are not much affected by the AGN.

第1回

  • 日時

    2013年5月13日(月)15:00〜16:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「惑星科学40年来の問題を解決した日本の小惑星探査衛星はやぶさ」

  • 講演者名

    廣井 孝弘

  • 所属・職

    米国ブラウン大学・Senior Research Associate

  • 概要

    NASAが1969年にアポロ11号によって月試料を持ち帰る前から、月の海がなぜ暗くて、大きな新しいクレーターのみから明るい光条が見えているかの議論があり、それは時間とともに月表面が暗くなる「宇宙風化」が起こっていると仮定された。それが正しいことは、アポロ試料の解析によって証明されたが、同様な宇宙風化が小惑星(特にS型と呼ばれるもの)にも起こっているかどうかは、過去40年間白熱した議論の的であった。2003年に打ち上げられて2010年に小惑星イトカワの試料を持ち帰ったJAXAの探査機はやぶさは、S型小惑星が、地球に豊富に落ちてくるLL型の隕石と同じものであり、宇宙風化が存在することを世界で初めて証明した。今回は、小惑星と隕石を結びつける専門的な研究をしてきた私とはやぶさの関係をストーリーとして解説しながら、来年打ち上げ予定の「はやぶさ2」にも触れる。

2012年度/FY2012

第7回

  • 日時

    2012年9月3日(月)16:30〜17:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「探査による太陽系天体の表面および内部構造とその進化」

  • 講演者名

    佐々木 晶

  • 所属・職

    国立天文台・教授

  • 概要

    「はやぶさ」「かぐや」と日本は2つの太陽系天体ミッションを成功させた。「はやぶさ」のターゲット天体イトカワは、S型小惑星に属していて、表面の宇宙風化作用による反射スペクトルの変化がどのように進行しているかが、謎であった。「はやぶさ」の探査により、予想していたよりもダイナミックな過程が表面で起きていることがわかった。月、水星、と比較したときの、違いについて今後議論していきたい。 「かぐや」は、月全球の地形と重力を正確に測定して、月の裏側や極域の内部構造(地殻厚さ)を明らかにした。一方で、月深部の状態については未だ決着がついていない。最近、月面での水分子や氷の存在、噴出したガラスやアパタイト中の水の存在など、これまでドライだと思われていた月内部に水が存在する可能性が出てきた。深部に水が存在すると、下部マントルは融点が下がり柔らかくなる。また、水(からの酸素)や硫黄がコアに入ると、コアの融点を下げる。将来探査で、潮汐応答による重力の変化を正確に測定することから、月の深部状態の解明を目指している。月深部に揮発性物質が存在することは、巨大衝突説による月起源シナリオに修正が必要になる。 これまで地球の水は、彗星などの氷天体起源ではなく、集積した原材料物質由来であると考えられていた。その根拠となったのはD/H(重水素・水素同位対比)の違いであるが、最近の宇宙望遠鏡の観測により、地球に近いD/Hを持つ彗星が発見された。さらに、太陽系の進化の過程で、巨大惑星の共鳴により小惑星や彗星が多数地球に衝突した時代があった可能性が高くなっている。太陽系形成時のスノーラインについても、原始惑星系ディスクの観測からモデルが検証できる時代になっている。惑星の水の起源について、考えて行きたい。

第6回

  • 日時

    2012年8月3日(金)17:00〜18:30

  • 場所

    F313

  • タイトル

    「PDR(光解離領域)の光電加熱におけるPAH(多環式芳香族炭化水素)の役割を観測的に探る」

  • 講演者名

    岡田 陽子

  • 所属・職

    ケルン大学

  • 概要

    OB型星の周囲に形成されるPDR(光解離領域)は、電離領域と分子雲の境界領域に位置し、星からのUV放射がその構造と物理量を支配している。そこでのガスの熱 バランスは、主にダスト上の光電効果による加熱と、[OI] 63 micron や [CII] 158 micron のような輝線放射による冷却で成り立っている。領域が受け取る総エネルギーはダストの連続放射から求められるため、これと輝線強度の比は、光電効果の効率を表すと考えられる。理論的にはこの効率はPAH(多環式芳香族炭化 水素)のようなサイズの小さなダストで高く、また電子を放出する過程であるため、PAHが正のイオンになると効率が下がることがわかっているが、観測的にはまだこの関係がきちんと示されていない。 我々は、Herschel/PACSおよびSpitzer/IRSによる6つのPDRの分光観測を用いて、PAHの電離度と加熱効率の関係を調べた。PACSのデータは、Herschelの guaranteed time key programのひとつである、WADI(Warm And Dense ISM)で観測されたもので、[OI] 63 micron, 145 micron, [CII] 158 micron および遠赤外線連続放射の強度が得られている。IRSでは 5-15 micron のPAH feature が観測され、テンプレートによるスペクトルフィッティングから、PAHの電離度を見積もった。その結果、理論的に予想されるとおりPAHの電離度と加熱効率には逆相関が見られたが、効率の絶対値は系統的に理論値を下回ることが示された。

第5回

  • 日時

    2012年7月13日(金)13:30〜14:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Galaxy Formation with Cosmological Hydrodynamic Simulations: the world of relentless feedback processes」

  • 講演者名

    長峯 健太郎

  • 所属・職

    米国ネバダ州立大

  • 概要

    Over the past two decades, astronomers have established the standard concordance model of our Universe, namely the Lambda cold dark matter (LCDM) model. Consequently the frontier of structure formation study has shifted to the detailed modeling of galaxy formation processes under the framework of LCDM model. In this talk, I will discuss the current status of galaxy formation study using cosmological hydrodynamic simulations, and present some of the highlights of our recent work. The topics include supernova feedback, high-redshift galaxies, reionization of the Universe, and the accretion onto supermassive black holes.

第4回

  • 日時

    2012年6月8日(金)10:00〜11:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「宇宙線による銀河団の加熱」

  • 講演者名

    藤田 裕

  • 所属・職

    宇宙進化グループ・准教授

  • 概要

    地球に降り注ぐ宇宙線は、宇宙に存在する様々な天体の形成と進化に影響を与えている。宇宙最大の天体である銀河団でも、宇宙線がその進化に大きな役割を果たしている可能性がある。本講演では、強いX線を放射する銀河団の中心部のコア領域で、宇宙線が膨大なエネルギーを運搬する役割を果たしているという我々のモデルについて紹介する。

第3回

  • 日時

    2012年5月29日(木)13:00〜14:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Uncover Earth's deepest secrets: Constraints on the nature and evolution of the inner core from high-pressure experiments」

  • 講演者名

    Jie Li

  • 所属・職

    Univ. Michigan

  • 概要

    The Earth's inner core was discovered in 1936 by Inge Lehmann, on the basis of seismic signals etected inside the "shadow zone". The inner core accounts for only one percent of the Earth's mass, but it plays an important role in the evolution and dynamics of the planet. The inner core boundary represents a first-order phase transition and is characterized by abrupt changes in density and sound velocities. Mysterious features of the inner core have been discovered in the past decade, including super-rotation, anisotropy, and an anomalous velocity gradient in the "Flayer" above the inner core boundary. The age of the inner core and the role of the solid central sphere in the origin of the magnetic field have also been issues of debate. In this seminar I will present experimental results on the melting behavior, equation of state, and phonon density of state measurements on candidate core compositions, obtained using various high-pressure apparatus and synchrotron radiation techniques. I will discuss the implications of the phase relation, density and velocity data for the nature and evolution of the inner core, focusing on testing the hypotheses of a carbonrich inner core and "snowfall" in the "F-layer". A layered core is not unique to the Earth. Recent studies suggest that inner core exist in Jupiter's moon Ganymede, the Earth's Moon, and Mercury. I will compare the inner cores in different planetary bodies in order to understand the history and consequences of inner core formation in the Solar System and its relation to the origin of life.

第2回

  • 日時

    2012年5月29日(木)10:00〜11:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「星形成における磁場と乱流の役割」

  • 講演者名

    中村 文隆

  • 所属・職

    国立天文台 理論研究部・准教授

  • 概要

    地球に降り注ぐ宇宙線は、宇宙に存在する様々な天体の形成と進化に影響を与えている。宇宙最大の天体である銀河団でも、宇宙線がその進化に大きな役割を果たしている可能性がある。本講演では、強いX線を放射する銀河団の中心部のコア領域で、宇宙線が膨大なエネルギーを運搬する役割を果たしているという我々のモデルについて紹介する。

第1回

  • 日時

    2012年5月17日(木)16:00〜16:50

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「Laboratory Experiments to Study Collisionless Shocks」

  • 講演者名

    坂和 洋一

  • 所属・職

    レーザーエネルギー学研究センター・准教授

  • 概要

    Collisionless shocks are often observed in astrophysical plasmas.For example in a shock wave observed in a supernova remnant, a oulomb mean-free-path is much longer than the shock-front thickness. A laboratory experiment can be an alternative approach to study collisionless shocks and particle acceleration. In this talk we investigate laboratory experiments to study collisionless shock generation in counter-streaming plasmas using Gekko XII HIPER laser system at Institute of Laser Engineering, Osaka University. The plasmas and shocks were studied by transverse optical diagnostics, such as interferometry, shadowgraphy, self-emission measurements, and by Thomson scattering measurements. We also investigate an experimental proposal to demonstrate the formation of collisionless shocks through the self-generated magnetic fields due to nonlinearity in the growth of the Weibel instability using the National Ignition Facility, the largest laser system in the world in USA.

2011年度/FY2011

第10回

  • 日時

    2012年2月2日(木)15:00〜16:00

  • 場所

    F313

  • タイトル

    「Extreme Objects in the Universe」

  • 講演者名

    Myungshin Im

  • 所属・職

    ソウル国立大学

  • 概要

    Our center is currently focusing on the study of extreme objects in the universe. I will outline our recent studies of distant quasars harboring supermassive black holes, Gamma Ray Bursts, and proto-clusters of galaxies in the early universe. I will also introduce CEOU - Center of the Exploration of the Origin of the Universe, and its research facilities which may be used for collaborative research activities with Osaka University.

第9回

  • 日時

    2011年12月7日(水)16:30〜

  • 場所

    F102

  • タイトル

    「原始星周囲のケプラー円盤:その形成と進化」

  • 講演者名

    大橋 永芳

  • 所属・職

    国立天文台ハワイ観測所・教授

  • 概要

    原始星の形成は、分子雲コアと呼ばれる高密度ガスの中心部が、動的降着することにより進行する。その際、副産物として原始星周囲にケプラー円盤が形成されると考えられている。原始星周囲のケプラー円盤は、星形成には欠かせない、角運動量輸送において重要な役割を果たすと考えられる。一方、前主系列星であるTタウリ型星の周囲には、惑星系形成に於いて重要な役割を果たすであろう、原始惑星系円盤と呼ばれるケプラー円盤が存在することが知られており、原始星周囲のケプラー円盤は、原始惑星系円盤の前段階であると考えられる。このように、原始星周囲のケプラー円盤は、星惑星系形成において非常に重要であるにもかかわらず、その形成過程や進化過程を観測的にとらえた例はこれまでほとんどなかった。本講演では、サブミリ波アレイ(SMA)を主に用いて進めてきた、原始星周囲のケプラー円盤の研究について報告する。

第8回

  • 日時

    2011年11月29日(火)15:00〜

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「Herschelと星形成」

  • 講演者名

    犬塚 修一郎

  • 所属・職

    名古屋大学 大学院理学研究科 素粒子宇宙物理学専攻・教授

  • 概要

    Herschel宇宙望遠鏡を用いた遠赤外・サブミリ波観測により、分子雲はおびただしい紐状構造を持っていることが見出された。この紐(フィラメント)の部分は分子雲の高密度部分に対応しており、星形成は例外なく高柱密度のフィラメント中で起こっていることが報告された。従ってHerschelによる観測結果はこれまでの理論的研究と共に星形成についての明解な描像を確立しつつある。この講演では、これら最新の星形成論について紹介し、今後の課題について論じる。

第7回

  • 日時

    2011年11月24日(木)16:00〜16:55

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「Unbound or distant planetary mass population detected by gravitational microlensing---- Free-floating planets may be common ----」

  • 講演者名

    住 貴宏

  • 所属・職

    芝井研究室・准教授

  • 概要

    We discover a population of unbound or distant Jupiter-mass objects, which are almost twice as common as main-sequence stars, based on two years of gravitational microlensing survey observations toward the Galactic Bulge. These planetary-mass objects have no host stars that can be detected within about ten astronomical units by gravitational microlensing. However a comparison with constraints from direct imaging9 suggests that most of these planetary-mass objects are not bound to any host star. An abrupt change in the mass function at about a Jupiter mass favours the idea that their formation process is different from that of stars and brown dwarfs. They may have formed in proto-planetary disks and subsequently scattered into unbound or very distant orbits. We also review the recent results on bound planets by microlensing and prospects for the space-based observation by the NASA's Wide-Field Infrared Survey Telescope (WFIRST).

第6回

  • 日時

    2011年9月15日(木)15:00〜16:00

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「Debris Disks in Aggregate: Using Hubble Space Telescope coronagraphic imagery to understand the scattered-light disk detection rate」

  • 講演者名

    Carol, A. Grady

  • 所属・職

    Eureka Scientific, NASA Goddard Space Flight Center

  • 概要

    Despite more than a decade of coronagraphic imaging of debris disk candidate stars, only 16 have been imaged in scattered light. Since imaged disks provide our best insight into processes which sculpt disks, and can provide signposts of the presence of giant planets at distances which would elude radial velocity and transit surveys, we need to understand under what conditions we detect the disks in scattered light, how these disks differ from the majority of debris disks, and how to increase the yield of disks which are imaged with 0.1" angular resolution. In this talk, I will review what we have learned from a shallow HST/NICMOS NIR survey of debris disks, and present first results from our on-going HST/STIS optical imaging of bright scattered-light disks.

  • 日時

    2011年9月15日(木)16:00〜17:00

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「Disk-Planet Interaction: Spiral Arms, Gap-opening, Observational Prospects」

  • 講演者名

    武藤 恭之

  • 所属・職

    東京工業大学 地球惑星科学専攻

  • 概要

    We review the fundamentals of the physical mechanisms of disk-planet interaction. We review how the spiral arms are produced as a results of the gravitational interaction between a planet and a disk. We shall also show a simple derivation of the type I migration timescale. We then discuss how the type I migration timescale is altered by the effects of the eccentricity or inclination of the planet. We also discuss the implications to the direct imaging observations.

第5回

  • 日時

    2011年8月29日(月)16:30〜17:30

  • 場所

    F102

  • タイトル

    「局所絶対年代分析で拓く太陽系年代学」

  • 講演者名

    寺田 健太郎

  • 所属・職

    広島大学 理学研究科・教授

  • 概要

    太陽系46億年の歴史において、天体と天体の衝突による惑星物質の角礫化は頻繁に起こったイベントである。実際、隕石や月試料の多くは起源の 異なる岩石片の多種混合角礫岩であり、微惑星形成から現在までの衝突・破砕・ 最集積の複雑なプロセスを如実に物語っている。概して、このような岩石片・ 鉱物片はミリサイズ以下と小さく、破砕前の年代情報を引き出すには、局所年代 分析技術が不可欠である。 このような背景のもと、広島グループでは、1996年の大型イオンマイクロプローブSHRIMPを導入し、隕石中に産出頻度の高いリン酸塩鉱物のU-Pb年代分析を 推進してきた。半減期が45億年(238U)、7億年(235U)と長い二つの放射壊変系を組み合わせることにより、月や火星のように火成活動が長期的に続いた天体の年代学に応用する事が可能になることのみならず、マグマの結晶化年代をその後の天体衝突等による変成年代とは独立に導出する事も可能である。 本講演では、広島SHRIMPの特徴、局所U-Pb年代分析の利点と欠点、及び、この分析法で得られた最近の重要な知見について紹介する。

第4回

  • 日時

    2011年8月29日(月)13:00〜14:30

  • 場所

    F102

  • タイトル

    「WFIRST and Euclid」

  • 講演者名

    Jason Rhodes

  • 所属・職

    NASA JPL

  • 概要

    The past decade has seen tremendous progress in astronomy that has brought us to the brink of being able to answer two very fundamental questions: What is the Universe made of? Are we alone? The first question can only be answered by trying to understand the mysterious "dark energy" causing the accelerated expansion of the Universe. This dark energy, the dominant constituent of the Universe, has a number of possible theoretical explanations, ranging from a cosmological constant, to possible modifications to Einstein's General Theory of Relativity. The second question is motivated by the increasing frequency of detections of exoplanets and can be explored by seeking out the frequency of Earth-like planets in the habitable zone of stars similar to the sun. Both of these science goals can be best explored with a space-based wide-field telescope capable of imaging and spectroscopy. Such a platform, operating in optical to near infrared wavelengths would also make great strides in a myriad of ancillary astrophysical areas, including the evolution of galaxies and structures over two thirds of the age of the Universe. The European Space Agency is in the final stages of examining the Euclid mission, which is optimized to study dark matter and dark energy. NASA has begun planning for the Wide Field Infrared Survey Telescope designed to explore dark energy and perform an exoplanet survey. I'll discuss the scientific motivations of both missions and give an overview of the hardware, observing strategy and status of each mission.

第3回

  • 日時

    2011年6月22日(水) 15:30〜16:30

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「初期太陽系星雲の進化と太陽系元素(酸素、希ガス)同位体比組成」

  • 講演者名

    小嶋稔

  • 所属・職

    東大名誉教授

  • 概要

    1.酸素同位体比:地球型惑星(地球、月、隕石毋天体、を含む)は太陽系酸素同位体比組成と同じ。現今広く流布している太陽系酸素同位体比組成はCAI酸素同位体比で代表されるとする説は受け入れがたい。CAI酸素同位体比は、CAI形成時の局所的化学反応で創られたもので、太陽系の平均的同位体比組成とは無関係。 2.希ガス同位体比:始原的隕石に広く分布するQ-希ガスが太陽系希ガス同位体比組成を代表。SW(太陽風)希ガスはこれから分別した。この結論から太陽の同位体比組成を太陽風(Solar Wind:SW)の同位体比組成から推定しようとするGENESIS-project の試みは注意が必要。

第2回

  • 日時

    2011年6月9日(木)16:00〜

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「地球深部における水の行方」

  • 講演者名

    寺崎 英紀

  • 所属・職

    近藤研究室・准教授

  • 概要

    沈み込むスラブなどによって地球深部にもたらされる水は、どこに存在しているのだろうか? 地球深部において安定な含水鉱物と地球中心核を構成する鉄合金との反応性を、高温高圧その場X線回折実験結果を基に議論する。また鉄中に他の軽元素が存在した場合の水素溶解量についても議論する。

第1回

  • 日時

    2011年4月16日(土)13:00〜17:00

  • 場所

    F102

  • 共催

    日本高圧力学会のセミナーシリーズ共催

  • タイトル 講演者名

    「高圧発生用SD・cBNの合成と特徴」
    住友電工ハードメタル株式会社 戸田 直大
    「Diamond-SiC複合焼結体のHIP合成と高圧アンビルへの応用」
    大阪大学 大学院理学研究科 大高 理
    「SDを用いた超高圧発生)」
    岡山大学 地球物質科学研究センター 山崎 大輔
    「NPDの合成と特徴」
    愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター 入舩 徹男
    「NPD-DACによる超高圧発生」
    住友電気工業株式会社 角谷 均
    「DACによる超高圧発生」
    東京工業大学 大学院理工学研究科 舘野 繁彦

  • 概要

    近年、ダイヤモンド多結晶焼結体(SD)の応用により、マルチアンビル(MA)装置においても、メガバール近い圧力発生が可能になりつつあります。また、我が国で新たに開発されたナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)の、ダイヤモンドアンビル装置(DAC)などへの応用も試みられつつあります。従来は超硬合金と単結晶ダイヤモンドが、それぞれMAやDACの主なアンビル材として用いられてきましたが、近年これらの多結晶ダイヤモンドをはじめ、様々な新しい超硬物質の高圧技術への応用がおこなわれています。 本セミナーでは、SDやNPDをはじめ、NiやSiCをバイ ンダーと した超硬合金、より硬いバインダレス超硬合金、またcBN焼結体や高純度単結晶ダイヤモンド、その他の新たな超硬材料を用いた超高圧実験 技術への応用を中心に、最新の研究および実験技術についてご紹介いただきます。また、これらの物質の合成と物性に関しても報告いただきます。

2010年度/FY2010

第12回

  • 日時

    2010年12月9日(木)16:00〜17:00

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「はやぶさ計画とサンプル初期分析」

  • 講演者名

    土`山 明

  • 所属・職

    土`山研・教授

  • 概要

    11月16日に、JAXAからはやぶさサンプルがイトカワ由来であると判明した旨のアナウンスがありました。これまでのはやぶさ探査機による成果を紹介し、サンプルのキュレーションの現状と今後予定されている初期分析について、概要を述べます。

第11回

  • 日時

    2010年11月11日(木)16:30〜18:00

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「オーシャンプラネットとスノーボールプラネット」

  • 講演者名

    田近 英一

  • 所属・職

    東京大学 大学院新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻・教授

  • 概要

    惑星系におけるハビタブルゾーンは、惑星表面に液体の水が存在可能な軌道領域として定義される。この軌道領域に大量の水を保持する地球型惑星(=水惑星)が形成されれば、その惑星は地球のような海に覆われた「海惑星(オーシャンプラネット)」になる可能性がある。しかし、水惑星の気候状態には多重性がある。すなわち、たとえ水惑星がハビタブルゾーンに形成されても、もし大気の温室効果が足りなければ、氷に覆われた「雪玉惑星(スノーボールプラネット)」になる。ハビタブルゾーンより外側領域に水惑星が形成された場合には、そのような気候状態は恒常的に維持される。このようなタイプの系外地球型惑星の存在は、将来観測によって確認される可能性が高いものと考える。雪玉惑星の最大の特徴は、惑星内部からの地殻熱流量によって氷地殻下に液体の水(内部海)が存在できるところにある。もしそのような環境でも生命の生存が可能ならば、ハビタブルゾーンの外側境界は惑星質量に依存することになり、かなり遠方の軌道領域にまで拡大される。本講演では、そうした雪玉惑星の物理的特徴とその存在可能性について議論する。

第10回

  • 日時

    2010年11月10日(水)16:00〜17:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「X線非弾性散乱による地球内部物質科学」

  • 講演者名

    福井 宏之

  • 所属・職

    兵庫県立大学 物質理学研究科

  • 概要

    X線非弾性散乱法はX線分光法のひとつである。この手法により電子あるいは電荷密度の励起スペクトルを測定することで、物質の構造やダイナミクスに関するユニークな情報が得られる。入射X線として浸透力の高い硬X線を用いれば、(複合)極限環境下にある物質に対しても適用できるため、地球内部物質科学における強力なツールとなる。本セミナーではX線非弾性散乱について解説し、それを用いた地球内部物質科学に関連した研究例を紹介する。また現状における問題点や今後の展開についても議論する。

第9回

  • 日時

    2010年11月9日(火)15:00〜16:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「高圧下の鉄合金の物性:中心核の形成過程と核中の軽元素」

  • 講演者名

    寺崎 英紀

  • 所属・職

    東北大学 大学院理学研究科

  • 概要

    地球型惑星の中心核はFe-Ni合金を主成分とし、S、Si、Cなどの軽元素が含まれると言われている。我々はこれまでにマルチアンビル高圧装置と放射光X線イメージングにより、高圧下における鉄合金融体の密度・界面張力といった物性を明らかにしてきた。これらのデータを基に地球型惑星の中心核形成過程および核中に入りうる軽元素の制約条件について議論する。またダイヤモンドアンビルセルを用いた外核条件までの鉄合金の相平衡関係の結果についても紹介する。

第8回

  • 日時

    2010年11月1日(月)15:00〜16:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「重力マイクロレンズによるスノーライン外側の系外惑星分布の測定」

  • 講演者名

    住 貴宏

  • 所属・職

    名古屋大学 太陽地球環境研・助教

  • 概要

    我々Microlensing Observations in Astrophysics (MOA)グループは、ニュージーランド南島、マウントジョン天文台でMOA-II 1.8m望遠鏡を用いて重力マイクロレンズによる系外惑星探査を行っている。重力マイクロレンズは、スノーラインの外側にある地球質量程度の惑星にまで検 出感度があり、他の観測方法と比べて非常にユニークである。スノーライン外側は、多くのガス惑星、氷惑星が形成される場所と考えられており非常に 重要である。我々は、スノーライン外側の系外惑星の質量比関数を初めて求め、海王星質量惑星は木星質量惑星の3倍以上多い事を発見した。また、惑 星存在量は、視線速度法で見積もられた小軌道長半径(〜0.3AU)での惑星存在量の7倍と非常に多い事が分かった。

第7回

  • 日時

    2010年11月1日(月)13:30〜14:30

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「原始惑星系円盤の高解像度観測」

  • 講演者名

    深川 美里

  • 所属・職

    芝井研・助教

  • 概要

    惑星形成過程を明らかにするには、原始惑星系円盤の観測的理解が必須である。しかし、円盤構造の詳細から性質の一般的描像を得るには至っていな い。すばる望遠鏡用の新しい補償光学や高コントラストカメラは昨年から本格稼働し、また、近く電波干渉計ALMAでの観測が始まる。セミナーで は、これまでの原始惑星系円盤の観測結果と、最新装置により期待される成果を紹介する。

第6回

  • 日時

    2010年10月21日(木)16:00〜17:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「LCGTで探る宇宙」

  • 講演者名

    田越 秀行

  • 所属・職

    宇宙進化・助教

  • 概要

    重力波は、時空のゆがみが波動として時空を伝わる現象であり、一般相対論の生みの親アインシュタイン自身によってその存在は気がつかれていた。重力波の直接検出を目指して日本、アメリカ、ヨーロッパにおいてレーザー干渉計型検出器が稼働して観測を行ってきたが、今にいたるまで直接的な検出はなされていない。アメリカ、ヨーロッパでは更に感度を向上させた次世代検出器の建設が始まり、2015年頃から本格稼働する見込みである。日本の大型レーザー干渉計LCGT計画は、長年にわたり計画が認められずにいたが、今年6月に文部科学省最先端研究基盤事業の1つとして選ばれ、計画がスタートした。完成すればアメリカヨーロッパの検出器に匹敵する性能を発揮すると期待される。これら次世代検出器の感度では、中性子星連星合体に伴う重力波を1年に少なくとも数回は検出すると見込まれているため、重力波の直接検出への期待が非常に高まっているというのが現状である。この講演では、以上の重力波検出器の進展状況や、LCGTで観測可能な重力波の発生源となる天体についてのレビューをします。

第5回

  • 日時

    2010年7月30日(金)15:00〜16:00

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「高出力レーザーを用いて衝撃圧縮された地球内部物質の物性研究」

  • 講演者名

    境家 達弘

  • 所属・職

    近藤研究室・助教

  • 概要

    地球の内部構造を知る上で、地球深部条件と同じ高温高圧状態で地球内部物質の物性を調べることは重要である。我々は、色々な高圧発生技術の中でも、より高温高圧状態を発生可能な高出力レーザーを使って、地球核物質である鉄の音速計測とマントル主要鉱物であるオリビンの衝撃回収手法の開発を行っているので、その最新情報について紹介する。

第4回

  • 日時

    2010年7月30日(金)14:00〜15:00

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「水素系ガスハイドレートにまつわる科学と応用技術」

  • 講演者名

    橋本 俊輔

  • 所属・職

    基礎工学研究科・助教

  • 概要

    ガスハイドレート(気体包接化合物)は、水分子の水素結合により構築された籠の中に気体分子が包接されて安定化する固体結晶である。これまでに数多くのゲスト分子が報告されている。その中でも比較的新しい水素は、極めて小さい分子サイズということもあり、籠占有性などの特性が他のゲスト分子とは異なり、非常に興味深い。加えて、近年は水素貯蔵庫としてガスハイドレートが注目を集めている。本発表では、水素系ガスハイドレートにまつわる興味深い現象と応用技術について紹介する。

第3回

  • 日時

    2010年7月15日(木)16:00〜17:00

  • 場所

    F202

  • タイトル

    「自己駆動粒子系の物理 -交通流を中心に-」

  • 講演者名

    湯川 諭

  • 所属・職

    川村研究室・准教授

  • 概要

    自己駆動粒子系とは、アクティブマターなどと同じく自発的に動く離散自由度系の総称であり、ニュートン力学の観点から見れば、作用反作用の法則の破れた相互作用を行う外部から駆動される散逸多体系である。このセミナーでは、自己駆動粒子系の例として、これまでに講演者が研究してきた交通流を中心に話を進める。 具体的な内容として、実際に高速道路で観測されるデータや渋滞のパターン、交通流で見られる普遍性、簡単なモデルなどを紹介し、我々の最適速度結合写像格子モデルを紹介する。また実際に行った渋滞実験の様子や、有名な武者-樋口の 1/f ゆらぎなどについても議論する。

第2回

  • 日時

    2010年5月20日(月)16:00〜17:00

  • 場所

    F608

  • タイトル

    「初期太陽系における有機物の化学進化: 始原小天体物質として、また生命前駆物質としての役割」

  • 講演者名

    薮田 ひかる

  • 所属・職

    松田研究室 助教

  • 概要

    宇宙に存在する有機化合物(炭素(C)、水素(H)、酸素(O)、窒素(N)から主に構成される化合物)は、塵とガスからなる分子雲から原始惑星系円盤、そして原始太陽系の誕生へと進化する過程で形成された物質であり、その一部は約46億年前に太陽系内で生じた小惑星や隕石、他の一部は太陽系外縁に放りこまれた彗星、あるいはこれらの始原小天体を起源に持つと考えられている惑星間塵の成分等として、保存されている。太陽系の主要な原材料物質である点で、始原天体有機物は惑星系の起源と歴史に重要な役割を担った物質の一つであると考えられている。加えて、地球の生命の起原を研究する分野では、その前駆物質である有機化合物は、隕石や彗星中の有機物が初期地球に運び込まれたものである(Exogenous delivery)可能性が、有力な考え方の一つとされている。 これらの点から、始原小天体有機物の組成や分布を明らかにすることが求められている。 本セミナーでは、これまでの隕石有機物研究から得られた成果のレビューを中心に、最近/現在進行中の始原天体探査、またアストロバイオロジーに関わる研究を含め、お話させていただきます。

第1回

  • 日時

    2010年4月19日(月)13:30〜14:30

  • 場所

    F313 セミナー室

  • タイトル

    「MAXI/SSCの紹介」

  • 講演者名

    木村 公

  • 所属・職

    常深研究室D2

  • 概要

    国際宇宙ステーションに搭載されたX線全天監視装置 MAXI は、2009年8月に観測を開始した。MAXIは90分で地球を一周する宇宙ステーションの動きを利用して0.5-30keV のエネルギー帯域を全天モニターする。検出器としては 12 台の比例計数管から構成されるGSC(Gas Slit Camera) と 32 枚の CCD から構成される SSC (Solid-state Slit Camera) が搭載される。CCDは浜松フォトニクス社製の1024×1024ピクセル素子で2.5×2.5cm2の受光面を持つ。CCDにはペルチェ素子が内蔵され、アクティブに温度制御が可能である。初期チェックアウトにおいて、SSCに搭載された、32個全てのCCDとペルチェ素子が正常に動いている事が確認された。また、CCDのエネルギー分解能は素子により個性はあるものの、5.9keVで150eV(半値幅)を達成できた。また、現在では数十を超える天体も検出し、SNRなどからは、Si,Mg,Fe(L)などのラインも検出できている。本講演ではSSCの性能と初期観測成果を報告する。