理学部F棟は、昭和39年頃に移転してきた大阪大学理学部建物の老朽化に伴い、理学部全体の新造、改築計画の端緒と
なるべく1990年から、その設計計画を立て始めた。当時としては斬新な、オープンスペースの研究室レイアウトや、天体望遠鏡をもつ天文ドーム、その他階
段教室などを取り入れた設計計画もあったが、予算や基準面積の縛り、脱出経路の確保など種々の事情と要請による制限のため、1995年竣工当時のF棟は、
残念ながら通常構造の部屋配置を有する現在のF棟の西半分部分の建物であった。 以来、理学部物理系・宇宙地球科学科の時代を経て、大学院重点化以降、宇
宙地球科学専攻が主として使用する区域となっている。
F棟玄関については、池谷教授(当時)などの発案で、新しい学科の象徴的な存在として、アピール性のある装飾を施すことが議論され、施設部および理学部F
棟の建設担当であった(株)五洋建設等と検討を繰り返した。 たとえば、UC Berkley, UCLA,
あるいはStanford大学などにおいて、地球科学関係の学科の建物には、恐竜などの化石群や各種の資料が展示され、それが学生や来訪者へ強いメッセー
ジを放っている。 そのような意図のもとで、マチカネワニは理学部の建設地から発掘された化石であり、装飾の中核的存在として期待されていた。 一方で
は、しかし、物理を中心とした学科として、そのような地球科学的資料を展示することに難色を示す方々もおられたようで、結局、地球科学的に興味ある石材を
具象化したデザインが採用されたのである。このときの内装関係の資金上の問題は、五洋建設の好意と、委任経理金および有志の方々の支援と寄付によりまかな
われた。施工業者が、リップルマーク(波痕)試料について、一部表裏を逆に切り出したものを貼り付ける、などのトラブルもあったが、両面からの観察も意味
があろうと、ほとんどは好意的に迎えられた。以降、大学祭、オリエンテーションや講義、公開講座の折りに紹介、説明され、教育研究や広報活動の面で役立っ
てきたものである。
2004年度、これに加え、大型化石もいずれは展示したいとのかねてからの構想が実現した。これは理学研究科「平成16年度競争資金に係る間接経費執行計
画」における「F棟エントランス玄関ロビーの学生の教育・啓蒙目的での整備」に基づくもので、土`山、山中(千)、佐伯、小柳、鳥居の5名の委員により数
回の検討回、および展示準備を行った。コンセプトは、本専攻のテーマたる宇宙と地球をイメージできるもの、および手に触れることのできる地球科学的試料と
いうことになった。これにより、1)岩石鉱物試料の展示 2)マチカネワニ 下顎のレプリカの展示 3)「F棟」ではなく専攻名の入ったプレートの設置
4)現有の大型化石プレートの展示 5)棟エントランス天井部分への星図の表示が計画され、実行に移された。以下に概要に加えて、ご援助頂いた関係の皆様
に謝辞を付して感謝申しあげる。また今後のメンテナンスを考慮し、いくつかの業者名もここに記録しておく。
1)岩石鉱物試料関係
壁面石材以外のもので、地球科学的に興味ある岩石・鉱物試料を各15点選定した。独立行政法人・産業技術総合研究所・地質標本館には鉱物標本の寄贈をお願
いした。また豊遥秋博士(地質標本館前館長)には標本寄付を仲介していただいた。また一部はニチカ(日本地科学社・京都)より購入した。標本に関しては、
今後採集予定のものも含んでいる。展示方法に関しては、硫化物が直射太陽光下で分解する可能性があることから、その対処を検討した。
2)マチカネワニ下顎部
現在、ワニの化石自体は大阪大学総合学術博物館の管理下にある。そこで下顎部のレプリカの展示を計画した。現在におけるマチカネワニの最新のレプリカの製
作は、国立科学博物館でなされている。そこで、冨田幸光国立科学博物館地学研究部古生物第三研究室長には同博物館のレプリカ作成室でマチカネワニ下顎のレ
プリカを作成にご尽力いただくほか、展示方法に関して様々なアドバイスをいただいた。実際の製作はレプリカ作成室円尾博美氏にお世話になった。 また江口
太郎教授(大阪大学総合学術博物館長)にはレプリカを作るためのマチカネワニの原型データの提供や、解説のための各種資料を提供いただいた。
3)専攻名プレート(1200×300×30mm)
当初は古式ゆかしいヒノキ板に墨痕鮮やかな表札という提案もあったが、耐久性を考え、ステンレス製SUS304 のプレートに文字高さ100mmで 「宇宙地球科学研究棟」と、縦にレーザー切文字加工したものとなった。購入は (株)志賀ビジネスである。
4)1995年に池谷教授(現名誉教授)が、ドイツ(ボン)の業者 Horst Burkard Mineralien Fossilien,
より購入した3点の化石プレートの展示が実現した。試料はそれぞれ、カンブリア紀中期の三葉虫(Acadoparadoxides
briareus)、デボン紀の直角貝化石(Orthoceras Fossil Plate)、およびアンモナイト(Ammonite:
Clymenia plate with
Orthoceras) で、モロッコ、サハラ付近の産である。ロビーの石材壁面は、中空加工の部分が多いので、懸架するのは困難であった。そこで木製架
台を8点製作し、岩石鉱物試料と同様に展示することにした。展示方法については五洋建設大阪支店建築部統括所長の長濱雅人氏にお世話になり、架台の製作は
中村木工所に依頼した。
5)天井星図
東洋や西洋の歴史的な星図、装飾的な星図等、色々な可能性を議論した後に、現代の科学教育という観点から、実用的な星座早見盤のデザインを選定した。
これは日本天文学会編、三省堂刊の「世界星図早見」の北天の星図に基づいた。この図版の特徴は
4.5等星より明るい約900の恒星、天の川と星座等が星表のデータに基づいてコンピュータで忠実に描かれていることである。 株式会社三省堂と日本天文
学会には、図案の使用を快諾頂いた。また 施工は株式会社ムラヤマ(担当:大阪支店複合施設部 豊村広志氏)である。
以上の展示を行い、説明文などを壁面に取り付けた形で平成16年度分の整備は完了した。今回は映像や動きのみえる展示はできなかったが、今後機会あるごと
に内容の充実と更新を行う考えである。このロビーが、さらに内容を展開し、また学内外の多くの方に利用されて、文字通り「開かれた大阪大学・宇宙地球科学
専攻の玄関」となることを期待したい。
1995年におけるF棟玄関ロビー装飾の整備については当時の学科パンフレット「未踏のフロンティア」p18-23に詳しい写真と説明がある。そのパンフ
レット発刊以降にご寄付いただいた方を含め、ここに改めて国費でまかなえなかった部分をご寄付頂いた個人、団体、企業の名を記して、感謝の意を申し上げま
す。
裏 克己(阪大名誉教授)、金森順次郎(元阪大総長)、理学部同窓会、宇宙地球科学科有志
大和地質研究所、日本電子、住友特殊金属、日本ペイント、サンハイ、オクエンテール
平成17年4月
宇宙地球科学専攻・専攻長
(平成19年6月一部修正)